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エリンギ速報ではきのこネタ、きのこたけのこ戦争についてのスレを積極的に載せてきます!

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2008.10.18 (Sat)

最終兵器つかさ 2

最終兵器つかさの続きです。



216 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 20:47:13.14 ID:/kH0q+sc0
再開します


217 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 20:55:48.05 ID:/kH0q+sc0
「…シャッター閉じてるな」
「…閉じてますね」
「どうすんだよ。また銃で開けるか?」
「ダメですよぉ、それに銃じゃ敵に見つかるかもしれないじゃないですか」
「じゃー服の換えはなしだな。破けた服でいるか?」
「むぅぅ…私が開けますっ!」
「おいおい…開けるってどうやっ…」

パキッ―ッ

つかさが腕を掲げると、シャッターに大きな丸い穴が出来た。


「……」
「ほら、開きましたよ」
「…お前のほうがよっぽど物騒だっての」
「服のためですもん…」
「はいはい。とっとと着替えて来い」
「は~い」


「…ったく」



219 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 21:06:39.76 ID:/kH0q+sc0
「じゃあ次はこれな、それ終わったらこれ。あぁ、先にこれも」
「キヨ先輩…私、着せ替え人形じゃないんですが…」
「別にいいじゃん。女の買い物って長いよな、しかし。ゆいもそうだったわ」
「ゆいさん?」
「あぁ、俺の女房なんだけど。まぁいい。早く着替えて来い」
「…はぁい」

シャッ

(ゆい、ごめんな。今女子高生とデート中。あんま性格は似てねーけど、
どっか寂しがりやで手がかかるところがお前に似てたんでな。言い訳じゃないからな)

…ッ、…キッ…

「なんだ…?おいつかさ、どうした?」

バギッ…ビヂッ…グジョッ…ブシュゥッ…

「…かふっ、痛い…痛いよ…あっ…あっ…だめ…嫌っ…はぁっ…」
「つかさ…!!」


キヨは、赤く染まっていくカーテンを乱暴に開けた。



220 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 21:16:20.05 ID:/kH0q+sc0
「キヨ…さん…とまらない…よぉ」

つかさの背中から、突き破るようにして羽があらわになっていく。
もはやそれは、『侵食』といっても過言ではない惨状だった。
突き破られた皮膚からは夥しい血が流れ、それに比例するように、つかさの目からポロポロと涙が溢れ出た。

「つかさ…!つかさしっかりしろ!」
「キヨさん…痛い…痛…い…よぉ…たす…け…」

バグンッ―!

一際大きな音がした。巨大な砲弾だ。
ゆうに成人男性のそれと同じほどの大きさ。
銃口は、キヨに向いていた。

「キヨ…さ……逃げ……ガフッ…」
「つかさ…つかさぁぁぁっっ!!!!!」



キヨはきつく抱きしめたつかさの唇を、唇でふさいだ。



221 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 21:26:06.06 ID:/kH0q+sc0
「…すまんな、いきなりあんなことして」
「い、いいんです…。おかげで、落ち着いたから…」
「……(そういう意味で言ったわけじゃないんだが)」
「はぁ…もう歩くの疲れましたよ…キヨさん」
「飛んでばっかで体力落ちてるんじゃないのか?」
「ひ、ひどいですよ~もう」

「もう、帰るんだ」

「どこに…帰るんですか」
「また付き合うからさ、な?」
「『また』なんてないですよ…そんな、約束もう、嫌です…」
「つかさ…」
「もう大体わかるんです…あと三日くらい、かな。上の人が私をお荷物扱いしてる間に、
もう手遅れになったんです。この間に向こうと和平みたいな、そんな約束したみたいですけど、
向こうの人はそんな気全然ないんです。強くなりすぎた私を
殺す方法は、簡単ですよ…一番バカなことをすればいいんです。
補給ルート、退却ルート…全部消しました。もう、この星の人口は20億もありません。
大丈夫ですよ…あと数日で、この平和も終わります。ありもしない
和平公約を探してた上の人も、もう考えていた戦争がないって気づきます。
……キヨ二尉、命令です」
「…はっ!」

キヨは、習慣づいてしまった敬礼を咄嗟に取った。



222 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 21:33:15.88 ID:/kH0q+sc0
「私、まだ帰りたく、ないです…」

小さな司令官は、寂しげにそう告げた―



束の間の時間が過ぎた―

つかさは、キヨと同棲のような生活をし、現実から少しだけ逃げた。
かがみは、今出切ることだけを模索し、あてもなく生きていた。
今の世界で、進学が何か意味を成すのかは不明瞭だったが、それでもかがみは、勉強を続けた。
やまとは、情報処理班として、日々戦場を駆け回っていた。
そして―こなたは―





223 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 21:42:44.65 ID:/kH0q+sc0
「…泉さん、ここよ」

同じ班員が、こなたに教えた。

「ここが、天使が駐留してるアパート、ですか」
「そうよ。話によれば、軍を一時抜けた二尉と同棲してるって話よ」
「私達は、あそこを抑えればいいんですよね?」
「そう。だけど相手は天使よ。油断しないで。あまり時間は残されてないけど、
慎重にね。これは極秘任務だから」
「…了解です」

これは、第七部隊にだけ与えられた特殊な任務だった。
それは『天使』の居場所を割り出し、軍部に報告する、というものだった。
ただし、あくまで「極秘」というだけであって、それ以外の意図は何も伝えられていなかった。
それにこなたは何も疑問は感じなかったし、むしろやりがいある仕事を与えられ、意欲が沸いてくるものだった。
しかし、この任務は、少し時間がかかってしまうのだった。


作戦開始と同時に、地震が発生したからだった…。



224 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/17(金) 21:45:33.48 ID:/a09iJC+O
ブワッ…(´;ω;`)


225 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 21:53:08.52 ID:/kH0q+sc0
「はぁ…今時コンビニなんて開いてるのかしら」

私は、お母さんに頼まれて買出しに向かっていた。
というよりも、さっきの地震で結構建物が損壊したらしく、被害もそれなりに出たって話を聞いた。
幸い私達は出かけてて、被害自体は軽いもので済んだ。
お母さんは、「こんなときにだからこそ」って言って私を諭した。
でもねぇ、今じゃ支給品で生活するのが精一杯で、お金なんてもの何の役にも立たない。
そもそもコンビニが正常に働いてるかどうかも疑問だった。

「あ、柊ちゃん」
「峰岸…」

峰岸が、立っていた。いつものように…落ち着いた物腰…で…

「あの、あのね柊ちゃん、さっきね、みさちゃんが…柊ちゃんを…呼んでてね…」
「え~?あいつが?今私買い物に行かないといけないんだけど」
「えと…すぐ終わる用、だから…ね?」
「とか言って、いっつも長話するから信用ならん…」

いつもの調子で、話しかけてしまった。峰岸の異様な態度に気づかないで。

「…お願いっ!すぐに来てっ…!!みさちゃんが…っっ!!!」


峰岸の悲鳴のような声で、やっと私は理解した―



227 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 22:03:02.53 ID:/kH0q+sc0
日下部は、ベッドにいた。いつものように、飛んだり跳ねたりできるような状態じゃないってことは、すぐにわかった。
身体中を包帯で巻かれ、小うるさい声は

「…よぉ…いらぎ…」

火が消えたような、か細い声に変わっていた。

「ありがと…な。…てくれ…て」
「いいわよ、別に」
「頼みたい…こと…あん…だ」
「な、なによ…」
「そのまえ…に、手、握って…くれねえ…か」

そう言って手を差し出す。だらん、と力のない手。
それを両手で包み込む。とても、冷たかった。

「あたしの…こと…忘れないで…ほし…いから…」
「……うん」
「握ってて…くん…ねぇ…か…いらぎ…」
「わ、わかったわよ!…って!忘れるわけないでしょ!あんたみたいな…
あんたみたいに…バカでアホで単細胞でがさつで……」
「…へへ、…でぇな…」
「……とても優しい、私の…親友なんだから…」
「………りがと…な、…らぎ…あた…し、…まえと…んゆうで…れし…か…た…ぜ」



