■全記事リスト   ■管理ページ

エリンギ速報ではきのこネタ、きのこたけのこ戦争についてのスレを積極的に載せてきます!

2017年08月 07月≪ 12345678910111213141516171819202122232425262728293031≫09月

--.--.-- (--)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--:--  |  スポンサー広告 コメント(-)  |  EDIT  |  Top↑  このエントリーをはてなブックマークに追加   

2008.08.09 (Sat)

キョン「ド、ドラえもん!?」


1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/08(金) 23:50:22.83 ID:wAJ6XEFRO
ドラえもんとハルヒの鏡面世界をお送り致します。



3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/08(金) 23:52:09.60 ID:wAJ6XEFRO
自分の部屋に入るなり、俺は驚愕した。
髪を拭く手は止まり、口は開きっ放しになる。
全ての行動を停止した俺は目の前の光景をどこか夢のような心境で見ていた。
シャミセンがにゃあにゃあと青いバランスボールのようなものにまるで語りかけるように鳴いている。
俺の頭の中に走馬灯のように記憶が甦ってきた。
どこでもドア、タケコプター、四次元ポケット、ネズミ嫌いの耳なしネコ型ロボット。
思い出したように俺は口を開いた。
「お前、名前は?」
バランスボールは俺に視線を移して、化け物のような歯のない口をかぱっと開いた。
「僕、ドラえもんです」
はるか昔、小学生のころの聞き慣れたダミ声。
そう、俺の目の前にはドラえもんがいた。
俺の部屋になぜドラえもんがいるかって?
それは俺が聞きたい。
だが心当たりはある。そりゃこんなことやる奴なんて一人しかいないだろう。
涼宮ハルヒ。
そのはた迷惑なやつが今日発した一言が原因としか考えられない。
俺は今日の出来事を思い出していった。
…………。
……。





5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/08(金) 23:53:30.10 ID:wAJ6XEFRO
じめじめとした空気がまとわりつき、シャミセンがしきりに顔を拭うようになって、俺は四季に数えられない不遇の季節の到来を知った。
まあ俺自身、梅雨は嫌いだから同情する気もないのだが。
その日も部室の扇風機だけではどうにもならない湿気の中でうだっていた。
朝比奈さんがついでくれた水出しのお茶が唯一の清涼さを醸し出してくれる。
こんなときに古泉とボードゲームをやる気なんて起こるはずもなく、間近に迫ったテスト勉強をやることにした。
しかし、始めてみると我ながら情けないことにものの十分もしない内に飽きてきた。
流石にみんなが見ている手前すぐにペンを置くわけにもいかない。
そんな訳で俺は勉強してる体裁を装って落書きを始める。
「それなんの絵描き歌でしたっけ?」
一人で詰めチェスをしていた古泉が手を止めて尋ねてきた。
なんだ。声出してたのか、俺。
ええ、と古泉が微苦笑を浮かべて肯定する。
バレては仕方がないので、
「ドラえもんのだよ。ほら、昔やってただろ」
「そう言えばそんなものもありましたね。ちょっと、見せて下さいよ」
古泉がそう言って俺のプリントをのぞき込もうとしたとき、唯一ここにいなかったやつが現れた。




6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/08(金) 23:54:41.97 ID:wAJ6XEFRO
「古泉君、勉強教えてやってるの?」
入るなりハルヒはそう言ってずかずかと近寄り、古泉がなんと言おうか逡巡している内に俺のプリントを強奪する。
「なにこれ。落書きばっかりじゃない。それにこの歪んだ風船に竹串さしたようなのはなんなの?」
お前はドラえもんを知らんのか。
「これがドラえもんだったら、世の中にある丸いものは全てドラえもんだわ」
ハルヒは見てなさいとばかりに、ホワイトボードにさらさらと書き出した。
「お上手ですね」
古泉がハルヒ作の絵におべんちゃらを言う。
たしかに俺のドラム缶を何十回か殴打して毛を生やしたような落書きとは比べるのも憚られる出来栄えだ。
「こんな落書き、ドラえもんに対する冒涜だわ」
意外にもハルヒは怒った風に言った。
お前ドラえもん好きなのか。
「そうよ。昔はよく見てたわ」
たしかに、ハルヒ的にはいいかも知れん。不思議道具が山程あるしな。
「どっかにいないかしらね。ドラえもんみたいな未来から来たロボット」
未来枠は朝比奈さんだけで十分だ。藤原とかいう陰険野郎も、そんなロボットもいらん。
「もしかしたらいるかも知れませんよ」
と、古泉がハルヒをたきつけた。
いらんことを言うな。ほら、朝比奈さんが青い顔してるじゃねえか。
そんな思いを込めて、古泉の足を踏み付ける。
「絶対いるわよ。タイムマシーンの故障かなんかで」
ハルヒはそう言って遠くを見るような目でホワイトボードを見つめた。






8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/08(金) 23:56:11.12 ID:wAJ6XEFRO
バタバタと階段を登る音が聞こえて、俺は回想から現在時間へと戻った。
十中八九、妹だ。
「えっと、とりあえず姿を隠せ。急げ。話は後だ」
ドラえもんはやにわにポケットに手を突っ込んで、灰色のボールを半分に斬ったようなやつを取り出して無理矢理かぶった。
「シャミー」
妹がそう言いながらドアを開けたのと、ドラえもんの姿が忽然と消えたのがほぼ同時だった。
俺はほっと胸をなで下ろす。
「キョン君、タオル。お母さんが持ってきなさいって」
「ああ。分かった」
半乾きの髪を拭いてタオルを妹に手渡す。
妹はそのタオルでシャミセンを捕らえると部屋を出ていった。
足音が十分に遠ざかってから、
「おい。もう出てきていいぞ」
そう言うと再びドラえもんの姿が現れた。
ええっと、この道具はなんて名前だったかな。
「石ころ帽子~」
一々フシをつけて言わんでもいい。たしか存在感をなくすとかそんな道具だったはずだ。
ということは、
「やっぱり、本物なのか?」
ドラえもんは不思議そうに首を捻るというか身体を傾けた。
ますます本物じみた動作だ。
つうかお前はアニメのキャラクターのはずだろ。
「そんな訳ないだろ」
たしかに今はZ軸を持っているが……よく分からんが、なんでこんなとこに来たんだよ。
「タイムマシーンに乗って未来へ行ってたら、時空震に巻き込まれたんだ」
タイムマシーンまであるのか。どこだ?
そう言うと、ドラえもんは俺の机の引き出しを示した。




9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/08(金) 23:57:43.91 ID:wAJ6XEFRO
引き出しを引くと数メートルほど下に、畳一畳ほどの板切れが浮かんでいた。
俺の部屋まで異空間にしてんじゃねえよ。自分の部屋くらい普通の空間でゆっくりさせろ。
「だったらコレに乗って帰ればいいだろ。それとも故障か?」
そうだとしたら頼りになりそうな人物を一名いや、二名ほど知っている。
「さっきまでメンテナンスしたけど故障じゃない」
と、ドラえもんは首もないのに頭を左右へ振って、
「この時空トンネルの時空座標自体が明らかに異なるんだ。」
全くもって意味が分からん。
ここでぐだぐだと話を聞いても理解できる気もないので、俺はこんなときこそ頼りになりそうな人物の元に行くことにした。
そして、俺の目の前にはドラえもんがいる。これを利用しないのはマッチがあるのにわざわざ棒と板切れで火を起こすようなものだ。
「どこでもドアを出してくれ。未来人のところに案内してやるから」
「どこでもドア~」
俺の知る限りの物理法則を全て無視して、ポケットから赤色のドアが出現した。
たしか行きたい所を思い浮かべるんだよな。
俺は目を閉じて朝比奈さんの可憐な顔を頭に浮かべながら、ドアを開いた。
「ひぇ!?」
どうやら成功したらしい。まあ、そりゃ驚くだろうな。
そう思いながら目を開くと、
「キョ、キョン君? 出てって! 見ちゃだめえ」
湯船につかって豊満なバディを隠すように手で隠したすっ裸の朝比奈さんがそこに居られた。
こんな古典を忘れていたとはな。
俺は回れ右で自室へと戻った。




10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/08(金) 23:59:28.82 ID:wAJ6XEFRO
朝比奈さんは風呂から上がったら電話してくるだろうからしばし待つことにする。
待つほどもなく、俺の携帯に着信があった。
『キョン君、あ、あれはどういうことなんですか?』
「今から会って説明します。もう大丈夫ですか?」
『ふぇ? ええ』
俺は電話を持ったまま、再び赤色のドアを開けた。
『「ひぇ!」』
目の前と電話から朝比奈さんの声が聞こえる。
今度は浴室ではなく、ファンシーな少女趣味を体現したような部屋で、湯上りの朝比奈はウィニフレッドと名乗る黄色いクマのパジャマに着替えておいでだった。
俺は終話ボタンを押して電話を切ると、ドラえもんを前に促した。
「キョン君。なんで禁則事項を……それにそれはなんなんですか」
禁則事項とはどこでもドアのことだろう。
朝比奈さんはキテレツな生き物を前にして今にも泣き出しそうだ。
なんて説明すべきだろうか。
「ええっと、こいつは未来からきたロボットです。それがやりました」
俺はさり気なく自己弁護も入れた。
「未来? ロボット? その雪ダルマがですか?」
「雪ダルマじゃない! 僕は二十二世紀から来たネコ型ロボット、ドラえもんだ」
怒鳴るなよ。ほら朝比奈さんがびっくりしてるじゃねえか。
「二十二世紀……それはほんとうですか?」
「ほんとうだとも」
「あり得ません。二十二世紀にはまだ、人工知能を有したロボットが航時機を使った記録も禁則事項を行なった記録もないんですから」
「そんな訳あるか!」
議論が平行線を辿りそうなので、俺は仲裁に入った。
こういうときには下手に片方を弁護するのではなく、証拠を提示するに限る。




11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/08(金) 23:59:31.87 ID:IlumB9bi0
どこを横読み?