228 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 22:12:33.11 ID:/kH0q+sc0
「ふ、ふざけないでよ!まだ死ぬわけないでしょ!!」
「…めんな…もう…からだ…ごかね…ぇんだ…」
「やめてよ!もっといつものように、私に構ってよ!私をバカにしてよ!バカなこと言って私を呆れさせてよ!死なないで!日下部ぇぇぇ!!!」
「……い、ら、ぎ…さ…さいごの……のみ…き…てくれ…か」
「な、最期なんて言わないで!お願い!お願いだからぁっ!!」
「あたし…の…こと……『みさお』…ってよ、よ…でくれ…ねか…」
「あ、あああああ…、み…みさ……」
「ひいらぎ………ずっと……っと…もだち…だ…ぜ…」

「みさおおおおぉぉぉぉッ!!!!!!!」


「だい……すき……だ………か…が……―…‥・」


みさおは、二度と目を開けることはなかった。



229 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 22:20:16.41 ID:/kH0q+sc0
「もう、いいだろ」

キヨが、つかさに言った。
同棲して二日目だった。いきなりそんなこと言われて、つかさは

「…や、やっぱりダメですか」
「俺も一応妻帯持ちだし、妻に悪いことしてるような気がしてならないしな」
「…うぅ、私…どこ行けばいいんだろ…」
「一度軍に戻れ。メンテナンスもしないとなんだろ」
「……はい」
「ほら、俺が変な気起こす前に行った行った」
「わ、わかりました…よ」
「飛んではいくなよ……」
「はいはい…わかりました」


つかさは、キヨのアパートを出て行った。
それ自体はなんの問題もなかった。問題なのは、
そのときの情報を、第七班が逃していたことだった…



230 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 22:36:12.02 ID:/kH0q+sc0
「司令官殿!」
「す、すいません。戻りました…」
「ど、どちらへ!?メンテナンスもしないで!?」
「その…服を買いに…」
「(盗んだのね…)とと、兎に角ですね、すぐに検査を…」
「検査…そう、ですね…けん…さ…しな……きゃ…」


ドッ―


「…!?司令!司令ぃぃ!!」

落下するように、つかさは倒れこんだ。
すぐに、つかさのメンテナンスが開始された。

「くっ…『天使』はいつ再起動するのだ!」
「局長…ちょっとよろしいですか」
「な、なんだ!」
「いいですか、私達は彼女を徹底的に検査しました。
そして、生態的にも科学的にも、一つの事項が確立されております」
「な、なんだそれは!?」

「彼女は、既に『死亡』しています…」



231 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/17(金) 22:38:30.87 ID:U/D8CNtU0
なん・・・だと・・・?


232 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 22:46:42.74 ID:/kH0q+sc0
「いいわね、この時間なら、『天使』は活動を停止してるわ。
この新型の小型爆弾で先制したら、一気に突撃するわよ」
「はい」
「泉さん、ごめんなさいね。情報班員なのにこんなところに加わってもらって」
「大丈夫です。世界を守るためなら…」
「殺してはだめよ。貴重なサンプルとして、一時仮死状態にしておくの。5秒後に突撃するわよ。
ただし、同居してる男の生死は問わないわ。国家重要機密兵器を隠蔽してたのだからね」
「了解っっ!!」

「いくわよ。5…4…3…2…1……ふっ!」

隊長が、キヨのいるアパートめがけ、爆弾を投げ込んだ。
すぐに爆発が引き起こった。

「突撃ぃぃぃーーー!!」
「うおおおおぉぉぉぉ!!!」

班員含めた、全ての小隊員が、部屋へ突撃した。
爆弾というのは、一時的に四肢の神経を麻痺させるもので、
生物全てに有効であると、一応の保障はついていた。



233 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 22:54:39.41 ID:/kH0q+sc0
ズガガガガガッッ―!!!!

銃弾

ズガガガガガガガガガガガガガガガ

銃弾

ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ

銃弾

ありとあらゆる部分が、弾幕に包まれていった。
こなたも、支給されたマシンガンを撃ち続ける。


……

「撃ち方やめ!どうやら『天使』及び関係者は移動した模様!
直ちに再捜索を開始!」
「了解っ!!!」

班長の言葉で、各員は散っていった。

「……ガフッ…、グフッ……」



235 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 23:03:45.59 ID:/kH0q+sc0
「へへっ…情けねぇ…な。便所にこもってたら…いきなり…銃の雨あられとは…な、グハッ…」

びちゃびちゃっ―

「は…はは…ゆい……すまねぇ…帰れそうに…ない…わ」

キヨはプルプルとアゴを震わせながら、愛する妻の名を呼んだ。



・・・
・・


「……なんで私、生きてるんだろ…わかんない」

意識を取り戻したつかさは、止まった自分の心臓に手を当てながら、基地を出た。
心臓は動いてないが、嫌な胸騒ぎがしたのだ。まるで、人間が感じるような、理屈では言い表せない不安を。

「キヨ…さん、まだ、いるのかな…」



236 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 23:04:58.45 ID:/kH0q+sc0
「…キヨさ~ん」

こんこん。

こんこん。

「いない…キヨさーん、開けますよ?」

ガチャッ

「あれ、鍵開いて……っっ!!」

すぐにつかさは、口を抑えた。
血の匂い。それも、大量の。
闇夜に紛れてはっきりとは見えなかったが、ある肉を中心に、畳を血が根こそぎ流れている。

「キヨさんっっ!!!!」
「ゆ…がふっ!ゴボッ!ゴボッ!!!」
「……キヨ…さん」
「ゆい…くる…しい…もう、いやだ…殺して…くれ……
殺してくれ…………ゆいいぃぃぃっっ……痛い…痛いっ、痛いっ……!!」
「……できない、無理だよぉ…っ!私には…っっ!!」



237 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 23:14:46.37 ID:/kH0q+sc0
「ごめん…ゆい…ごめ…ん……」
「……きよたかさん、泣かないで。ほら…」

『ゆい』になった『つかさ』はそう優しく言うと、きよたかの手を自らの胸に押し当てた。

「きよたかさん、甘えん坊なんだから…いつもこうして、まったりしてるよね」
「ゆい…なんか…ぼりゅーむが…」
「ば、バカ!きよたかさん、ずっと帰ってこないで!いつも…いつもこんな若い奥さんほっといてさぁ!
さみしかったんだよぉ!出番だってないし!」
「げほっ…げほっ…ゆい……好きだ……愛…して…る…………‥・―」
「……お疲れ様、きよたかさん。ゆっくり眠って……
う…う…うわああああああっっっ!!!キヨさああああん!!!!
ああああぁぁ……ぁあああああああっっ!!!!!」


成実きよたかは、『ゆい』の腕の中で、静かに息絶えていた。



238 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 23:25:36.49 ID:/kH0q+sc0
「くそっ、一体ヤツらはいつまで戦争を続けるつもりだ!」
「兎に角だ、シロート部隊を盾に、『天使』を起動させる」
「了解だ。それで、『天使』の所在は…」
「今第七部隊が捜索に…」

ズズンッ…―ッ!!

「なんだ!敵襲か!?」
「て…『天使』…か
「こんばんは、歩兵の人たちは、もう引き上げたんですか?」
「そうだ。ここにいるのは我々司令部のみだ」
「うん、了解です。でもね…あなたたちが余計なことするから…
死ななくてもいい人たちが死ぬんですよ…。あなたたちの理屈通りに、
戦争が動くわけないのに。兎に角…あとは私がします。その、第七部隊でしたっけ」
「そ、それが…どうした?」

「それを発見後、即時殲滅します」



240 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 23:35:49.16 ID:/kH0q+sc0
「……キヨさん、せめて、あなたを殺した敵だけは、取らせてください…いいですよね」

つかさは、衛星と通信を開始した。

…ピ
……ピ

「………第七情報管理部、拠点…位置……確認、完了」


片目に表示させたモニターを頼りに、つかさは空を駆けた。

「距離三千メートル。方角、北北西……そこだ」

つかさは、静かに砲撃を構えると、躊躇わずに放った。



243 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 23:42:46.61 ID:/kH0q+sc0
「泉さん、ちょっといい?」
「はい?」
「ちょっとさ、地下倉庫からメモに書いたの持ってきてくれない?」
「いいですよ。結構多いんですか?」
「まぁ口で言っても覚えきれないくらいかな。泉さん腕っぷしは強いから、任せたくなるのよ」
「…なんか誉められてる気がしないんですが」
「あはは、誉めてる誉めてるって!じゃ、お願いね」
「はいはいっと…
はぁ、ここ無意味に深いよねぇ。おかげで行き来がめんどくさ…」



ズンッ――――――ッッ!!!


「な、なに!?何が起きたの!!?」

突如鳴り響いた揺れに、こなたはすぐに降りた階段を駆け上った。



244 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/17(金) 23:44:13.01 ID:7zThWXY70
こなた\(^o^)/


245 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/17(金) 23:45:48.66 ID:/XJo/cP+0
こなた生き残るのか…


246 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 23:55:30.53 ID:/kH0q+sc0
「なに、これ…」

荒野だった。
さきほど話していた班長はおろか、まるで何も無かったような、荒地と化していた。

「何が…起きたの」

ざくっ、ざくっ と、こなたはクレーターを歩き回る。

「砂漠…いや、みんなは!?みんなは!!?」

ようやく、こなたは現状を把握した。
何かが、ここを破壊したのだ。それも、秒未満の間に。

「こんなことできるなんて…『天使』以外、ありえな―」


ストッ―

こなたの言葉が終わる前に、『天使』が舞い降りた。



247 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 00:02:55.39 ID:Tnp2y3o50
「……つか、さ?」
「こなちゃん…こんなところで…何してるの?」
「それは…私のセリフだよ!つかさ…つかさがこれ、したの?」
「そうだよ。だって、こなちゃん達は、私の大切な人を、奪ったから…」
「な…つかさだって!『天使』として沢山人を殺したじゃん!」
「戦争だよ?当たり前じゃない…」
「それじゃあ、こっちだって戦争だよ!自分だけ正当化するなんてずるい!」
「じゃあ『これ』も戦争だよね?」
「……ッ!!」
「正当化させたいのは、こなちゃんのほうじゃないの?」
「つかさは!私怨で私達を殺したんじゃないか!」
「それが、悪いの?」
「え…」
「私…ずっと独りぼっちだった。でも、私を安心させてくれた唯一の男の人がいたの。
好きだったの、その人のこと…殺したじゃない。私の…好きな人を…」
「それが、私怨っていうんだよ!そんなこともわからないの!?つか…」

バスッ―

つかさの銃弾が、こなたの胸を貫いた。



249 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 00:09:25.73 ID:Tnp2y3o50
「かはっ…」
「やっぱり、こなちゃんもわかってくれない…」
「つか…さっ…」
「こなちゃんならわかってくれると思ったけど、やっぱり、こなちゃんも、私の気持ちをわかってくれない」
「つかさ…まって……っ」
「友達だから、それで許してあげるよ。手当てすれば、死なないだろうから」
「つかさ…は、それでいい…の?」
「…なにが?」
「殺して…破壊して…それはつかさの意志なの!?つかさはそんなこと望んでないはずだよ!私にはわかるよ!」
「…わかったようなこと、言わないでよ」
「私は知ってる!つかさは虫だって殺せない臆病な子で!誰よりもヘタレで、料理くらいしか取り得がなくて!」
「やめて…やめてよ!」
「でもつかさは!誰よりも優しい心を持ってるって!私は!知って…」

パンッ―

「…お姉ちゃん、頑張ってるかなぁ。ごほっ、ごほっ。こなたお姉ちゃんのために、
カレー、作ったよ。おいしくできたかわからないけど、早く帰ってきてね…」

「もういいよ…こなちゃん…。私は、もう『私』じゃないから…
もう、こんな私、見ないで…」

額を撃ち抜かれたこなたは、音もなく崩れ落ちた。



251 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 00:19:41.11 ID:Tnp2y3o50
『お姉ちゃんに会わなくなってどれくらい経ったかな?
二週間?一ヶ月?戦ってると忘れちゃうんです。
最近、あまりメールをしなくなって、お姉ちゃんはどうしてますか?
今日、私はお散歩で、また国を一つ消しました。
特に意味もなく大きな戦いがあって、いっぱい人が死にました。
そのちょっと前に、優しくしてくれた、大切な人が死にました。
たくさん人を殺して、独りぼっちだった私を、一人の女の子としてみてくれたんです。
いっぱい名前を呼んで、そして…みんな、死にました。
もうちょっと、もうちょっとだけ国を消したら、帰ってきます。
わたしたちの町は、どうですか?

大好きなお姉ちゃんへ』



254 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 00:37:20.71 ID:Tnp2y3o50
学園が自衛隊に撤収される。
その報せを受けたのは、今から一週間前だった。
それで、最後の学園生活を締めくくるため、学園で後夜祭を開催するという案がのぼった。
反対派がいるわけもなく、私達はその作業をすることになった。

「…ふぅ、これでいいかな。峰岸ー、そっちはどう?」
「問題ないわ、柊ちゃん」
「はぁ…戦争がなければ、ちゃんと卒業できたのになぁ」
「…ひ、柊先輩ぃぃ~」
「ゆたかちゃん、どうしたのよ?」
「あの、あのあの、自衛隊の方がいらっしゃって…」
「自衛隊?なんでこんなときに…?」



256 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 00:48:07.36 ID:Tnp2y3o50
「今すぐこんな下らん作業を止めろ!いいか?
我々は貴様らのために日々戦っているのだ。そして毎日同胞が平和のために
死んでいくのだ。なのに、貴様らはなんだ?生死を賭けて国に命を
捧げてる日本軍に申し訳ないと思わんのか?」
「すいません、後輩からお話はお聞きしました」
「責任者か?なら今すぐ」
「文化祭は、やりますから」
「なっ…貴様!忠告を聞いていなかったのか?」

私だって…私の親友だって、死んでいったんだ。
死なずに済んだはずなのに、20もいかずに死んでいったんだ。
自衛隊の人の気持ちもわかる。だけど、私達だっていつ死ぬかわからない。

「なんだ小娘?」

日下部に…苦しんだみさおに、何かしたの?

「私達…まだこどもだけど、意地があるんです…お願いします!文化祭、やらせてください!」

恥も外聞も捨てて、私は額を地面に擦り付けた。



258 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 00:52:03.62 ID:Tnp2y3o50
今は、今だけはいい
お願いだから、この文化祭まで奪わないで
お願いだから…
そう願って、私は何度も懇願した
みっともないくらいに
ただのお遊びに過ぎないのに
でも、絶望の中で、少しでもこれがみんなの『希望』になるんだったら…
安っぽいプライドなんてかなぐり捨ててやる

だから―



「はぁ…ださいわね、私…」

後夜祭のキャンプファイアーを見下ろして、私は自嘲気味にぼやいた。



261 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 01:00:39.87 ID:Tnp2y3o50
「ったく~、日下部もつかさも~、おまけにこなたもなんでいないのよ~。
あたしを独りにしおってからに~。ううう…あたしは不幸だ…
未だに彼氏出来ないし、ちくしょぉぉぉ…」

酒がいいかんじに回ってきて、私は酔いに任せて下らないことを言い散らかした。

「なによなによフォークダンスなんてぇぇ、へったくそで見てらんないわよ!
何!?あのカチューシャつけた子、輪から外れてるじゃないの!」

……カチューシャ?