12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 00:01:23.88 ID:4LFBGEewO
「朝比奈さん、ちょっと俺の部屋に来てくれませんか」
可愛い顔でドラえもんと睨めっこをしていた朝比奈さんはえっ、という表情をしたが、
「……分かりました。着替えますから、出てて下さい」
外に出る訳じゃありませんから、そのままで大丈夫だと思いますよ。
「それで行くんですか?」
不安げに赤色のドアを指差す。
「大丈夫ですから、ついてきて下さい」
俺はそう言って、自室を思い浮かべてドアを開けた。
その向こうには俺の少しばかり散らかった部屋が広がる。
少しは片付けとけばよかったな。
「ふぇ、なんで禁則事項が禁則事項するの? 禁則事項なのに……」
黒人ラッパー並に禁則事項が入っているが、放送禁止用語みたいなものだろうか。
俺は異空間と化した机の引き出しを指し示して、
「あの中を覗いて下さい」
朝比奈さんは恐る恐る机の中を覗く。
そう言えば朝比奈さんが俺の部屋に来たのは初めてじゃなかろうか。それもパジャマ姿で。
引き出しの異空間は早急にどうにかすべきだが、これはこのままでいいな。
「うそっ! なんでこんな空間が?」
引き出しの中からエコーのかかった朝比奈さんの声が漏れる。
そんなにやばい空間なんだろうか。
朝比奈さんがげっそりとした顔で頭を上げた。
「……これはTPDDじゃないです」
それもそのはず。これはタイムマシーンだ。あんな気分の悪くなるタイムスリップはしない。
「どうしてこんな……もしかして」
朝比奈さんはそう言うと、自分の部屋に駆け戻った。




14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 00:03:37.06 ID:4LFBGEewO
「交信要請! 交信要請! ふぇえ、お願いだから誰か出て」
朝比奈さんの部屋から必死にどこかと交信を試みる声が聞こえる。
お相手は朝比奈さんの所属する未来人の組合かなんかだろう。
「どうしたの?」
とドラえもん。
それはこっちが聞きたい。
しばらくして、吹けば倒れるんじゃないかと思えるほど弱りきった朝比奈さんが、泣きながら戻ってきた。
「……ふぇ……ぐすっ」
「朝比奈さん、どうしたんですか?」
「キョン君……あたしの未来……がなくなっちゃいました」
どういうことだ。未来がなくなった?
朝比奈さんはうえーんと号泣し始めた。
ともかく、夜半に知らぬ間に連れ込んだ女の子が号泣していたんでは両親に勘違いをされかねん。
俺は朝比奈さんを引っ張ってファンシーな部屋へと戻った。
「未来がなくなったってどういうことですか?」
号泣する朝比奈さんをベッドに座らせて尋ねた。
しかし、返答の代わりにはひぐっだの、ふぇだのいう泣き声しか帰ってこない。
「翻訳コンニャクだそうか?」
うるさい、黙れ。俺はお前の道具をチョイスする才能には一切の信用を置いてない。
五分ほどそうしている内に朝比奈さんはやっと顔を上げた。
泣きはらした目が真っ赤に充血している。




15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 00:04:46.45 ID:4LFBGEewO
「……キョン君……あたしのこと面倒みてくれますか」
俺はもちろんです、と即答してから、
「一体、どうなったんですか?」
「……あたしの存在する時間が書き替えられたんです」
つまり、朝比奈さんの未来が消えたんですか?
そう言うと朝比奈さんはふぇーんと再び泣き出した。
肯定の意味だ。
「ひぐっ……ふぇ……すぅ……すぅ」
しばらくすると寝息が混じりだして朝比奈さんは静かになった。
泣き疲れたんだろうか。
その予想は、がちゃりと開いた朝比奈さんの部屋にあるドアから出てきた人物によってあっさりと覆された。
「やっぱり、こうなっちゃいましたか」
布団に頭を突っ込んで寝息を立てる朝比奈さんをさらに豊かにした感じの朝比奈さん(大)が、呟くように言った。
この人はいつも唐突に現れて、謎の発言を残していく。
そうなる前にいくつか尋ねねばならん。
俺は挨拶も抜きに、
「こいつはアニメのキャラクターじゃないんですか?」
「この次元ではそうかも知れないけど、わたし達の次元とは源流のまったくことなる別の次元ではたしかに存在するの」
朝比奈さんはそう言ってドラえもんの頭をなでた。

よく分からんが、そういうことなのだろう。
しかし、
「未来が消えたってどういうことなんですか?」
「このドラえもん君の存在が未来を変えちゃったの」
「僕?」
ドラえもんが驚いたように顔を上げる。




16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 00:06:12.89 ID:4LFBGEewO
「そうあなたの技術は巡り巡ってTPDDではなく時空トンネルという形で航時機を開発させるの」
だったらあなたはなんで存在するんですか。
「未来は一つじゃないの。沢山の平面時間が連なって、それは微妙なズレをもって広がるのよ。それを正しい方向に導くのが私たちの役目。でも、本来ならこんな大きなズレはあり得ないんだけどね」
だけど、もう未来は変わってしまったんじゃ。
「いいえ。まだ確定はしてないわ」
俺はえっ、と目を上げた。
朝比奈さん(大)の懇願するような顔が間近に迫る。
「わたし達の未来もこのドラえもん君が元いた場所に帰れるかも、みんなあなたを含めたSOS団のメンバーにかかっているの」
俺達にかかってるってどうすればいいんですか?
「わたしには言えない。だから、みんなで考えて」
ふざけるなと口まででかかった言葉が、朝比奈さん(大)によって塞がれた。
神経が断裂したかのように俺の身体が硬直する。
朝比奈さん(大)はやたら柔らかい唇を俺から離すと、
「これは前報酬よ。ついでにわたしの裸を見たこともね」
冗談のように言った朝比奈さん(大)だが、目だけは真剣だった。
「ちゃんと未来が正しい方向に戻ったときは、そこのわたしからお礼を貰ってね。あっ、でもわたしのことは内緒にしておいて下さい。じゃあ」
そう言って、朝比奈さん(大)は部屋から出ていった。
俺は白昼夢でも見たような気分でそれを見送ったが、やけに生々しい感触が残った唇が夢ではないことを照明している。




17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 00:07:09.44 ID:UFwz8aQd0
追いついた

SSでは大概空気のみくるが出てきて嬉しい限り


18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 00:07:11.57 ID:4LFBGEewO
ふとドラえもんを見やると眼球の黒目にあたる部分がピンク色のハートに変わっていたりする。
リアリティにかけるやつだなと溜め息が出ると共に、やらねばならんことがぼんやりと見えてきた。
「ドラえもん、聞いたか?」
「うん、納得した。通りでタイムマシーンが使えないはずだ」
その目をゆっくりと黒目に戻して、
「僕に協力できることならなんでもやるよ」
と力強く言った。



19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 00:08:57.10 ID:4LFBGEewO
朝比奈さん(大)の言葉を信じるならば、未来は俺たちにかかっているらしい。
何をすればいいのかも見当もつかないが、まずは足りないメンバーを集めねばならんな。
俺は赤色の扉のノブに手をかけて、ニヤけた野郎の面を思い浮かべた。
「うわっ」
がちゃりと開いた扉の向こうでそんな声が聞こえた。
よう古ず……お前もかよ。
湯煙の中、全裸で驚愕の表情を浮かべる古泉の姿がそこにあった。
サービスにも糞にもならんな。
「……これはどういうことですか?」
いいから前を隠せ。
「これは失敬しました」
と言って古泉は湯船に身体を沈めた。
「できるだけ早く用意してくれ。理由はあとで話す」
見たくもない光景に背を向け、朝比奈さんの部屋に戻る。
余程急いだのかものの数分で、服を着た古泉がやってきた。
「これはなんですか? 僕は夢でも見てるんでしょうか」
その視線は当然の如く、どこでもドアと鎮座するドラえもんに向けられる。
「長門も連れてきてからまとめて話す」
納得しかねるといった表情を浮かべる古泉を無視して、俺は無表情の長門の顔を思い出した。
今度は慎重にドアを開くと湯煙は流れて来なかった。




20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 00:10:00.56 ID:4LFBGEewO
その代わりに開いた隙間からにゅるりと白蛇のような腕が伸びてきて、俺の胸倉を掴んだ。
俺は恐るべき力でドアの向こうへ引きずり込まれて、床へと叩きつけられた。
「おい、長門。俺だ」
無表情で胸倉を掴む長門の手が呆気なく離される。
思い切り床に投げられた痛みが遅れたようにやってきてしばしの悶絶を味わった。
そんな俺に長門が無表情になにか高速で呟くと下手したら骨にヒビくらい入ってそうな痛みが引いていく。
便利な能力だなまったく。
「いきなり空間の凝縮が始まり別の空間と相似したので敵対行動が行われるかと推測した」
制服姿の長門は、そう呟いた。
俺の推測により言い換えるならば、「いきなりワープしてきたから敵かと思って攻撃した。ごめんなさい」だろう。
最後のは推測でもなんでもないが。
これで団長以外のメンバーが揃った。







21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 00:10:49.15 ID:UFwz8aQd0
部屋じゃなくて家の前に行けよwww


22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 00:11:17.85 ID:4LFBGEewO
「…………っと言う訳なんだ」
俺は慎重に言葉を選びながら語り終えた。
言いつけ通り朝比奈さんには朝比奈さん(大)のことは内緒にして、俺の推測ということにした。
「たしかに……そうみたいですね」
と朝比奈さんも納得したようだ。
「ですが、一つ不明な点があります。なぜ、彼はここに来てしまったんでしょう」
彼とはつまり、長門から貰ったどら焼きを頬張るドラえもんのことだ。
「涼宮ハルヒの書いた絵が原因と思われる」
ずっと黙って話しを聞いていた長門が口を開いた。
絵ってのは、今日ハルヒが書いた落書きのことか?
「そう」
「どういうことですか?」
「涼宮ハルヒが書いた絵が空間力場を変質させ、それが時空的な波長と近似していたために、時空的な歪みが生じ、その波が異時空空間を広がり異時空空間にも歪みが生まれた」
なんのこっちゃ。
「つまり、涼宮さんの書いた絵がバタフライ効果のように働いたということですか?」
バタフライ効果ってのはなんだ?
「ブラジルで蝶が羽ばたけばテキサスで竜巻が起こるか、というカオス理論からきた言葉です」
ふーんと聞いていると、
「あの時点で分かっていれば防げたこと。迂闊」
風が吹けばネズミが増えるなんて思いつく奴なんかいないだろ。
「しかし、流石涼宮さんといった所ですね。理由はともかく結果的に実現させてしまうんですから」
と、古泉がここに唯一いない団長の名前を出した。
ハルヒがいたら話しがややこしくなるから呼ばなかったんだが。
はてさて、どうしたもんかね。




23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 00:12:32.62 ID:4LFBGEewO
「ここは一つタイムマシーンを見て見ませんか? なにか掴めるかも知れませんよ」
タイムトラベル願望のある古泉がそう提案した。
こいつはただ見たいだけかも知らんが、たしかに闇雲にここで考えるよりもいいかも知れんな。
そういうことで、ハルヒを除くSOS団団員は俺の部屋に行った。
いやはや、ほんとにどこでもドアは便利だ。
「そうですね。一家に一台欲しい所です。で、問題のタイムマシーンはどこにあるんですか?」
と急かす古泉に、机の引き出してやると、
「これがタイムマシーンですか」
不思議空間に頭を突っ込んで楽しそうな声をあげた。
なんでこいつはここまで緊張感がないんだ。このまま後ろから突き落してやろうかな。
と考えている内に、ふと思いついた。
「長門、この空間をどうにかしてドラえもん戻せないか?」
「できなくはない」
おお。じゃ、やってくれ。
「ただ、この空間を異時空空間に戻す際に莫大なエネルギーが放出される」
「どのくらいでしょう?」
と、不思議空間から俺に突き落とされることなく生還した古泉が尋ねた。
「宇宙の初期化が行われるレベル」
「ビッグバンですか?」
「そう」
ビッグバンって宇宙レベルかよ。
そんな物騒な案は即刻破棄するとして、どうすればいいんだろう。
朝比奈さん(大)の言葉を思い出す。『未来はSOS団にかかっている』か。
そんなたいそうなことを言われても、SOS団とは“世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団”だしな。
目的は強いて言えば…………。
ああ、なるほど。こういうことか。




24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 00:13:51.63 ID:4LFBGEewO
俺はさっきからどら焼きをむやみやたらに食い続けるドラえもんを見た。
未来から来てるし、それに結局その未来も異次元らしいし、ロボットだし、不思議道具もあほみたいに持ってるし。
たしかにこいつなら適任だ。
俺はハルヒがいつか言った言葉を思い出した。