「いや、まさか、ね…そんな、ありえないわ…で、でも…」

酔いが、一気に冷めた
気が付いたら、階段を駆け下りていた



263 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 01:10:39.91 ID:Tnp2y3o50
つかさは不器用だった
何をやらせても上達しないで、中学のときだったかな
一緒にキャンプファイアーのフォークダンスを練習したんだけど、
何度も何度も足踏まれて私、思わずキレちゃった
あの独特なフォームは、一度見たら中々忘れられない
あのヘタクソな踊りは、それによく似ていた

「はっ、はっ!」

近づく
あと4メートル
あと3メートル

「はぁっ…!はぁっ、はぁっ…!!」

あと2メートル
あと1メートル

あと……

「…お姉ちゃん!」

つかさの手が、私の手に重なった。



265 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 01:20:34.20 ID:Tnp2y3o50
「えへへぇ、逃げちゃった」
「あ、あんたねぇ、いいのそんなんで」
「いいの、だいじょぉぶだよ」
「……おかえり、つかさ」
「ただいま。お姉ちゃん…私ね、お姉ちゃんに言わなきゃいけないことがあるの…」
「…え?」
「その…そのね」

せーいんっさんぴー、そりゃまるってちゅーちょだ、やん♪

「あわ、あわわ」
「ほらつかさ、踊る踊る」

がんばって♪(イエーイ)はりきって(イエーイ)んまだーりんだーりんふりーず♪


「……楽しいわね」
「うん…うん…うん・・、ぐすっ」
「バカ、泣かないの」



267 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 01:30:52.31 ID:Tnp2y3o50
「で、話って?」
「うん…ちょっと前の『お散歩』で、ある部隊を殲滅しなきゃいけないことがあったの」
「そう」
「それでね……その…そのね」
「ん?」
「こなちゃんが…いたんだって…」

「……ッッ!!!」

その時、時間が止まったように見えた。
まさか…つかさが…こなたを……!?

「あんた、まさか…」
「…こなちゃんがいたなんて…知らなかっ…た…だけど…だけど…わた…わたひ…っく、うわあああああっっ!!」
「つかさ…」


つかさは、どんな気持ちでこなたを撃ったのか。
親友だったこなたを、殺すとき、つかさは何を想ったんだろうか。
空っぽになった。私も、あいつの親友だったから…

「ごなぢゃぁん!ごめんねごなぢゃぁんっ!うわああああっっっ!!!!!」
「……」

泣くしか、なかった。下手な言葉なんか言えない。泣いた。私は、声を殺して、涙を流した。
あいつのことを、絶対忘れないように…涙で…こなたの思い出を胸に刻み込んだ。



269 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 01:38:22.46 ID:Tnp2y3o50
……明けて翌朝。
まばゆい光が、寝ぼけ眼を強かに焼く。
これはきっと、希望の光。
これはきっと、未来への後光。
そう信じたい。そう思いたい。

きっと、戦争は激しくなるかもしれない。
辛いことが沢山あるかもしれない。
だけど、もう私は、独りにはならない。
だって、なぜって、



「おはよ、お姉ちゃん」
「おはよう、つかさ」
「色々、あったね」
「色々、あったわね」
「ぶっちゃけたよね、いっぱい」
「うんそうね。   …いこ、つかさ」

私達は、その未来(さき)へ走った。



271 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 01:42:46.74 ID:Tnp2y3o50
「はぁ…はぁ…お姉ちゃん…待ってぇ」
「またぁ?これで三回目よ?」
「疲れ…ちゃった…。はぁ…はぁ…」
「全くもう…。あ、車!つかさ!隠れなきゃ!」
「え?ヒッチハイクしよーよお姉ちゃん」
「な、なんで!?あんた、ばれないの?」
「だーいじょーぶだよお姉ちゃん。だって、戦場で私見た人で、生きてる人いないから」
「……」

何気ないこの言葉で、さっきまで息切れしてた少女が、普通に見えなくなってしまう。
でも、いいか。好都合と考えよう。…つかさは兵器だけど、私の妹なんだから。

「お姉ちゃん、街の近くまで乗せてってくれるって!」
「おお~、やったじゃん。お言葉に甘えましょっか」
「うん!」

その時、私達は迂闊だったのかもしれない。
その車に、自衛隊の人間が乗り込んでるなど、どうやって予想できただろうか。



274 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 01:49:10.02 ID:Tnp2y3o50
「おじさん、海、海が見える港町目指してくださいっ」
「ん~?姉妹で旅行かい?いいねぇ、かわいこちゃんだからオジさんサービスしちゃうぞ」
「ちょっとつかさ、なんで海なの?」
「え?そ、それは…前に二人で、海見に行ったから…ね?」
「あ…そ、そっか」
「よーし、飛ばすぜ。シートベルト忘れんなよー!」

車は、勢いよく発車した。

「うわー、はやいね~」

これからどうなるんだろう。
つかさは、どうなるんだろう。
今もその不安は完全に捨てられないけど、兎に角、すぐ先のことを考えよう。
悩むのはその後でいい。

つかさの笑顔は、私にそうさせる力があった。



276 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 01:58:07.40 ID:Tnp2y3o50
「ほいよ、到着!」
「おぉ~~~」

二人して、唸ってしまった。そこはまるで、半世紀くらいタイムスリップしたような、ホンモノの田舎町だった。
だけど、街から望む大きな海は、日差しを浴びてキラキラとまばゆい光を放っていた。

「…着いたわね」
「うん、おじさん、ありがとうございました」
「はいよ!道中気をつけてな!」

「さて、と。どうしよっか…」

グギュルルルル…

「……」
「……お、お姉ちゃん?」
「ご飯よご飯!まずは腹ごしらえよ!」
「ま、待ってよお姉ちゃ~ん」

ある意味、前途多難だった。

■スーパー眠いです…



277 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/18(土) 01:59:59.27 ID:KQ/wd5mE0
無理せず一回おとしてもいいんじゃなかろうか
俺もいつまで居れるかわかんないし


280 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 02:07:09.60 ID:Tnp2y3o50
「お姉ちゃんお姉ちゃん、喫茶店喫茶店!」
「ん?」

つかさが指差した先には、「喫茶:Tweeny」と書かれた看板があった。

「見つけたはいいけど、お金ないわよ、私達」
「大丈夫、私に任せて♪」
「……え、えぇ」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ズバッ―ッッ!!

喫茶店が、突如炎に包まれた。慎ましい佇まいは、鮮やかな赤で染め上げられ、
しばらくすると、つかさが外に出てきた。

「言う事聞かないから、殺しちゃった。これで、食べ放題だよ、お姉ちゃん」
「あ、あ…」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「……なんてね」



281 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/18(土) 02:11:14.13 ID:KQ/wd5mE0
驚かすなよw


282 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 02:16:42.21 ID:Tnp2y3o50
「もういいかな?失礼しまー」

「お帰りなさい、お嬢様」


…ブーッ
つかさ、なんでメイド服なんか着てるんだ…

「あんた、なんて格好してんのよ!?」
「え?ここのマスターね、バイト募集してるんだって。
それで、働いてもらう代わりにご飯ご馳走してくれるって」
「いや~、君が姉のかがみちゃんかい?いいねいいね~。若い子にしか出来ないピッタリの仕事だからね~」
「あ、あのねぇ!ここただの喫茶店でしょ!?なんでメイド服なんか」
「店の名前見てないのかい?『Tweeny』ってのはメイドさんのことさ」
「う、うそーん…」
「お姉ちゃん、やってみよ、ね?」
「わ、わかったわよ…ったく」

そして。

「うわー、お姉ちゃん似合うよ~」
「いいねいいねぇ!ツインテールがいい味出してる!」

……ほんと、前途多難だわ。


>>300までいったら寝ますね



284 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 02:23:56.60 ID:Tnp2y3o50
「じゃあ明日からよろしくな!つかさちゃんにかがみちゃん!」
「はーい!」「ういーす」