『宇宙人や未来人、超能力者を探し出して、一緒に遊ぶことよ』

ハルヒは隣りでいつも遊んでいるやつらこそが宇宙人や未来人、超能力だということを知らない。
ここは一つ、我らが団員の夢を叶えてやらねばならんようだ。
文字通り夢は夢として。
俺はそれが少しばかり面倒だが、正直にいうと胸が踊った。
断言できる。こんなチャンスはもう二度とこない。

これがまさかあんなことになろうとは、それこそ夢にも思わなかった。



25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 00:15:46.96 ID:4LFBGEewO
俺の提案は賛成三、無言一で可決された。
「逆世界入り込みオイルとお座敷釣り堀~」
ドラえもんが俺の所望通り、今回の作戦に必要な道具を出す。
そのお座敷釣り堀を引いて、逆世界入り込みオイルを垂らした。水銀を入れたように光が反射する。
これで準備は完了だ。
後はゲストの到着を待つのみとなった。
待つと数分。がちゃりと音がしてどこでもドアが静かに開くとその向こう側で朝比奈さんがおっかなびっくり、長門が無表情のまま、ぐーすか寝ているハルヒを抱えていた。
ハルヒが完全に寝ているのを確認した俺は鏡のようになった水面に頭を入れた。
そこにはたしかに映画の通りの空間が広がっている。
俺の部屋とは全てがあべこべだ。時計が十一時を示し、窓からは日光が漏れている。
「では、行きましょうか」
心底楽しそうな微笑みを浮かべて言った古泉を先頭にして、俺達は、誰もいない“鏡面世界”へと静かに入り込んだ。
「これがほんとうに鏡の中の世界なんですか?」
ハルヒをベッドに置いた朝比奈さんが、俺の部屋を見渡してそう呟いた。
たしかに俺もにわかに信じがたい。
そこには目に写る光景が全て逆なだけで、変わらない空間が広がっている。
長門でさえも、無表情の中にわずかな驚きを浮かべているのだから、やはり未来のロボットとだけ言うことはある。
さて、ともかくゲストに起きて貰わねば。
「ドラえもん。ハルヒを起こしてくれ」
うなづいたドラえもんは、
「ネムケスイトール~」
と、フシをつけて安易なネーミングの掃除機のような形をしたやつを出して、紫色のモヤを吸い取りだした。
その間に朝比奈さん、長門、古泉に一旦部屋の外へと出て貰う。




26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 00:17:24.06 ID:4LFBGEewO
「ふぁっ……んー」
ハルヒが目尻に涙をしたためて、これでもかとばかりに伸びをする。
そして、がばっと起上がったハルヒと目と目が合った。
さて、ここが一番の正念場だ。
「……え? キョン?」
「これは夢だ」
「は? あんた何言ってんの?」
ハルヒは露骨に馬鹿を見るような目で俺を見た。
しかし、ここで挫けては全てが水の泡だ。
「お前、前に言ってたよな。“宇宙人や未来人、超能力者を探し出して一緒に遊ぶんだ”ってな」
「……そうよ」
「こいつじゃダメか?」
そう言って俺が示した人物によって、怪訝な顔のハルヒがエクアドル産ひまわりのような特大の笑みを浮かべるまで大した時間はかからなかった。
多分、今のハルヒの頭には夢か現つかなんて考えはとっくに消え失せているに違いない。
「あんた、一応聞くけど名前は?」
「僕ドラえもんです」
ステレオタイプの自己紹介を聞いたハルヒは今にも跳ねんばかりに、
「よく来てくれたわ、ドラえもん。それにキョン、あんたもよくやったわ」
そこで俺は、以前の花見から密かにあこがれていた行為を行なった。
ぱちんっと景気よく指を鳴らすと、古泉と朝比奈さんと長門がゆっくりと出て来た。

これで役者は揃ったな。
俺は誰に言うとでもなく、そう呟いていた。







27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 00:19:04.23 ID:4LFBGEewO
「みくるちゃん。書記お願い」
「はぁい」
真っ先にハルヒが所望したどこでもドアで移動した先は文芸部兼SOS団の部室だった。
なにもここじゃなくていいだろうに。
「なに言ってるの。こういう時こそ平常心でなにするか考えなきゃ駄目なのよ」
そう言ってのけたパジャマ姿のハルヒはどうみても、浮き足立っている。部屋の配置があべこべになっているのにも気付いていないようだ。
まあ、これからなにをしようかってことで頭が一杯で、そこまで気が回らないんだろう。
「じゃ、ミーティングするわよ。みんなやりたいことを言いなさい。まずはキョンからね」
俺か。
俺の知る限りではドラえもんの不思議道具を用いてできないことはないが、そのなんでもできるってことが逆に俺を悩ませる。
ちょっとした世の中の心理に気付いた俺の熟考の結果、導き出された答えは、
「今度のテストの答案が欲しい」
「バカじゃないの。そんな下らないことじゃなくてもっと夢のあることを言いなさい。」
下らなくもなければ、夢のないことでもないのだが。第一、赤点レーダーに尾翼がひっかかりそうな俺にはとても魅力的だ。
「分らないならあたしが教えてあげるわ。だから、それは却下よ」
その一言で俺の案はあえなく棄却された。
「古泉君はなんかある?」
「そうですね。空を自由に飛びたいです」
「いいわね。みくるちゃん、今の書いて」
「はぁい」
ホワイトボードに朝比奈さんの可愛らしい文字が踊った。
空を飛ぶって、いつも飛んでるじゃねえか。
「あれは飛ぶという感覚はないんですよ」
耳元でウィスパーボイスが囁かれる。




28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 00:20:35.92 ID:4LFBGEewO
タイムスリップ願望だけじゃなく、飛行願望まであるのか。
「ほんとうはタイムマシンに乗りたいんですが、そうなればこの夢物語が終らない可能性が出てきますからね」
そう言って古泉は肩をすくめた。
こいつなりに妥協したんだろうか。
「じゃ、次はみくるちゃんよ。なにかある?」
「あ、あたしですか……えっと、じゃあ飲茶用の急須が欲しいです」
どうやら、朝比奈さんはほんとうに自分が欲しいものをリクエストしたようだ。
ハルヒすら呆れたように、
「そう。じゃ、ユキはなんかある?」
「…………」
長門は即席麺の調理時間を遥かに超過した沈黙の後、
「図書館」
とだけ呟いた。
図書館ごと欲しいのかよ。
「蔵書だけ欲しい。だけど、私の部屋には格納するスペースがない。図書館自体が望ましい」
なんとも長門らしいと言ったら長門らしいが。
「もう、ユキまでそんな即物的なこと言って」
ハルヒはさも憤慨したように言った。
そういうお前はなにが望みなんだよ。




29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 00:23:12.51 ID:4LFBGEewO
「あたし? あたしはビッグライトよ」
そんなもん、なにすんだ。
「決まってんじゃない。大きくなんのよ」
ハルヒはそう言って胸を張った。
さようか。ドラえもん出してくれ。
「ビッグライトとタケコプタ~」
所在なげにたたずんでいたドラえもんがやっと出番だ、とばかりにポケットから大した機密性を持たない道具を出した。
「みくるちゃん。こっちきなさい」
「ひぇぇ」
ハルヒがフェルトペンを持ったままの朝比奈さんの首根っこを引っ掴んだ。
恒例の流れに俺と古泉は席を外そうとしたのだが、呆然とその光景を眺めていたドラえもんは動く気配すら見せず、引きずるように外へと出した。
「一応、順調みたいですね」
ああ、何とかな。
「ところでドラえもん君、ちょっと四次元ポケット見せてくれませんか?」
「え? いいけど」
了承を得た古泉は膝をついてドラえもんの腹部にあるポケットに頭を突っ込んだ。
ただでさえ不思議空間にしょっちゅう出入りしてんだからいいだろうに。
そうこうしている内に部室の扉が開いて、中からバニーガールの格好をした朝比奈さんとハルヒが出てきた。
なんでそんな格好してんだよ。
「こんなチャンスないんだから、大きくなったみくるちゃんを見なきゃ損よ」
たしかにそれには同意せざるをえないな。
ちょっと、というかかなり見てみたい気がする。
「ほらほら、行くわよ」
ハルヒは部室の窓を開け放ち、頭にタケコプターを乗っけた。バニー衣装にはポケットがないためか、胸にビッグライトをさす。
そういや、実際にこれを使うとどうなるかって研究した本があったな。その内容によると、首と身体がおさらばしてしまうんじゃなかったっけ。




30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 00:25:10.31 ID:4LFBGEewO
そんな俺の心配を余所にハルヒは朝比奈さんを抱えたまま窓から身を乗り出すと、鳥のように飛んでいった。
辺りにひゃあああ、という朝比奈さんの悲鳴が木霊する。
「これはどうやら反重力発生装置らしいですね」
じゃあ、このプロペラみたいなのは飾りか。
「そうとしか言いようがありませんね。さて、皆さん行きましょうか」
古泉が修学旅行前夜の小学生のような顔でそう言うと、
「僕はちょっと疲れたからここにいていい?」
お前がいなきゃ話にならんのだが。
「この疑似空間のせい」
長門がそんなことを口にした。
どういうことだ。
「涼宮ハルヒがこの空間を夢と認識し、物理法則が普通の空間とは異なっている。ドラえもんが有する内部回路に不具合が生じている可能性がある」
「どうにかできるか?」
「やってみる」
仕方ないな。なんとかなったら来てくれ。
「これを渡しておくから、なにかあったら使って」
と、ほんとうに調子が悪そうにドラえもんがスペアのポケットを渡してきた。
「分かった。長門、ドラえもんを頼む」
そう言って、長門に任せて俺と古泉はハルヒの後に続いた。
一瞬の落下感の後にフワッと身体が浮くような感覚に囚われる。
「どうしてどこでもドアがあるのに、タケコプターなんてあるのか。なんて考えてましたが、その理由が分かった気がします」
ほう。一応聞いてやろうか。
「車が大量生産される時代にも関わらず、我々は徒歩を用います。それから分る通り徒歩には徒歩の良さがあるように、タケコプターにはタケコプターなりの良さがあるんでしょうね」
たしかにこの浮遊感は他では味わえないな。
そんなことを思いながらあれこれ試してみた。




31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 00:27:15.66 ID:4LFBGEewO
身体を前に倒すと前に進み、立てると止まるというふうに出来ているようだ。
しばらくそうやって最高速度でも試そうかと思った瞬間、目の前を行く古泉の姿が消えた。
いや、俺がなにかに包まれたのか?
俺の視界一杯にやけに生暖かい空間が広がる。
「みくるちゃん、いいもん捕まえたわ」
空気がびりびりと震えるような大声がしたかと思うとぱかっと上半分が消失して、巨大な朝比奈さんと目があった。
「あっ、キョン君!」
俺は最大瞬間風速六十メートルほどの甘い吐息に吹き飛ばされそうになる。
朝比奈さんの豊かな部分はさらに巨大化して、そこには二世帯が優に生活できるほどの面積があった。
まあ、その権利は誰にも渡す気はないが、
「ビッグライトもう使ったのかよ」
「当たり前でしょ。あたしはみくるちゃんとしばらく遊んでるから、あんたも遊んでなさい」
そう言うと巨大ハルヒは胸一杯に息を吸い込んで、ふーっと手のひらに乗っかっていた俺に吹きつけた。
台風の比ではない強風にあおられて俺はきりもみ状態で吹っ飛ばされた。
あわや地面と直撃する寸前になんとか体勢を立て直すことに成功する。
いっそのこと地球破壊爆弾でもぶつけてやろうか。
そう思ってハルヒの方を見ると、その馬鹿げたサイズが分かった。
バニー衣装の耳だけで車一台ほどある巨大ハルヒの身長は校舎の優に二倍はあった。目測で三十メートルと言ったところだろう。




32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 00:29:36.88 ID:4LFBGEewO
ハルヒはこれまた巨大バニーの朝比奈さんの手を取ると、一足飛びで俺が毎朝暗澹たる気分で登っている通学路を下っていった。
俺もああやって通学すれば朝の貴重な睡眠時間がのばせそうだ。ただ、ものの三日もしない内にNASAあたりにガリバーのように縛られて解剖されかねんのが問題だな。
いや、しかし勢いがつき過ぎて…………ああ。
ハルヒは勢いを殺し切れずに丘の下に広がる密集した住宅地へと猪の如く突っ込み、建て売り一軒家を十件全壊させた。
それが楽しかったらしく、まるで石ころでも蹴るように住宅地を更地にして言った。
「ひぇぇ、涼宮さん駄目ですよ」
朝比奈さん。あなたもよろけた拍子に二三軒踏んでますよ。
「これが“鏡面世界”でよかったですね」
ふらふらと浮いて近寄ってきた古泉がそう言った。
「ああ。ただ、やってることが“神人”と変わらないように見えるがな」
「あれは涼宮さんの破壊願望の現れですからね。まあ、涼宮さん自身この世界を夢と疑ってはいないようですから、作戦は成功と言えるでしょう」
そう言って、ハルヒの精神分析医は肩をすくめた。
しかし、いつまでハルヒがこの世界を夢だと思うかが問題だ。




33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 00:32:02.27 ID:4LFBGEewO
「涼宮さんがこれを現実だと認識したら、それこそ今の世の中を席巻している物理学や化学は一辺するでしょう。ただ、その可能性は限りなく低いと思いますよ」
どうしてそんなことが言えるんだ。
「涼宮さんは興味を抱くとそれ以外のことを重視しません」
あいつは楽しければそれでいいってところがあるからな。
「そういうことです。だから、僕たちは涼宮さんを飽きさせずに満足させる必要があるんですよ」
それが一番の難問なんだがな。明日までには片付けないと、学校が始まってしまう。
「その必要もないと思いますよ。ほら、あれを見て下さい」
古泉がそう言って示した先にはあべこべになった時計があった。その秒針は止まったまま氷ついたように動かない。
壊れてるのか。
「いえ、時間が止まってるんですよ」
さらりと言うな。どういうことだ。
「感覚としか説明できないんですが、ここは涼宮さんが作り出す閉鎖空間に似ています」
あそこは時間が止まってるのか?
「いえ、閉鎖空間は進んでいますが……こっちはほとんど進んでいませんね」
月曜の朝学校に行ったら俺たちだけ中年になってた。なんて嫌だぞ。
「そのためにも、涼宮さんを満足させないといけませんね。では、僕はもう少し空中浮遊を楽しんできます」
そう言って古泉はふらふらと飛んでいった。
呑気なもんだな。
せめて俺だけでも、とハルヒが満足しそうな道具を考えてみてもいまいち思いつかない。
今のうちになにがあるかだけでも聞きに行くか。
俺はふらふらとSOS団の部室へと戻った。




34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 00:34:59.63 ID:4LFBGEewO
「おっ、治ったか?」
窓際で外を見つめていたドラえもんに尋ねたが一切の反応がない。
不思議に思って窓から中に入ろうとした俺は思わず落ちそうになった。
そこでは焦点の合わない目で虚空を眺めていたドラえもんの頭と胴体が別々の場所に置かれていた。
「……長門、これはどういうことだ?」
オイルまみれになりながら、ドラえもんの首から出た導線をいじっていた長門は、顔も上げずに、
「回路の物理的な装置を用いた流れをエネルギーのみに限定して再構築している」
と、呟いた。
はたして治るんだろうか。
「治る」
どのくらいかかるんだ?
「分らない」
口数少なく肯定系で話す長門の口から否定語が飛び出してきたことには驚いた。
「エネルギー回路の情報結合にかかる時間は不明。ただ、治すことは保証する」
自信たっぷりな無表情という矛盾に満ち溢れた表情で長門はそう宣言した。
しかし、この光景は不味いな。首と身体が分離したドラえもんなんて子どもに心的外傷を与えるだけだ。
「分かった。ただ、これはちょっとやばい。どこか別の場所でやった方がいいな」
長門はおもむろに立ち上がっると、出しっ放しになっていたどこでもドアで自分の部屋へと繋いだ。
長門は胴体を抱えると、スタスタと部屋に戻っていく。
となると必然的に残されたドラえもん生首は俺が運ばねばならんようになった。
虚ろな表情を浮かべるドラえもんが不憫になって、縁起でもないが台ふきで顔を覆ってやった。




35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 00:36:26.05 ID:4LFBGEewO
よしっと覚悟を決めて一息に持ち上げようとしたところ、ドラえもんの頭部は浮く気配すらみせないではないか。
そう言えば、ドラえもんって百二十九.三キロあるんだったな。二頭身だから頭だけで約六十五キロか。
抱えるにはちと無理がある重さだ。
「すまん。重くて持てない」
長門は無表情のままうなづくと、いとも簡単にドラえもんの頭部を抱えて出ていった。
俺はぽつねんと独り部室に取り残された。
そうなると言いたくなるいつものセリフを口にしようとした刹那、
「キョン、ちょっときなさい」
そんな轟音とともに強風に煽られる。
街を更地にするのに飽きたのかハルヒと朝比奈さんが戻ってきたらしい。
ハルヒは巨大な指で俺を掴むと、部室の外へ引きずり出した。
シャミセンの気分が分かった気がする。
「そんなことどうでもいいわ。それより今から、隠れんぼするわよ」
「隠れんぼ?」
「そうよ。あたしが鬼をするからみんな隠れなさい。あっ、みくるちゃんは元に戻っていいわよ」
そう言ってハルヒは胸からビッグライトを取り出して、不思議光線を朝比奈さんに当てる。炎天下に置いた氷のようにみるみる縮んで、俺より頭一つ分ほど小さいサイズに戻った朝比奈さんは疲れ果てたように溜め息をついた。
「キョン、ドラえもんとユキと古泉君を呼んできなさい」「ああ、僕ならいますよ」
と古泉がいつの間にか、ふらふらと飛んでいた。




36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 00:38:20.85 ID:4LFBGEewO
しかし、ドラえもんは生首と化しているし、長門はその修理にあたっている。
適当に茶を濁すしかないな。
「ドラえもんは長門と過去に行ってる」
「え? なんで?」
「昔紛失した宝もののありかを探しに行ったみたいだ」
「そうなの。まあ、いいわ。ドラえもんとユキは後から参加してもらうから」
言い訳が功を奏してハルヒはそれ以上突っ込まずに、
「じゃあ、今から隠れなさい。範囲はあそこまでよ」
と言って丘の下に広がる街を示した。
なるほど。たしかに、学校を中心とした二百メートルほどの円状に家々が更地になっていた。
しかし、たかだかこんな遊びのために家をぶっ壊すなんて某街作りゲームの市長より無慈悲なやつだ。
「それじゃ、三分待ってあげる。真剣に隠れなさいよ。一番に見つかった人には罰を与えるから」
そう言ってハルヒは校舎に腰かけて目をつぶりながらカウントを始めた。
「キョン君、ドラえもん君と長門さんが過去に行ったってどういうことですか」
朝比奈さんが小さな声でつぶやく 。
「実はドラえもんの調子が悪くて長門に修理して貰ってるんですよ」
「そうなんですか」
そう言って朝比奈さんは再び溜め息をついた。
朝比奈さんの未来、言うなれば朝比奈さんの帰る場所が消えてしまったのだからそりゃ溜め息の一つや二つもつきたくなるよな。
「僕たちは早くドラえもん君が戻ってくるのを祈りつつ、早急に隠れた方がいいでしょう」
ハルヒのカウントはすでに百を切っていた。




38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 00:40:39.79 ID:4LFBGEewO
俺と古泉がタケコプターで隠れ場所を見つけようと飛びたったところ、
「ひぇ、キョン君まって下さい。あたし飛べません」
と朝比奈さんに袖を掴まれて俺はバランスを崩した。
古泉は自分には関係がないといったふうにどこかへ飛んで行く。
しかたなくスペアポケットから朝比奈さんにどこでもドアを出してやってから、隠れる範囲ギリギリの場所を思い浮かべてドアを開いた。
「朝比奈さんはここに隠れていて下さい」
「え? キョン君は?」
俺は別の場所に隠れます、と言って朝比奈さんをどこでもドアの中に押し込んだ。
朝比奈さんのいずこへ売られる子牛のような顔を直視出来ずにドアを閉じる。
ドナドナを歌いたい気分にかられながら、どこでもドアを戻した俺はタケコプターの使ってカウントを続けるハルヒの元へと飛んだ。
ぐんぐんと上昇し続けハルヒの足を越え、妙に色っぽい鎖骨を越え、とうとう頭まで越えた俺は車ほどもあるバニー衣装のウサミミの部分に隠れた。
灯台下暗しさ。かけてもいい。ここならハルヒは気付かないぜ。
「さん、にい、いち……行くわよ!」
ぱちっと目を開いて、ハルヒが雄叫びを上げる。
俺の頭の中でジェット機が飛び交うような耳鳴りの中、巨大ハルヒが猛然と助走をつけてウサギのように丘から飛び降りた。
しばらくの浮遊感の後、どがんと家々を木っ端みじんにしてハルヒは着地した。




39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 00:42:38.40 ID:4LFBGEewO
あそこに俺たちがいたらどうするつもりだったんだよ。
ハルヒは頭の上で俺がそんなことをつぶやいたのも知らず、俺たちを探し始める。
その方法ってのがいかにもハルヒらしく、豪快かつ非常識だった。
まず、手近な民家を一軒両手で掴むと思い切りよく引っこ抜いて、
「いるなら出てきなさい」
と宣言し、何も返答がなければ遠くへ放り投げるといったものだ。
「あたしを止めたければ化け物でもなんでも出してきなさい!」
ハルヒは二十軒目を瓦礫に変えて怪獣のようにそう叫んだ。
多分、ほんとうにそう願ったんだろうな。
でなければあんなものが現れるはずがない。
地平線の彼方からのしのしとハルヒと同じくらい巨大な何かが、こちらに歩いてきた。
次第にその輪郭がはっきりと分かるようになって、俺は絶句することになった。
厳めしい面に、眼鏡。それはまさに古泉が作り上げたSOS団の敵役、生徒会長その人だ。
「出たわね、怪獣!」
「おい、涼宮。これはどういうことだ?」
「問答無用よ! おとなしく成敗されなさい」
そう言うなり、ハルヒは生徒会長に突進して首根っこを掴むと勢いよく地面に叩きつけた。
一本っと思わず叫んでしまいたくなるほど豪快に投げられた生徒会長は、潰されたカエルのような声を上げて動かなくなった。
これは……死んだのだろうか。
「そんな訳ないでしょ!」
「へ?」
「ちょっと投げたくらいで死なないわよ。ほら」
ハルヒは疑問符を浮かべる俺を指で摘んで、クレーンゲームの景品のように生徒会長の口元に近付けた。
その口からはヤニ臭い吐息が漏れている。
たしかに生きてはいるな。