マスターは、両足が無かった。この街は、それほど人は多くない。
大体が年寄りだし、コンビニすらない。
でも、そこそこ活気があったし、街の真ん中には銭湯があった。

「ごめんねお姉ちゃん。無理矢理付き合わせちゃうようなことして…」
「え、べべ、別にいいわよ。お金のためなんだから」
「ほら、私達、バイトとかしたことなかったじゃない?こなちゃんみたいにうまくは
できないかもしれないけど、あぁいうお仕事してみたいなって、ちょっと思ってたんだ」
「…そっか」

つかさはつかさなりに、この現実で生きていく術を探していたんだ。
『ヒト』として。なのに私ってば、つかさの何気ない言葉で動揺しちゃって、ほんと情けない。
姉としてこんなんでいいのだろうか。いや、後ろ向きになるのはやめよう。
今はただ、生きるために、できることをやろう。
そう決意して、その日は床についた。つかさの寝息が、少し心地よかった。



286 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 02:30:43.26 ID:Tnp2y3o50
「おーい、三番さん、カルボナーラ!」
「はーい!」
「かがみちゃん!お客さん四番テーブルに案内して!」
「は、はぁい!ご主人様、どうぞこちらへ…ひゃっ!」

こ、この糞親父…どさくさに紛れてお尻触ったなこのやろぉぉぉ

(かがみちゃん!笑顔笑顔!)
「くっ……いけませんわ、ご主人様ったらぁ♪」

グギィッ

「い!いっ!!」
「お触り禁止ですから、ね?」
「は、はひぃぃ」

忙しかった。いくらお客さんをさばいても、次々にやってくる。
そうこうしてる内、いつの間にか閉店の時間を迎えた。

「はぁー、お疲れ様、二人とも!いや~こんな忙しいの初めてだよ!」
「そ、そうなんですか?」
「お役に立てて嬉しいです~」
「きっと二人の美しさに男共が群れてきたんだろう、そうだ!きっとそうだ!俺だって客として行きたい!」

…苦笑いすらできんぞ、その手のギャグは。



289 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 02:38:59.53 ID:Tnp2y3o50
それからは、毎日が充実だった。朝7時に起きて、喫茶店で下ごしらえの手伝い。
9時に開店。夕方の4時までうんと働いたら、その日の日給をもらってつかさと買い物。
少しお金が余ったら、街にある小さな映画館で古典のクラシックを観て、
夜の10時前には就寝。
変わり映えしない毎日だけど、幸せだった。
働いて、自分のお金で生活して、つかさと一緒に過ごして、とても、とても楽しい毎日だった。

そう…国の『偉い人』が、つかさを突き止めるまでは。


「『天使』は、この街にいるのか…、あ…ここでいいです」

バタン…

「…見つけましたぞ、『天使』…」


ドンッ―――――――!!!!!

瞬間、男の背景にあった山が、吹き飛んだ。やったのは、無論つかさだった。

クルナ ツケルナ オウナ サガスナ デナケレバ コロス

つかさの視が、男にそう訴えていた。男はそのまま、腰を抜かして怯えていた。



292 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 02:47:05.97 ID:Tnp2y3o50
それから―

「つかさー起きなさいー」
「…むにゃ」
「ほらつかさー、起きろっての」
「ごめんおねえちゃん、もちょっと…」
「ったくしょうがないわね、すぐに来てよね?」
「うん…むにゃむにゃ」

仕方ないな…マスターになんとか言っておくか。
元々体力がないんだから、ちょっと疲れてしまったんだろう。

…なんて、考えれるわけなかった。つかさは、もう薬を摂っていない。
あれがなんなのかは全然わかんないけど、つかさが生きていくのに必要なものってのはわかる。
それが、断たれたとなると…

「かがみちゃん?お客さんお客さん」
「あ、はい!…お帰りなさいませご主人様…」
「おろ、今日はショートの子いないの?」
「申し訳ございません…」
「ええ、いやいやいいよ。君だって可愛いし…」
「……」
「かがみちゃん、今日はもう、上がっていいよ」
「え…でも」
「つかさちゃんの、傍にいてあげな」
「…はい、ごめんなさい」



294 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/18(土) 02:52:44.97 ID:momX/9RFO
いまいち設定やら描写が捉らえづらいな…



295 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 02:55:21.51 ID:Tnp2y3o50
「つか…さ?」

うつ伏せのまま、つかさは朝と同じ格好で寝ていた。
いや、寝ているのか…これは。

「つかさ、いい加減起き…」
「…お、おへえひゃん…」

つかさ…だった。頬はげっそりとこけ、瞳は半分にも満たないくらい閉じかけていて、
口端からはだらしなくヨダレが流れ、そして、呂律が全く回ってなかった。

「おへえひゃん…ふぉめんね…おひごと…さおっちゃっれ…」
「つかさ…っ!?」

視線を感じた私は、思わず窓を向いた。

…あいつだ!『偉い人』…!なんで、どうして…!
…!?私を、呼んでる?なんなの…一体…
少し悩んで、私は、そいつの元へ歩いた。



297 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 03:02:30.55 ID:Tnp2y3o50
「あんた…今更どの面下げて来たのよ!?」
「落ち着いてください!薬を…薬を渡しにきたのです!」
「…くすり?」
「『天使』…いや、つかさ様は、このままでは生体組織が急激に老化し、最悪死亡に至ります。
この薬はそれを防止する作用があります。ですので」
「なんで、わざわざこんなことを…」
「……」
「あの子をまた、軍事で利用するため?」
「……」
「またあの子に全て背負わせる気なの!?」
「……」
「くっ…!!」

私は、そいつから薬を引ったくり、家に帰った。
すぐに薬を飲ませた。……たっぷり10分かけて、つかさをそれを飲み込んだ。

…つかさの具合は治ったが、それが私には腹立だしかった。



299 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 03:09:24.74 ID:Tnp2y3o50
無念だ。風邪を引いてしまった。
つかさは凄く心配したけど、風邪じゃ仕方ないよね。
そういうわけで、今日はつかさだけバイトに行ってもらった―

「お姉ちゃん、風邪引いちゃったみたいで…」
「そっかぁ。無理しないでくれって言っておいてくれよ」
「はい」
「さ、かがみちゃんの分まで今日も頑張ろう!」
「はい!」


……

正午近くだろうか。その男は、何の前触れもなく入店した。

「お帰りなさいませごしゅ―」
「……」

(局長…さん…)



300 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 03:15:07.79 ID:Tnp2y3o50
「つかさちゃーん、これ八番さんにお願い」
「は~い。お待たせしましたご主人様。

(ペペロンチーノでございます)
 来るなって、前に警告しましたよね?」

ビキィッ―――――!!

「ぐぅっ…!!」

つかさの言葉が、二重になって局長の鼓膜を抉る。

「(申し訳ございません。こぼしてしまいましたか?)
  音大きかったです?それとも聞きにくかったです?
  
 (こちら、本日のセットメニューのマロングラッセでございます)
  安心してください。あなたにしか解読できない暗号ですから
  
 (では、ご注文は以上でございますね?ごゆっくりお寛ぎ下さい)
  何しに来たんですか?返答次第では音もなく殺しますよ?」


■では寝ます。なるべく早めに再開できるようにします



301 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/18(土) 03:16:27.32 ID:TesoPZp+O
おやすみ


313 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 06:56:16.08 ID:Tnp2y3o50
■お早うございます。朝飯済んだら再開します


314 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/18(土) 07:15:48.99 ID:oQ2WnaiRO
つかさちゃん・・・


318 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 08:17:56.13 ID:Tnp2y3o50
「『お散歩』だから、仕方なかったんです。
相変わらずみたいですね、そっちは。もう意味なんてないのに」
「…薬は、どうしたんですか」
「もうないですね。でも、生きてます。どうしてだろう。
幸せだから、かなぁ?」
「し、しかし、いずれ…その…」
「生き物は、長くても短くても、一生で同じ数だけ心臓が動くって聞いたことがあります。
それが本当かどうかは置いておいて、ただ…」
「ただ?」
「私は、お姉ちゃんと一緒に過ごしてきて、その…まだたくさん生きたとはいいがたいですけど、
充分生きました。…生きていて、本当に良かった…ご主人様、冷めてしまいますわよ?」
「おっとと、すみませn」
「あなたたちが開発したあの毒薬、入れておいたのに」
「……ッ!!」
「私もたくさん人を殺しました。あと一人殺しても、同じでしょう?
みんな苦しんで死んでいきました。私は、せめて覚えておこうって思いました」
あなたのことも…覚えてておいてあげます。……くす、ウソですよ」