40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 00:44:52.45 ID:4LFBGEewO
しかし、
「いつ気付いたんだ?」
「始めから分かってたわよ。どうせあんたのことだから、灯台下暗しとか馬鹿なこと考えて隠れたんでしょ。でもね、あれだけぶんぶんうるさければ誰でも気づくわ」
俺はぐうの音もでずに黙り込んだ。
「まあ、いいわ。あんたは一番最後に捕まえてネタバラシしようと思ったけど、こいつを見張ってなさい。もし逃がしたら罰金の上、グランドを半狂乱で十周の刑よ」
ハルヒはそう言って瞬く間に倒された生徒会長の横に俺を置くと、のしのしと他の獲物を探しに行ってしまった。
まさかバレてるとは思わなかった。かけは俺の負けだな。
俺はやれやれと嘆息しながらペアポケットからスモールライトを取り出して、生徒会長を元のサイズに戻してやった。
それでも気絶を続ける生徒会長に、柔道でいう喝でも入れてやろうと考えたところでやっと目を覚ました。
「……これはどういうことだ。涼宮の仕業なのは分かっているが」
目をしばたたかせての第一声はそれだった。
やはり俺はこの人にはある種の親近感を覚えてしまう。
俺が詳しい理由を話そうとしたところで、
「いや、やはりいい。俺は面倒ごとには首を突っ込まん主義だ」
その方が懸命かもしれん。この人は古泉属する“機関”と金の関係で動いている。深く首を突っ込めばどうなるかは、この人が一番理解していることだろう。
「そういうことだ。しかし、起きたらこんなところにいるのには驚いた。“機関”だろうとこの出費は痛手だろうな。それに俺の慰謝料も払って貰わねば」
「いえ、ここは本当の世界ではないんですよ。だから、人はいません」
「ほう。だとしたら、むしり取るかいがあるというものだ」
くくっと笑い声を上げたのは本心からだろうか。




41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 00:48:22.14 ID:4LFBGEewO
ひとしきり笑ったあと、生徒会長は元の仮面じみた表情を浮かべた。
「おい、また生徒をたぶらかしたのか? これでは密約違反だ」
「なにがだ?」
ぱっ振り返った俺の視界の隅で生徒会長が吹っ飛ぶのが見えた。
しかし、今の俺には道化を演じる生徒会長の安否など気にする余裕はなかった。

俺がいうのもなんだが妙な名前をつけられた暴虐非道な人物がいる。そいつは楽しみは自分だけで楽しむような奴だが、ハルヒはそういうことをしない。楽しみはみんなで楽しむべき、と考えているだろう。
しかし、ハルヒよ。
楽しみはみんなでやれば倍になるかもしれん。だが、恐怖や痛みは半分になったりなんかしない。等しく平等にあるものなんだぜ。

頭の片隅でそんなことを考えていた俺の右腿は切り裂かれた。
朝倉涼子の禍々しい白刃によって。



44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 00:51:47.45 ID:4LFBGEewO
冷たい金属が抉り込まれるような感触がして、一瞬後にはそれが灼熱の棒を傷口に突っ込まれたような痛みに変わった。
俺の鼓動に合わせて血が噴出する。
「久しぶりに動いたから、動き方忘れちゃった」
ぶんぶんとナイフを振って確かめるような動作をする。
「お前は消えたはずだ。なんで……」
「うるさいなあ。黙ってて、永遠に」
そう言って朝倉はぼやけるほど高速に手を振った。
わずかに遅れて俺の頬肉が五グラムほどはぜる。
「んー。やっぱりおかしい」
頬と右腿の痛みに呻く俺の耳に早口言葉のような朝倉の声が届いた。
何が起こるかは分からんが、今より良くなることなどありえない。
俺はスペアポケットに手を突っ込んで、例のアレを取り出した。
黒い筒状の物体を手につけて、
「どかん!」
と叫んだと同時に先端から空気の塊が発車される。
空気砲ってやつだ。
風圧で朝倉の華奢な身体は吹っ飛ぶ……はずもなかった。
空気砲の一撃は朝倉の長い髪をわずかに揺らしただけに止まる。
「よし、終り」
呟くように言った朝倉は目にも止まらぬ速度で突っ込んできた。
それを狙い撃とうと構えた空気砲が金属と金属がぶつかる音を立てて消失する。
その衝撃で俺の後頭部が地面と激突した。それが効を奏して俺の首を刃が横断するといったことはなかったのだが、危機的絶体絶命的状況には変わりがない。
朝倉が一瞬背を向けた拍子にスペアポケットから適当に出したものを投つける。
朝倉の頭にあたって中身がばらばらと散らばった。
べちょべちょと俺の顔にも降り注ぐ。
もっとマシなのがあるだろ。せめて鈍器とか。




45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 00:53:55.42 ID:4LFBGEewO
「何これ。コンニャク?」
ああ、カレー味だ。旨いぞ。食うか?
「君を殺した後にね」
そう言って朝倉は俺の腿を踏みつけた。
「ぐあっ」
大量の血を吸ったズボンが濡れた雑巾のような音を立てる。
「やっぱりおかしい。この空間のせいかな」
そう言って踏みつける足をどかさずに再びぶつぶつと呪文を唱え出した。
しかし、さっきはただの早口言葉にしか聞こえなかった言葉が今回は明確な意味を伴って耳に入る。
『本次元の物理法則に身体情報の適合化申請』
なるほど。さっき少し舐めたやつのせいか。
翻訳コンニャクカレー味だっけ。
『身体情報の強化申請!』
なんとなくの希望に駆られた俺は叫んでみた。
朝倉の顔が驚愕に変わり、ナイフが振り下ろされる。
ああ、これは死んだな。
走馬灯が頭の中を駆け巡る中でどこかから、
『承認』
という機械的な声が響いて朝倉のナイフが少しゆっくりになった。
わずかに首を捻ると、その真横をナイフがかすめる。
ならばと、俺は朝倉を蹴った。空気砲でもみじろぎさえしなかった朝倉が呆気ないほどに吹っ飛ぶ。
どうやら、俺の“身体情報”はほんとうに強化されてしまったようだ。
ここから怒濤の反撃が始まる。
というのはヒロイズムに駆られた若者だけで、俺は逃げも隠れもする一般人だ。
俺は朝倉から脱兎の如く距離をとると、スペアポケットからどこでもドアを取り出した。
その時、思い浮かんだのはニヤけた超能力者でも愛しい未来人でもましてや巨大バニーのハルヒでもない。
無表情に俺を助けてくれる頼れる宇宙人、長門の顔だった。




46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 00:55:33.05 ID:4LFBGEewO
ドアを開けるとすぐにリビングがあり、真っ先に長門が無表情のまま迎えてくれる。
そんな妄想は半分当っていた。
長門が無表情にたたずんでいる。
ただし、長門の顔には外したはずの眼鏡があり、その奥には一人の少女と首が元の位置に戻ったドラえもんが大量のネズミの上に倒れていた。
ところどころ破けた北高の制服、ボブカットの髪。
それはどうみても眼鏡を外した長門だった。
愕然とその光景に立ち尽くす俺の肩口に強烈な痛みが走る。
ふり返らなくても分る。朝倉のナイフだ。
俺は肘で朝倉の頭部を強打してから、部屋に転がり込んだ。足でどこでもドアを蹴り閉める。
それに部屋を埋め尽くしていたネズミたちが驚いて、開け放たれていた玄関から逃げていった。
その残党を足でかき分けながら、倒れる長門に駆け寄った。
走る度に痛みが身体中の神経を飽和的に刺激する。
「長門、大丈夫か?」
「……問題ない」
長門は苦しげな声で喘ぐように言った。
「なんで、こんなことになってるんだ?」
「空間変異から私の異時間同素体が発生した。その異時間同素体は私に同期を求めてきた。それを拒否すると、私に対して敵対行動を行なった」
よく分からんが、格好から察するに過去の自分が現れて攻撃してきたってことだろう。
「そう」
と、長門のお墨付きも頂いたところで、どうしたもんかね。
過去の長門と今の長門を交互に見た。
過去の長門は眼鏡の奥で無表情にこちらを見つめているし、こちらの長門は裸眼で俺を見つめている。
たまには眼鏡でもいいかもしれん。




47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 00:57:59.67 ID:4LFBGEewO
そんなことを思ったのが不味かったのか、長門が俺の背に手を回して、吐き気をもよおすような激痛が走った。
その手には柄の部分まで血に塗れたナイフが握られている。
げっ、刺さってたのか。
長門はこくんとうなづいてから、ぶつぶつと呪文を唱えた。
俺の耳には『局所的生体情報の時間逆行申請』だとか聞こえて、身体から痛みが引いていく。
「あなたはなに?」
その様子を見守っていた過去の長門がやっと口を開いた。
なにと言われてもな。
「そのバグを排除するのを阻害する?」
そう言って現在の長門を指差した。
「長門をバグだと? ふざけるな!」
俺は思わず怒鳴っていた。
普通の女子高生になろうとしている長門を馬鹿にする奴はたとえ、宇宙人だろうが未来人、超能力であろうがぶっとばす。やるのは俺ではないが。
「そう。ならば、あなたも排除する」
過去の長門が翻訳コンニャクを食った俺の耳でも聞き取れない高速呪文を詠唱すると、フローリングの床がぼこんと盛り上がり刺のようになって俺と長門に迫ってきた。
俺は長門に突き飛ばされて、なんとか串刺しにならずにすんだのだが、過去の長門は体勢を崩した長門にロケットのように突っ込んでいった。
長門は紙一重で過去の自分の足先をかわすと、ためらいのない蹴りを放つ。
過去の長門はその蹴りを首筋に受けてつんのめるように床に倒れた。
現在の長門はその上に覆いかぶさるようにマウントポジションをとると、過去の自分の殴り始めた。
あの細腕では信じられないような速度で伸びる拳は的確に過去の長門の顔を捕らえて、ごつごつと骨と骨がぶつかる音を立てる。
長門がこのまま決めるか。




49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 00:59:38.78 ID:4LFBGEewO
しかし、過去の長門が恐るべき早口詠唱を唱えるとフローリングが上で殴り続ける相手を刺し貫こうと変形した。
そのヤリは腹部をわずかに削るのみに止まったが、長門の注意をそらすには十分な働きをした。
過去の長門は自分を上にのせたまま、肉体的常識が一切通用しない起き方で立ち上がり、無防備な長門の頭を鷲掴みにした。
間、髪を入れず壁に長門の頭を叩きつけ始める。
人外バトルに呆気に取られていたが、このまま長門がやられるのを手をこまねいて見ているほど今の俺は無力ではなかった。
恐らくは長門のパトロンの宇宙的パワーで強くなっている。
俺は目の前にあった朝倉のナイフを手に取ると、長門を壁に押えつける過去の長門に向って闇雲に切りつける。
しかし、ナイフの刃が届く前にみぞおちに過去の長門の踵がめり込んで、俺はダンプにでも轢かれたように吹っ飛ばされた。
壁に激突した俺の肺中の空気が喉を鳴らして、晩飯やらなんやらを吐き出した。
脂汗が噴き出し、歪む視界の中に過去の長門が今まさに必殺技を放たんと詠唱をする姿があった。
「やめろ!」
そう叫んだ俺は脇に転がっていたドラえもんの尻尾を引っ掴むと、過去の長門に向って放り投げていた。
火事場の馬鹿力か宇宙的パワーのお陰か、ドラえもんは水平に飛んでいった。
詠唱に気を取られていた過去の長門に百二十九.三キロの塊がまともに衝突する。
嫌な音を立てて過去の長門は壁とドラえもんにプレスされた。
ここで終ってくれ。




50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 01:01:10.44 ID:4LFBGEewO
そんな願いも虚しく、過去の長門は頭から血を流しながら平然と立ち上がった。
化け物かよ。
あばらが折れたのか、息をするのも嫌になってきた俺に向って過去の長門は詠唱を始める。
『座標08514563、08965123、4213569のベクトル解除、及び変更申請』
それがどんな意味かはすぐに理解できた。
リビングにある唯一の家具のコタツが水平に飛んできやがった。
避ける間もなく、腹ばいになっていた俺の顔面に直撃する。
その衝撃でひっくり返された俺の喉に何かが流れ込んできた。
げほっと再び腹ばいになって吐き捨てると尋常ならざる量の血がフローリングに広がった。
今日は出血大サービスだな。
そんな下らないことを考える気力がどこにあったのかは分からんが、俺はまだ動ける。
ずりずりとまるでイモムシのように過去の長門に這い寄っていく。
「なぜ、あなたにそこまでしてこのバグを守る必要がある?」
唐突な問い掛けだった。
俺は肺から息を絞り出すように、
「なぜって長門が大事な奴だからだ」
「どうして?」
過去の長門の無表情な顔からは何も伺い知ることはできない。
「SOS団の団員は一人でも抜けたら駄目なんだよ」
俺はあの時の喪失感を思い出していた。あんなことは金輪際ごめんだ。
「SOS団とは?」
世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団だろ。
「涼宮ハルヒが結成した団? 私はその団員? あなたも?」
そうだ。それにしても、こいつは俺のことすら知らなかった。俺は四年前の七夕の日、長門に出会ったはずなのに。




51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 01:03:52.16 ID:4LFBGEewO
「私は情報フレアの直後に生み出された個体」
通りで何も知らないはずだ、と俺が納得していると、
「そのバグはSOS団にとって……涼宮ハルヒの観察において重要?」
ああ。SOS団になくてはならない無口な読書キャラさ。
「そう」
過去の長門はそれだけ言うと呪文のように『自個体の情報連結解除』と、呟く。
その直後、さらさらと足元から過去の長門の身体が崩れていった。
「お前、何やってんだよ」
「観察に"私"は一人で十分。余計な混乱を招く必要はない」
そう言い残して過去の長門は完全に消えてしまった。
俺の胸中にはなんとも言えない後味の悪さだけが残っていた。
俺には朝倉、ハルヒには生徒会長、ドラえもんにはネズミ。
これから推測するにハルヒのでたらめな力は、自分が敵だと思うものを具体化したのか?
だとしたら納得がいく。
長門は過去の自分をもっとも畏怖していたんだ。
俺たちと過ごした非常識で濃密な期間は長門の中に感情を作り出した、いや、元からあったものを外に出させたのだろう。
しかし、それをバグと切り捨てた過去の長門はどうだ。
自分の存在を軽視し、ハルヒの観察のために生み出されたことを享受していた。




52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 01:05:23.13 ID:4LFBGEewO
俺はやり場のない感情をどこにぶつけていいかも分からずにただ過去の長門がついさっきまで存在していた場所を見つめた。
身動き一つしなかった長門がわずかに動いて、俺は正気に戻った。
大事なのは過去じゃなく今だ。
「長門、大丈夫か?」
「問題ない。私の異時間同素体は?」
消えちまったよ。影も形もなくな。
「そう」
長門の口からそれ以上の言葉が出ることはなかった。
何を考えてるのか一般人の俺には理解ができないし、しようとしても長門はそんなこと望まないだろう。
そう考えると妙にしんみりとした気分になってきた。
場の沈黙が重くのしかかってくるのから逃れるように、俺は長門から視線を外した。
その先には、俺に投げられてそれっきり忘れ去られていたドラえもんが縫いぐるみのように転がっていた。
こいつは、何しにきたんだろうな。




53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 01:07:14.40 ID:4LFBGEewO
そのまま置いて行こうかとも考えたが、一応はゲストであるのでほっとく訳にもいかず、せめてもの報復として叩き起こそうかと立ち上がった俺の身体が悲鳴を上げた。
よく考えれば朝倉に切り刻まれたのは長門に治してもらったからいいとして過去の長門に痛めつけられて一般人の俺が平気なはずがないというものだ。
だいたい痛みは気付くと酷くなるという性質をもっていやがるので、痛みが等加速的に増加する中、頼れる宇宙人にお願いを申し立てた。
「長門……治してくれ」
「推奨できない」
すまん。どういうことだ。
「あなたがなんらか力により我々のプロセスをもって情報の改ざんを行なったせいで、あなたの身体を構成する分子構造が不安定になっている」
端的に言うと無理ってことか?
「そう。もし行えばあなたが分子レベルで崩壊する可能性がある」
長門はそう言って『初期化申請』とかなんとか呟いて、自分の身体を治した。
いっそのこと自分でやろうかなとも考えたが、俺は分子レベルで崩壊なんて恐ろしいことにはなりたくないので諦めた。
死ぬよりはましさ、と達観すると動けるのが不思議だ。
立ち上がった俺は長門の細い肩に掴まりながら、役立たずの不良品の元に喘ぎながら近寄った。
「なあ、長門……これ死んでるんじゃないか?」
横たわるドラえもんは白目むき出し、口半開きでぴくりとも動かない。そんな時はたいていそういう状況か、それに近い状況であるというのが俺の見識である。




54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 01:08:55.46 ID:4LFBGEewO
「電源装置を操作されて強制電源オフモードになっている」
「電源装置なんてあるのか?」
「これ」
と、長門は赤いボール付のドラえもんの臀部から生えた尻尾を引っ張った。
たしか、とっさにそれを掴んで投げたような気もするが、あいにく俺の記憶からはすでに消去されており、この件に関しては迷宮入りとする。
「そっか、じゃあ戻せるか?」
長門はこくんとわずかにうなずいてから、おもむろにドラえもんの尻に足をかけて思い切りよく引っ張った。
なんだかチェーンソーみたいな電源の入れ方をされたドラえもんの瞳に黒目が戻ってきた。
「ネズミ! ネズミが!」
人が切り刻まれて、蹴り飛ばされている間中のほほんと気絶しておいて第一声がそれか。
無性に腹が立った俺は平手でドラえもんの頭をぶん殴ってから、
「もういないから落ち着け」と叫んだ。
ぶん殴った手がひりひりと痛む。
よく青春ドラマなんかで、チープな効果音とともに生徒ぶん殴る熱血教師役が、殴ったこっちも痛いんだぞ、なんて理不尽極まるセリフをいうことがあるが、あの心境が分かった気がした。
あれは殴る方も心が痛いという暗喩を含んだセリフではなく、殴った拳が痛くてさらに腹が立ったという意味のセリフだ。
と、俺がつらつら無駄なことを考える間を置いてから、
「よかった」
なんてほざきやがった。
長門に今度は意識を保たせたまま、分解と組み立てを二三回やってもらうべきだろうか。
しかし、いつまでも怒っていては話が進まんし、さっきから頭の片隅にしつこい油汚れのようにこびりついていることがある。




55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 01:10:21.26 ID:4LFBGEewO
ハルヒには生徒会長、俺は朝倉、長門は過去の自分、ドラえもんには大量のネズミとくると嫌がおうにも、ここに介在する人員にはすべからく敵対する存在が現れるような流れになっている。
だとしたら、ニヤけたエスパー野郎にも現れるだろうし……
俺はその瞬間にどこでもドアへを引きずり出していた。
思い浮かべるは恐怖に身を竦ませる愛しいバニー姿の未来人の泣き顔だ。
超能力者には自分でなんとかやってくれることを祈るしかない。古泉よ、骨は拾ってやるからな。
扉を開けるとそこは異世界だった。
思わず戸を閉めたくなるのを精神力でねじ伏せてから、俺はテーブルの上で発狂寸前の朝比奈さんの元へ走った。
ぐじゅぐじゅと嫌な音を立てて、俺の足元にいた不幸なやつらが潰れていく。
長い触角、てらてらと柔らかそうな背中、六本の足には用途不明なとげ……ああ、ゴキブリだよ。それも、床一面を埋め尽くすほど大量のな。
俺は朝比奈さんの肩を抱くと、そのままどこでもドアに逆戻りした。
わけも分からず連れ出された朝比奈さんは、足元のゴキブリを踏み付ける度にひゃあだのひぃだの叫ぶ。
部屋に戻った瞬間に、扉を蹴り閉じる。脱出しようとしていた数匹が挟まれて実に嫌な感触を残した。
「……ひぐっ……えぐっ……ゴっ……ゴキっ……」
バニー衣装の朝比奈さんはフローリングに座り込んでからさめざめと泣き始めた。
「もういませんから、落ち着いて下さい」
そう言って俺が朝比奈さんの頭をなでていると、
「翻訳コンニャクだそうか?」
いらんし、もう喰っとる。
どうやらこの役立たずのポンコツロボットはOSに重大な欠陥があるようなのでそれ以来無視すること二十分。やっと朝比奈さんが少しづつ語り始めた。




56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 01:13:04.85 ID:4LFBGEewO
それを正確に書き記すとひぐっだのえぐっだのが数百回入ることになり、そんなことは読む方も書く方も面倒なことこの上ないので要約すると、
「キョン君から知らない所に押し込まれて、しかたないからじっと隠れてたら、ガサガサと音がして大量のゴキブリがなだれ込んできた」
と言うことになる。
しかし、相手がゴキブリでよかった。いくら見た目に嫌悪感を覚えるとはいえ、死ぬことはない。
いや、昆虫博士と言われた俺でさえ失神しかけたのだから、朝比奈さんならショック死してもおかしくないな。
この僥倖に感謝をして、長門に抱えられた朝比奈さんと、ドラえもんにおんぶされる形の俺は古泉のところへ行くこととなった。
こんどはなんだ。大量の〇〇だとしたらこの扉を閉める覚悟をもって、俺は慎重にドアを開いた。
その向こうは何かが蠢いている気配もなく、強めの風が流れ込んできた。
そこはどこかの屋上らしく、古泉は落下防止のフェンスに腰掛けて遠くを見ていた。
これで頭にタケコプターが乗っていなければサマになったのだろうが、これでは春先に出没する類の人である。
古泉は俺たちに気付くと、俺の姿と朝比奈さんの姿を見比べてから、
「僕がいない間に大変だったみたいですね」
と朝比奈さんに語りかけた。
それに対して朝比奈さんもこくこくとうなづく。
「見損ないましたよ」
どうもこいつはとんでもない勘違いしているらしい。
「え? 僕はてっきりあなたが誰もいないことをいいことに朝比奈さんを押し倒して、それを見つけた長門さんが救助したものとばかり」
だろうと思った。
で、お前には何が出たんだ?