そう一言言うと、局長の皿は砂になった。



320 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 08:24:29.99 ID:Tnp2y3o50
「マスター、ちょっとおトイレ行ってきますね」
「はいはい~!」


「だめだよ…だめだってわたし。もうこれ以上殺しちゃ…
許してあげなきゃっ…もう…お願い、局長さんも…来ないで…!
もう、放っておいてください……もう、もうっ……!!!」


「はぁ…」

風邪が少し落ち着いたので、潮風に当たろうと散歩に出かけた。
そんなことぶり返すかもしんないって?まぁそりゃそうかもしれないけど…
じっと寝てられなくなっちゃったんだから、仕方ないじゃん…
……っ!まさか…

「よろしいですか、かがみさん」
「……偉い人ですか」
「局長、でいいですよ」
「何の、用ですか」
「もうあの方には時間がありません。あの方を救えるのは…
戦争だけです。…仕事ではなく、私はあの方、いや、つかさ様を救いたい。
それだけは、信じてほしいのです。日本には彼女が必要なように、
彼女にも我々が必要なのです」



321 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 08:34:46.68 ID:Tnp2y3o50
私は、こいつから受け取った薬を、突きつけた。

「これは、つかさの何なの?」
「それは…その…出切るだけ延命させるなら、という意味であって、もうあまり強い効果は…」
「説明なんていらないわ。答えて、これはつかさの何なの?」
「彼女を救うには…もう戦うしかないのです!いつ力が暴走するかわかりません。
もはやつかさ様の脳は組織に侵されていて…」
「…話にならないわね。帰っていいわ。いい?つかさは私の家族で、
たった一人の妹なの。もう、あの子には誰も殺させない。
もし、もしあんたのいう暴走が起きたとしたら……


つかさは 私が殺す 」

局長は、諦めたような顔になると、そのまま消えた。

そう、もう、あの子に、人を、殺させちゃ、だめ、だから…



322 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 08:42:09.46 ID:Tnp2y3o50
「ねぇつかさ」
「なに??」
「いっつも働いてばっかじゃ何だからさ、今度この辺りで遠足でもしましょうよ」
「そ、そうだね。うん!じゃあ張り切ってお弁当作らないと!」
「味見は任せてね」
「うん……!」
「あ、そうそう、これ」

結局、あの時飲ませてしまった薬を、つかさに渡そうか悩んだ結果、
私は見せることにした。そんなもの、もう役に立つ保障なんてなかったけど、
つかさには、一日だけでも笑って、バカやってほしかったから。

「……こ、これ…」
「局長さん、て人にもらった。それで…どれくらいもつ?」

つかさは嬉しいような、悲しいような顔をして、

「…ちょびっと」

そんな頼りない言葉を言った。
当然、遠足になんて、行くことはなかった―



324 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 08:56:22.71 ID:Tnp2y3o50
「おー、そうだそうだ!今日は久々に有線でも流そうか!」
「え?配信されてるんですか?」
「いやね、政府がなぜかサービスしてくれるんだってさ。ほらほら、これでも聴いて仕事効率アップだ!」

マスターは、ラジオのチャンネルを適当に回し始めた。

『わたしのニーソックスかえ、してよね~ だれーがはぁい、ちゃぁったんだ~♪』

「あぁ、これ、前に友達と歌ったことありますよ」
「へぇ!かがみちゃんの歌かぁ!マスターも聴いてみたかったなぁ。ねぇつかさちゃん!」
「……え?」
「つかさ、ぼーっとしないの!」
「ご、ごめんなさい…あの、お姉ちゃん、マスター

『何の歌、聴いてるの?』」
「あぁんもう、お客さん来たわよ、今日はホール任せたからね!」
「う、うん……あ」

まるで壊れたテレビのようだった。色合い、明度、テクスチャ、
全てが狂っていた。お客さんが、男か女なのかもよくわからない。

「お、お帰りなさいませご主人様」
「つかさちゃん!お客さん女性だって!」
「あ、あぁぁ~、ごめんなさい~」



325 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 09:04:53.29 ID:Tnp2y3o50
ザーーーッ!ザザーーーッッ…

そして、今度は視界全体が歪み始めた。
深夜の砂嵐のように、つかさの見るものがどんどんなくなっていく。

(だめ、今は…バイト中なのに……お願いっ!)


……プツン

電源がOFFになった。
もう、何も見えない。
もう、何も聴こえない。
もう、何も感じない。
もう、何も なにも ナニも ナニモ … ‥ ・ ―






326 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 09:12:15.05 ID:Tnp2y3o50
…あ、あぁ……聴こえる
聴こえるよ…そっか…そうだったんだ…
機嫌がいいとき、お姉ちゃんが…口ずさんでいた…
歌詞とかは…私にはわかんないけど…
覚えてる
そう、これだ…このメロディーだ…
これが これが うたなんだ


聴こえるよ、お姉ちゃん…
胸に、足に、背中に、お姉ちゃんが好きだったあのうたが
全身に行き渡るのが…わかる…


そのうたのなは―



ラッキースター ~この星の元で産まれて~




328 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/18(土) 09:32:24.80 ID:vZ2YHRp4O
支援。体壊すなよ
原作の>>326のシーンは忘れられん。兵器もちせの幸せ願ってるんだよな


327 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 09:22:11.77 ID:Tnp2y3o50
唐突に、幸せなんて崩壊する。
これだけは、何度経験しても慣れることがない。
私達が住んでいた、あの街が、襲われた。
朝から昼、たっぷり傷めつけられた。
炎が昇り、地元の人の断末魔があちこちに木霊し、
地面は血と肉で埋め尽くされ、もはや『地獄』に相応しい光景だった。

「かがみちゃん!早く!逃げるんだ!」
「マスター!マスタァァァァーーー!!」
「そんな顔すんな…実の娘が出来たみたいで…うれし…かった…ん」

ズシャァッ―

マスターの声は、天井が崩れてかき消された。
私は、逃げた。つかさを、つかさに会うために。

「…つかさぁ!今、今かえっ…!!」


そこにいたのは、『天使』だった。



329 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 09:35:24.30 ID:Tnp2y3o50
「つか…さ?」

私は、今にも壊れそうなその子に、近づいた。

「  来   る な
 敵 か?
   お  姉    ち ゃ ん
  うれ    し い
       助    け て 」
「…くっ!!!」

今のは何だろう?一度に何個もの声が聞こえたかと思ったら、
耳をナイフで抉られたような痛みが…

「   殺  し て
見 な    い で
   大 丈  夫 だ   よ
 ご め   んな   さ い
逃   げ て」
「つ、つかさ…」



330 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 09:43:18.50 ID:Tnp2y3o50
「さ わ   る な
   殺す  ぞ
 だ  め!
   帰 れ 
  嫌 だぁ !
    来 な  い で !」
「くっ……!!」

つかさに、殺される。……ここで、今。
と、私の感情が全て溢れ出た。
恐怖、悲哀、怒り、憎悪、優しさ   そして
どうしようもない 愛

私は、つかさを抱きしめた。

「がああああ!!ぐがぁぁっっ!!!あ、あああああっっ!!!」

声にならない悲鳴が、聞こえる。これ以上辛い痛みってあるのかな。私は今、兵器を抱いてるんだから…



331 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 09:51:10.45 ID:Tnp2y3o50
「おねえぢゃああん!!!私……私…飛べないの!戦わなきゃ、いけないのに!!
マスター、私のせいで、死んじゃっだのぉぉぉ!!!」
「うん…知ってる…よ」
「なんで…なんでわだじ…肝心な時にこうなんだろう…っ!ほんとわだじ…だ、だめな…」

ビギッ…!ブヅッン…!!
ドンッ!ドーンッ!!

生々しい音が、ずっと続く。この空襲の音で、この星に生きる誰かが、死んでいる。
たまたま同じ住民だっただけ。あまり親しいわけでもない。でも、なんでだろう。
目の前で死んでいくのは、悲しい。とりかえしのないものを喪ったからだろうか。
つかさは、こんな光景を、毎日毎日、見てきたんだろうか?
こなたも、そんな想いで殺したのだろうか。
こんなにも激しい痛みに耐えて、生きてきたんだろうか。

「バチが…当たってんだよね…罪をおかしておいて…お姉ちゃんとのうのうと生きてきたから…
私…強くなったのに、大切な人すら守れない…あ、あ、来たよ…行かなきゃ…あっあっ…」
「もういい、もういいのよ!つかさぁぁ!」



332 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 10:00:30.33 ID:Tnp2y3o50
「私が、殺してあげるから、ね?殺して、あげるから…」
「ありがとう…お姉ちゃん…お姉ちゃんのこと、絶対忘れないから…!

 私 は だ い じ ょ う ぶ
  あり  が と   う
殺  し て   あ げ  る
  痛く し    な  い か   ら
    お   姉 ち  ゃ  ん  大 好 き
 も   う 楽     に な  ろ」
 
―そして、消えた。つかさも、私も。
見えるものは何一つない。白い、白い世界が広がる。
意識はすぐに落ちて、思考が停止した。
つかさの声も、音も、温もりも、全部…


もう、終わってしまったのだろうか。



333 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 10:08:23.77 ID:Tnp2y3o50





        最終章
        
        
   ―この幸せな星に産まれて―

   
   
   
   
   


334 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 10:17:25.46 ID:Tnp2y3o50
「…ふぅ、良かった。食べ物まだ残ってた」

あの空襲から数日経った。あれからどうやって生き延びたのか
全然覚えていないけど、目が覚めたら全て終わってた。
外は、空襲でほぼ街は全壊。人っ子一人見当たらなかった。
だから、しばらくここで、もう少し生活しようと決めた。

「ただいま、つかさ」
「……」
「ほら、お弁当落ちてたから拾ってきたわよ」
「      」
「あぁ、だから大丈夫だって。腐ってなんかないわよ」
「      」
「うん、わかってるわよ」
「      」
「そういえばそうね、あら、あんた髪伸びたわね、切ってあげよっか?」
「      」
「な、なによそれ!確かに私ぶきっちょだけど、髪くらい切れるわよ!」
「      」
「そうそう。大船に乗った気でドーンと構えてなさい!」



336 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 10:25:20.27 ID:Tnp2y3o50
……ジョキッ(バサバサッ)

「      !!!!」
「こら暴れるな!前みたいなショートにしてあげようって思ってるんだから」
「      」
「わかってるわよ。ちょっとずつね。私…髪の毛なんて切ったことないし」
「      」
「それに鏡もないし、正直カンに頼ってるような気も」
「      ~~!!」
「冗談よ冗談」

そう会話しながら、私はつかさの柔らかい髪を丁寧にカットしていった。
カバーは落ちてたシーツを。ハサミもさっき拾ったやつを使って。

「ほんと…綺麗な髪…」
「      」
「なな、なんでもないわよ!!」



338 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 10:35:22.22 ID:Tnp2y3o50
「      ♪」
「どうよ、私だってやればできるでしょ!」
「      」
「あー大丈夫大丈夫、後ろもちゃんとなってるって」


-----


「ごちそうさま。ごめんね、いつも落ちてた弁当ばっかりで」
「…、…、…」
「つ・か・さっ!」

パンッ―!

反応の薄いつかさに、私は猫だましをして目を覚まさせた。

「      !!?」
「ほら、歯みがいて寝ましょ。また身体拭いてあげるから」
「      」
「…薬?もう一個しかないけど、飲む?……そう、そうだよ、ね」



339 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 10:44:47.47 ID:Tnp2y3o50
背中から露出した翼。そこから流れる赤黒い液体を拭きながら、私は感慨にふけっていた。

もう、つかさの声は誰にも聞こえなかった。
私は、つかさが話してるつもりの声をしっかりと聞き、理解した。
その方が、つかさの気持ちがより判ると思ったから。
つかさに気づかれないよう、ゆっくりと話を聞いた。
つかさが想うこと、全てを受け止めた。
つかさが笑うと嬉しくて、泣くと苦しくて、怒ると切なくなった。

つかさは、私に「歌」をうたうように伝える。

この日は、雨が酷く降った。
嵐にもなり、この街の残り少ない電気を揺らした。
雨は…朝になるまで降り続けた。


つかさの、命のように。



340 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 10:54:45.69 ID:Tnp2y3o50
寝る前に、またつかさは鼻血を出した。夜になると、身体バランスが不安定になるんだろうか…
つかさを寝かせて、部屋が静かになると、外の雨が余計にうるさく感じた。
小さいとき、つかさが独りで公園のベンチにいたことを思い出した。
あの意味もなくただただ不安になるような、やるせなさにも似た感情。
いずれ訪れるであろう、つかさの死を、私は受け止めてあげると決めた。
雨音がつかさの死を包んで、少しでも痛みを忘れさせてくれればいい。
ぼんやりと、そう思った。

そんな都合のいい最期なんか、やはり幻想だったんだろうか?

ガリッ…ガリガリッ…

「…つ、つか、さ…」

ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ

無数の針金が、つかさの身体を突き破って、暴れ始めた。
私はただ…無心にそれを引きちぎろうと…した。



341 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 11:04:08.64 ID:Tnp2y3o50
「      」
「ばっ!あんた!仕方ないなんていわな…!」

なんで!なんで!?こんなの酷すぎるよっ!
酷い?何が酷いって?同じだ。
つかさは、死ぬ。私が何もしてあげれないまま、みさおが死んだように。
つかさも、死ぬんだ。

「お姉ちゃん、どうして、来てくれたの?」
「……!?」
「こんな雨の日に…どうして?」
「………ッ」
「ごめんね…私が傘忘れちゃったせいで…お姉ちゃんに迷惑かけちゃって…」
「つか…さ?」
「大丈夫だよお姉ちゃん。私、口固いから」
「……」
「そうだ、私こなちゃんにメールしなきゃ」
「………」



342 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 11:15:09.36 ID:Tnp2y3o50
そっか…これが、つかさなんだ。
いつも自信なさげで、弱気で臆病で、こなたが言う以上にヘタレで、
ナイーブで、ちょっと負けず嫌いで、だから私、この子を傷つけてしまう気がして…
でも本当は…

「ま…待ってつかさ、…違うの…違うの違うの…
ぜぜ…絶対あいつになんか…いい、言っちゃ…ダメ…なんだか…ら」

……

パキッ―

つかさを締め付けていた羽が、消えた。

「おさまった…いや……これが、死……ッ!」

嵐が吹き荒れてようと、関係なかった。
私はつかさを抱き上げ、外に出た。

「いるんでしょ!?出てきて!出てきなさいよっっ!!」



345 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 11:25:51.94 ID:Tnp2y3o50
物陰から、局長が姿を現した。
悲しい目をしていた。私は、局長に縋るような思いで、伝えた。