57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 01:14:47.59 ID:4LFBGEewO
「ええ、あれを見て下さい」
古泉が示した先には、巨大バニーハルヒとそれと同じくらい巨大な青黴人形がつかみ合いをしていた。
おい。あれは……
「そうです。あれはご覧の通り、“神人”です」
こんなとこまでわざわざ出張してきたのか。
「いきなり出会ったときは驚きましたよ。さらに、いつものサイズより巨大ときています」
そりゃ、なあ。あんなものが出たらびっくりするわな。
だが、なんでハルヒが戦ってるんだ?
「僕がしばらく能力を駆使してやっていたんですが、涼宮さんが神人を見つけてしまったらしくいきなり割って入ってきました」
なんとなくその光景が目に浮かぶ。
古泉が火の玉になって仲良く巨大青黴と削り合いをやってる最中、これはあたしのオモチャよ、とばかりに青黴人形にタックルするハルヒの姿が。
「ええ、だいたいその通りです。ただし、最初の一手は見事なまでの飛び蹴りでしたけどね」
そうか、と言って俺たちは各々腰を落ち着けたが、朝比奈さんだけは「キョン君の怪我を治療しなきゃ」なんて嬉しいことを言ってくれ、どこでもドアで部室に救急箱を取りに行かれた。
ハルヒに相手を取られて余程暇だったのか、古泉はさらに話しかけてきた。
「ところで、僕には何が出たのかと言っていましたが、皆さんも何か出たんですか?」
俺には朝倉涼子、長門には過去の長門、朝比奈さんはゴキブリ、ドラえもんはネズミだったな。あっ、そう言えば生徒会長が出たぜ。
完全に忘れ去っていたが、大丈夫なんだろうか。




58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 01:16:14.49 ID:4LFBGEewO
「ほんとうですか? だとすれば助けに行かないと……長門さん、彼がどこにいるか分かりますか?」
「この空間にはいない。元の空間に戻った」
「なるほど、涼宮さんの敵という役目を果たしたから帰っていったんでしょう」
可哀相な人だ。ハルヒの余興のためにこんな不思議空間まで連れて来られてボコボコにされるなんてな。
「そのために“機関”は彼をしたて上げたんですから、これは彼の仕事と言えます」
と、古泉が腹黒いことを言ってのけると同時に朝比奈さんが救急箱とお茶セットを持って帰ってきた。
「キョン君、痛くないですか?」
泣き顔の朝比奈さんに消毒液で顔面をなで回されると、痛みよりも微笑んでしまう自分がいる。
それからお茶を振る舞われた俺たちは、巨大バニーハルヒ対“神人”戦という怪獣対決を見物する運びとなった。
見たところハルヒの方が有利だな。
ハルヒは多少息が上がっているが無傷だし、青黴野郎の方は右腕が肘の辺りからもげている。
間合いをとっていたハルヒは唐突にタックルを敢行すると、“神人”を一気に抱えあげて真後ろに放り投げた。
回りの建物を粉砕しながら“神人”が吹っ飛んでいく。
半ば地面にめり込む形で止まった“神人”に駆け寄ったハルヒはここぞとばかりに蹴りあげていった。
それが続くこと五分、疲れたハルヒが距離を取ると“神人”は何事もなかったかのように立ち上がった。
なるほど、“神人”はどっかの生徒会長とは比べ物にならんほどタフらしい。
しかし、“神人”は攻撃をほとんどせずに立ち尽くすのみだ。




60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 01:18:45.95 ID:4LFBGEewO
「もうかれこれ、一時間はこの状態です。恐らくは涼宮さんが不満を持っていないせいでしょうね」
だが、これじゃ終るのがいつになるか分からんな。長門、あいつをどうにかしてくれ。
長門は“神人”を見つめてから、『情報連結の連結力低下申請』だかなんだか呟いた。
それからハルヒの攻撃が決まる度に“神人”はボロボロと崩れていき、とうとう粉々になった。
誰に対してかは分からんが胸を張るハルヒに、痛みをこらえて大声を張り上げる。
「ハルヒ、こっちだ!」
ハルヒはキョロキョロと辺りを見渡してから俺たちの姿を認めると、のしのしと歩いてきた。
「なによ、あんた達もう出てきたの?」
疲れたからな。
「あたしも疲れたわ。みくるちゃん、お茶頂戴」
そう言ってハルヒは手を差し出した。
こいつの一口はどれぐらいの量なのかと概算してから馬鹿らしくなった俺は、
「そんなに飲みたきゃ貯水槽の水でも飲めばいい」
「冗談よ。ふん!」
少し不機嫌な顔をしてハルヒは自らにビッグライトの怪光線を当てた。
みるみるビルを追い抜いて小さくなっていく。
とうとう元のサイズに戻ったハルヒがビルの下で叫ぶ。
「どこでもドアで迎えにきなさい」
俺は逆らうと後が面倒なので、素直に迎えに行ってやった。
扉を開けると上機嫌なハルヒは礼も言わずに座り込んでから、
「あー、疲れた。二連戦はやっぱり疲れるわね」
と言ってお茶を啜り始める。
「そう言えば、キョン。なんで怪我してるの?」
「タケコプターで事故った」
「もう、なにしてんのよ。便利なものほど使い方を知らないとダメなのよ。タケコプターも免許制にしなきゃね」
タケコプター免許制にはどちらでもいいが、これからどうするんだ。




62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 01:24:37.17 ID:gOLi0lVt0
読みやすい。ワクワクする


65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 02:00:56.52 ID:4LFBGEewO
無論、ハルヒがそろそろ休むというのを期待して言ったのだ。時間の止まっている“鏡面世界“は昼下がりでも、俺達の体感は明け方の四時くらいだし、この上なく満身創痍の俺は今にも倒れそうだ。
「そうね。やりたいことはやったから、もう一度ミーティングよ。部室に戻りましょう」
バイタリティーとか、無尽蔵とかいう言葉を某電子辞書で検索すると全てが涼宮ハルヒというページに行き着くんじゃないだろうか。
部室を思い浮かべてから、どこでもドアの扉を開く。
ハルヒによって運び込まれた雑貨品、朝比奈さんのお茶セット、長門の大量の本、古泉のボードゲーム、折り畳み式のパイプ椅子、パソコン。
しかし、扉の先には俺が思い浮かべた風景にはいない人物がいた。
「……忘れてたぜ」
呆然とする俺は自分の生み出した亡霊に胸を貫かれた。




67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 02:02:17.64 ID:4LFBGEewO
すでに朝倉涼子の姿はなかった。さらさらと朝倉の残滓だけが、ゆっくり風に流されていく。
宇宙人って奴はどうしてこうも自分勝手なのかね。
「キョン、今のなに!? キョン!」
一部始終を呆然と見ていたハルヒは思い出したように、俺の肩を掴んで振った。
やめろ。痛いだろうが。
やはり、口からは声の代わりに鮮血が溢れる。
「キョン! キョン!」
「涼宮さん、やめて下さい! 動かしてはいけません!」
古泉のにハルヒは素直に従ったが、それでも俺の肩を握る手は離さなかった。
「今から胸のナイフを抜きます。涼宮さんと朝比奈さんは出ていって下さい」
「嫌よ! あたしも手伝うわ」
ハルヒはその提案を拒否してから手に力を込めた。
「出ていって下さい!」
いつもイエスマンだった古泉が叫んだ。
それでもハルヒは出て行こうとはしなかったが、
「一刻の猶予もないんです! 出ていって下さい!」
古泉の怒号のような叫びにとうとう屈し、どこでもドアから外へと出ていった。
古泉がゆっくりとドアを閉じる。







68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 02:05:19.81 ID:4LFBGEewO
しばらくして再びドアが開かれてから一番に駆け込んできたのはハルヒだった。
自分で自分を抓ったのか、涙のスジを浮かべた頬は腫れていてどこかむくれっ面のように見える。
「キョン! キョン!」
ハルヒの沈痛な叫びが、ぼんやりとした俺の頭の中に響く。
「できるだけの処置はしましたが……もう、長くは……」
と、古泉が目に涙を浮かべて呟くように言うと、
「ドラえもん! お願い、何とかしてキョンを助けて!」
ハルヒはドラえもんに詰め寄った。
「無理だよ……人の生死には関われない」
聞いたこともないような苦しげな声だった。
「嘘よ!」
「人の生死に関わるような道具はプロテクトがかかる。だから……ごめん」
「そんな……」
ドラえもんの言葉にハルヒはへたへたと座り込む。
「キョン君! キョン君!」
青ざめた表情の朝比奈さんが俺にすがりつくように叫んだ。
長門とドラえもんだけは、迫りくるその時への心構えをするように立ち尽くしている。
「……ハルヒ」
俺の口から自分の名前が出たのを聞いてハルヒは立ち上がった。
「何? キョン、苦しいの?」




69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 02:06:48.64 ID:4LFBGEewO
俺は朦朧とする意識の中で、少しの逡巡をしてから、
「ハルヒ……こんな時だけど……いや、こんな時だから言いたい……」
と呟くと、ハルヒは俺の手を包むようにどこまでも優しく掴んだ。
「俺……お前のこと……」
弱々しい俺の言葉を聞き取ろうとハルヒの顔が間近に迫り、涙がいくスジも頬へと滴り落ちた。
「好きだった」
「……バカ」
ハルヒはこの一年間の中で一番複雑な表情を浮かべてそう呟いた。
ふとハルヒに握られた手から力が抜ける。
「キョン!? ねえ、キョン起きて! ねえ、ねえ!」
「キョン君!? キョン君!」
壮絶な二人の叫びが部室に木霊して、世界が浮き上るような感覚に囚われる。

「始まりました」
古泉がそう呟くと、ハルヒが俺の上に倒れ伏せた。
泣き疲れたようなハルヒのあどけない寝顔が俺に罪悪感を喚起させる。
しかし、今の俺たちにはやらねばならんことがある。
俺は立ち上がってハルヒを抱えると、どこでもドアへと歩みよった。
―――――
ドアを閉じた古泉の表情は先ほどとうってかわったように明るかった。
酸欠状態ではっきりしない頭で古泉の急変の理由を考えたがちっとも要領を得ない。
「ちょっと痛いですが、我慢して下さい」
そう言うなり古泉は無造作に地面に刺さった杭を抜くかの如く、俺の胸に刺さったナイフを抜いた。




71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 02:08:38.90 ID:4LFBGEewO
悲鳴とともに吐血した俺に布のようなものが被せられると、嘘のように痛みが引いていった。
「もう大丈夫ですか?」
「たぶん」
誰もいない空間からドラえもんの声がして、風呂敷が宙を踊った。
「もう隠れなくて大丈夫ですよ」
それを受けて、瞬いた間に石ころ帽子を手に持ったドラえもんが姿を現した。
タイム風呂敷か、と呟いても血が込み上げてくることはなかった。どうやら、傷の方は回復したらしい。
「あなたが朝倉涼子に刺されたときはどうしようかと思いましたよ」
そう言って肩をすくめた古泉の面はいつものニヤけた面だった。
何を企んでるんだ。
そうでもなければ、こいつがイエスマンの仮面を脱ぎ捨ててまでハルヒを遠ざける理由はない。
「あまり長くては怪しまれますから、手短に話します」
ああ、そうしろ。ただし、つまらん理由だったらぶん殴るぞ。危うく死にかけたんだしな。
「肺に穴が開いただけですから、後数十分はもったと思いますが」
じゃあ、どれだけもつかお前の身体で試してやろうか。
「冗談はさておき、本題に入ります。さっきあなたが刺された時、この“鏡面世界”が揺らいだのが分かりましたか?」
刺されている最中にそんなことに気付く奴がいるのか。
「それはそうでしょうね。しかし、その揺らぎは大したものではありませんでした」
なぜだか分かりますか、とでも言いたげだが知るわけがねえだろ。




72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 02:09:50.96 ID:4LFBGEewO
「この作戦の発案者とは思えない発言ですね。作戦の根幹を思い出して下さい。これは涼宮さんの夢という設定の元に行われている舞台なんですよ。ですから、それをいまだ疑っていない涼宮さんも貴方が死ぬとは思っていません」
ハルヒはまだこれが夢だと信じてたのか。
「ええ。しかし、それを崩す方法があります。それは」
と古泉はわざとのように一拍空けてから、
「あなたの死です」
ちょっと待て。俺の死ってどういうことだ。
「いえ、死んだフリで結構です」
だから、なぜ死んだフリをしなければならん。
「あなたの死により、涼宮さんはこの“鏡面世界”の夢から早く目覚めたいと願うでしょう。そうすれば必ずこの世界は揺らぎ、崩壊を始めるはずです」
俺はまったく話が掴めず、腹が立ってきた。
「崩壊させてどうなる」
「ドラえもん君の帰る道が開かれます」
つまり、俺がくたばったフリをすることでハルヒがこんな夢なら覚めちまえ、と思えばドラえもんが帰れるってことか。
「そういうことです」
古泉はにやりと笑ってから、
「ここで一つ演出家としての提案なんですが」
そう言って俺の耳元で囁いた。
―――――




73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 02:12:14.42 ID:4LFBGEewO
古泉の提案が成功したらしく、地震のような揺れが続く。
突然立ち上がった死人をほうけたように見つめる朝比奈さんはドラえもんに任せた。
俺は古泉によって眠らされたハルヒを抱えたまま、自宅を思い浮かべてからどこでもドアを開いた。
しかし、その向こう側には俺の部屋ではなく文芸部兼SOS団の部室の延長だった。
どうしてだ?
「この空間の座標は非常に不安定」
理由は知ったこっちゃないが、どこでもドアが使えなくなるのは予想外だ。
「タケコプターでいくしかありませんね」
どうやら迷っている暇はないようだ。断続的な地震の中でグラウンドが陥没していく。
頭にタケコプターを乗っけた俺はハルヒを抱えて飛び立った。
建物が次々と飲み込まれていく中で、俺の自宅は奇跡的に無事だった。
屋根が一部半壊しているのはハルヒの破壊活動のせいだろう。
窓を叩き割ってから侵入を果たした俺たちは、ひきっ放しにされていたお座敷釣り堀から元の世界へと戻った。
「長門さん、次元の歪みはありますか?」
長門はこくんとうなづいて、俺の机の引き出しを指示した。
あの不思議空間か。
俺は開け放った引き出しにドラえもんを押し込むと、
「後は分かるか?」
「大丈夫。動いてるよ」
タイムマシーンがゆっくりと進みだした。
「いつか、また会おう」
「断る。二度と会わん」
ドラえもんは妙な笑い声をあげて真っ暗な空間へと吸い込まれていった。
引き出しを一度閉めてからまた開くと、そこにはいつしか使われなくなった文房具たちがひしめくただの引き出しになっていた。
それを見て俺は机に背を預けるように座り込んだ。




74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 02:13:23.98 ID:4LFBGEewO
流石に今日はいろいろありすぎた。
ドラえもんが現れるわ、ハルヒと朝比奈さんは巨大化するわ、過去の長門には蹴られるわ、朝倉には殺されかけるわ…………あっ。
俺は気付くとポケットにあったものを取り出していた。
それは白い布性の袋。そう、スペアポケットだ。
俺はそれを投げ捨ててから、ハルヒを見やった。
俺のベッドで完全に寝ているにも関わらず、その閉じられた目からは止めどなく涙が流れている。


SOS団の目的は、未来人や宇宙人、超能力者を探し出して一緒に遊ぶことだ。
ただし、どうやらそこには一つ付け足さなければいけない単語があるようだ。


“SOS団のみんなで”と。



75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 02:14:58.58 ID:4LFBGEewO
「キョン君電話ー」
子機と夜行性にも関わらず朝から起こされ不機嫌そうなシャミセンを抱えた妹が扉を開いた。
窓の外でちゅんちゅんと鳥が命がけの縄張り争いを敢行している。時刻は六時半。
あれから朝比奈さんに理由を説明してから、眠るハルヒをスペアポケットに唯一入っていたどこでもドアで家まで送り届け、解散したのが五時を回っていた。
そこから血まみれの服を処分し、一息ついて朝風呂に入ったところだ。
危うく風呂場で眠りかけていたのだから感謝すべきか、こんな時間に電話してきたことを非難すべきか悩むところだが、昨日から一睡もしていない頭では判断つきかねるので俺は電話に出た。
『…………』
「長門か?」
『そう』
当ててしまった。成長というべきなんだろうか。
しかし、長門とは一番最後に別れた。どこでもドアを調べたいとか言って持って帰っていったはずだがなんかあったのだろうか。
『そう。できればすぐに私の家に来て』
長門からの電話も初めてだし、呼び出されたのも初めてだ。
あの長門が呼び出すってことは余程不味いことが起きたに違いない。
俺は分かった、とだけ言ってから電話を切った。
身体を拭いてから、服を身に着けて家から出ようとした刹那、今度は携帯が鳴った。
『もしもし。キョン君、あたしです』
「朝比奈さんですか」
この人には未来が助かったには助かったが嘘をついてしまった。その気まずさから次の言葉が中々出ない。
『昨日のことならちょっとびっくりしましたけど、気にしてませんよ』




76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 02:16:30.83 ID:4LFBGEewO
「はぁ……それじゃなにかあったんですか?」
朝比奈さんは一呼吸置いてから、
「ええっと、指令が二枚きました」
助けて貰ったそうそう指令とは恐れいる図太さだ。
「……それで、一枚目を空けたらキョン君と人気のない場所で二枚目を開けよと、書いてあったんです。キョン君、今からお暇ですか?」
長門のところに呼び出されているんですが。
「えっ?長門さんがですか?……じゃあ、あたし長門さんの家の下で待ってますから終わったら来て下さい」
電話が切られてから、俺は自転車を漕ぎだした。
その道すがら指令をあれこれ考えたのだが、結論の出ないまま長門のマンションについた。
インターフォンを押すと、
『入って』
とだけ呟かれた。
言われるがままに長門の部屋に入る。
今度は、過去の長門も大量のネズミもいませんようにと願ったのは通じたようで、ぽつんとたたずむ玄関にたたずむ長門が出迎えてくれた。
「何があったんだ?」
「これ」
長門はそう言うと、俺の手に金属の玉を二つ繋げたようなものを渡した。
これは、どこでもドアのノブじゃないか。
「そう」
「どういうことだ?」
「分解中に内包されていた次元短縮装置が崩壊した」
壊れたってことか。
そう呟いた俺は登校が楽になるとか、偶然を装って朝比奈さんの禁則事項的光景を見るとかそんなことを嘆く言葉よりも早く、
「大丈夫なのか?」
と尋ねていた。
長門はこくんとうなづいてから、
「ごめんなさい」
と言ったような気がする。




78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 02:27:18.62 ID:KJhSWCf5O
それ以上何も話すことがなくなり、どこでもドアと引き換えに宇宙人の謝罪とそのノブを得た俺は長門宅を後にした。その足で近くにある公園によると、すでに到着していた朝比奈さんが手を振っているのが見えた。
隣りのベンチに腰掛けてから、朝比奈さんはおもむろに茶封筒を取り出して神妙な面持ちで封を切った。
ふぁさりとルーズリーフに幾何学的な模様が一行書いてあるのみの指令書を見た朝比奈さんの顔が真っ赤に染まった。翻訳コンニャクの効果がいまだ残っていた俺にもその内容を伺い知ることができた。
「キョ、キョン君!」
そう叫んだ朝比奈さんの声は裏返っていた。
「はあ。指令書にはなんて?」
分かってはいるが目の錯覚という可能性も捨て切れずに張本人に尋ねてみた。
「め、目をつむって下さい」
ぶっ倒れそうな朝比奈さんの言動から察するに俺の予想は的中したようだ。
俺は期待感から胸だけでなく鼻の穴まで広げないように細心の注意を払ってから目をつむった。
ゆっくりと朝比奈さんの顔が近寄ってきて、なんとも言いがたい香りが立ち込めた。例えるなら、日光を沢山吸い込んだふかふかのクッションのような………
ちゅっと小鳥が雛に餌をやるように、わずかに唇と唇が触れた。
「し、指令は終ったからあ、あたしはこれで……」
“あなたの横にいる男にキスせよ”という指令を完遂した朝比奈さんはカクカクとロボットのような歩き方をして去っていった。
刺されもしたがこれはこれで役得かもしれん。




79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 02:29:37.08 ID:KJhSWCf5O
俺は恐らく薄気味悪い笑顔を浮かべながらむにむにと自分の唇を撫でまわしていると、またもや俺の携帯電話が鳴りやがった。
名前だけ見て古泉だったら切ると心に決めて、表示された名前を見た。
涼宮ハルヒ。
出た場合と出ない場合を想定してから、俺は電話に出た。
『キョン! 大丈夫?』
「なにがだ?」
『あんた刺され……えっ? えっ?』
ガサゴソと衣擦れする音が響いてから、
『な、なんでもないわ』
起きてから俺の姿が見つからず電話してから、夢だったと気付いたってところか。
「なんだ夢でも見たのか?」
『違うわよ! えっと、そう。今日、十時からミーティングするわ! 遅れたら罰金だからね』
切電音が虚しく響く。
俺は藪をつついて水爆が出てきたような気分を味わってから時計を見やった。
時刻は八時に迫ろうかというところだ。
自宅に帰り着いた俺は何をすべきなんだろうか。
今から行くのはバカというものだし、寝ると確実に日中は起きる自身がない。
そう思いながらベッドに座り込むと、ポケットの中身に気付いた。
そう言えばドアがなんか緩い。これ、合うのかな。




80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/09(土) 02:30:58.81 ID:KJhSWCf5O
工具箱を持ってきてネジを緩ませてから、それをノブのあった場所にあててみた。
ぴったりと合致した。
二三のネジで固定してから具合を確かめると緩みもなくハマる。
それをつけるのに俺が不器用なせいもあって出発するのに丁度よい時刻になっていた。
俺はどこでもドアと化した扉を開くと、頼んでもないのに不思議が舞い込んでくる世界へと飛び出した。

俺の部屋だけは普通の空間であってくれ、と願いながら。


おわり



関連記事
23:21  |  SS・読み物  |  CM(1)  |  EDIT  |  Top↑  このエントリーをはてなブックマークに追加   

Comment

ドラえもんが空気w
名無しのエリンギ |  2008年08月14日(木) 11:21 | URL 【コメント編集】

コメントを投稿する


 管理者だけに表示  (非公開コメント投稿可能)

▲PageTop

 | HOME | 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。