「生きてる…つかさはまだ…生きてるのっ!!!!」


私は、罪を犯した
この星の、すべての生きているものに


私は、罪を犯した


―ただ利己的な衝動でつかさを裏切り、
この星に、つかさを放った

「知りたいですか。この戦争のこと、本当の、『彼女のこと』を」



347 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 11:34:01.93 ID:Tnp2y3o50
「人には知らなければ良かったと思うことがたくさんあります。
知らなければ本当に大切なものだけ見ていられたのに、と思うからです」
「つかさは…つかさは生きられるの!?」
「おそらく、しかし、私のような下の者には、詳しいことはわかりません。
ある研究所の人間はこう仮説を立ててました。
彼女の体の、ある細胞は「人類」そのものだ、と。生き返るために、
人類が始まってからの歴史を繰り返しているようなもの。生きるために、
戦いを繰り返し、それをエサにどんどん成長する。その先に待っているものは…
わかりません。研究所は戦争開始直後になくなりました。ですから、
もう今となっては誰も知りません」
「つかさは…生きられるの…」
「…生きます。……そうそう、先日、私の家族が空襲で死にました。
娘は…あなたと…つかさ様と、同い年でした。仕方なかったんです。誰も、悪くないのです」


局長は、そう言い残して去っていった。



349 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 11:44:21.01 ID:Tnp2y3o50
もう何もする気が起きなかった。
一日一日を、何もせずに過ごす日々。
おかげで、微妙に痩せた気もする。
こんなことで痩せてもちっとも嬉しくなんかない。
徐に、マクラの傍にノートのようなものが置いてあるのに気づいた。

「日記…帳?」

それは、携帯が使い物にならなくなった日から、
最期の薬を飲んだ、あの日までの記録だった。

生きていた。私たちは、確かにあの時を生きていた。
つかさの綺麗な字を読むたび、あぁ…生きてたんだって実感できる。
強く
    強く

必死に強くなろうとして、笑って、泣いて、怒って、
不安におしつぶされて、罪にもがき、懺悔して、
せめて 生きることだけを許して欲しいと願いながら
私達は、生きていた。

ただそれだけを許された 小さな生命が……



351 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 11:54:34.78 ID:Tnp2y3o50
「お嬢ちゃん、どうしたんだいこんなところで?」
「えっと…」
「嬢ちゃんも、『天使の街』行きたいのかい?」

最近人に出会うとそんな単語をよく耳にする。
思い当たる節がありすぎで最初は戸惑っていたけど、徐々に聞き慣れていった。

「その…なんなですか?天使って」
「ん~。神サマみてーなもんかな?俺ぁただ『天使』のご加護がある
街があるって聞いたんでな、こんな世の中だからそれにすがってみるかなって思って目指してるんだ」

……つかさは、もう私の妹じゃなくなったのかもしれない。
もうつかさは、私なんかじゃ触れられないところまで行ってしまったのかもしれない。
でも…つかさの日記を思い返して、そんな下らないことをかなぐり捨てる。

『お姉ちゃん、もし、もし粕下部に戻ってこれたら、お願いがあります。
一緒に、あの日見た綺麗な夜景が見える、あの場所に、来てください』


だから私は、もう一度『つかさのいた街』に、戻ろうと決めた。



355 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/18(土) 11:59:27.10 ID:Wm/AC5ZtO
こっこ!こっこ!


356 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 12:04:30.54 ID:Tnp2y3o50
……行こう。
約束を、果たしに行こう。

見慣れた風景はもうそこにはなくて、
薙ぎ倒された木や、自重で押しつぶされた家屋、銃撃によって削られた通学路。

それでも、ここは私の故郷だった。
そして、あの日、あの時、あの場所で交わした約束を果たしに。



「……はぁ、はぁ」

少し歩いたのに、もうフラついていた。
運動不足かな?元々運動は得意ってわけでもないけど。
あぁ、それを言ったらつかさはどうなるのやら。
そういえばあの子、私のバレーのサーブ顔で受け止めたっけ…
あはは……はは……

「うっ…ううっ…つかさぁ…はやく…来てよ…
もう逃げないから……会いたいの…あんたがなんだっていいの…
もう一度……ここで語り合いたいの……あの丘でもいい…
ううん、どこだっていい…あんたとの思い出…こんな程度じゃ…
語りつくせないんだから…うっっ…うああああっっっ!!!」



360 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 12:14:09.72 ID:Tnp2y3o50
ふと、夜空に浮かぶ星が、何かに遮られた。
すぐ上。頭上。

トン、と、それは降り立った。間違いなくそれは、
―つかさだった。

「つかさ!つかさぁっ!」
「…誰、ですか?」
「……え」
「なんで私、こんなところにいるの。ここ、どこ?」
「つかさぁ…」
「どうして、泣いてるの?」
「つかさ、私よ、かがみよ!」
「か…あ、また出た。あなたが、つかさの事考えてるの観てたら、
こんな水が目から出たの。なんで、出るの?あなた、誰?
どうしてつかさは、ここに来たの?あなたがここに来たら、
つかさもここに来るように設定されてたの。『お散歩』が多くて、凄く大変だったのに。
どうして?どうしてつかさは待ってたの?つかさはずっと、あなたを待ってたんだよ!」
「…あ、もしかして、敵さん?」
「なな、んなわけないでしょが!」
「あなたも、この水、出てたよね。どうして?今のあなた、
心拍数、呼吸数、アドレナリン濃度、…全部異常値だった。
つかさも…そう。そして、言葉じゃ言えない、意味わからない情報が頭に流れ込んだの」



363 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 12:23:19.08 ID:Tnp2y3o50
「それは…『悲しい』『苦しい』『泣きたい』『かわいそう』
感情ばっかりなの。最後に…『知ってくれてうれしい』『ずっと、ずっとさみしかった』って…」

つかさは、どこかつかさっぽくなかった。
けど、この子は間違いなくつかさだった。
臆病で、ナイーブで、負けず嫌いで、そして…とってもとっても可愛い…私の妹…

抱きしめた。きつく、潰してしまうくらい、抱きしめた。

「なっ…やめて…!なにするのっ…!!」
「いいじゃないっ…!別に…したいからしてるだけよっ!…それに、私はあんたの『姉』なんだから、
泣いてる妹をあやすのは、姉の役目なのっ!」
「姉、だから…。それで、今の行為に説明がつくの?」
「そ・・そうよ!」
「じゃあ…このつかさにある『もやもやしたもの』、どうやったら取り除けるの?」
「もやもやした…もの?」
「『一番、お姉ちゃんを感じられること』だって」
「…一番、私を感じられること…」
「なんなの?それって?」

…なんだったっけ。



365 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 12:33:15.18 ID:Tnp2y3o50
あぁ、そうだ。一緒にお風呂に入った日だ。
あれはそう…中学の卒業式だったかな。
中二くらいから、恥ずかしいのでもう別々に入ろうって言ってたんだけど、
その日に限ってつかさが『一緒に入ろうよ』って言ったんだ。
つかさは、正直頭が悪い。私と同じ学園に、落ちる可能性のほうが高かった。
だけど、つかさは頑張った。徹夜したし、私と部屋でかんづめしたりして、
奇跡的に同じ学園に合格した。
箍が外れたのか、安心しきったのか、肩の荷が取れたのか、そんなワガママを言い出した。

湯船で二人は、さすがに狭い。それに、身体つきも
女らしくなってるので、色々と恥ずかしい。
だけど、つかさは気にしてなかったのか、いきなり抱きついてきた。
そして、転寝をしながらこう言ったのだった。

「こうしていると…一番安心できる…一番お姉ちゃんを、身近に感じられるから…」



367 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 12:44:41.51 ID:Tnp2y3o50
要するに、また一緒にお風呂に入ればいいわけ?
いやまて、このご時勢で易々と風呂に入れるかっての…
うーむ…どうしたもんか。

「ねえ、どうしたの?」
「むぅ…むむ」

と、ここで私は閃いた。お風呂に限らなくてもいいんではないか?
私を一番肌で感じるっていうのは、つまりは素肌で触れ合えばいいっていう話で。

…あ、それって、なに?ここで裸になれってこと?

「どうしたの?ねえ?」
「……しっかたないわね…恥ずかしがってる場合じゃないしな…
よし、つかさ。  服 脱 ぎ な さ い 」


もう、色んな意味で死にたい…



370 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 12:53:38.73 ID:Tnp2y3o50
「なっ、何するの?」
「ほら、さっさと脱ぐっ!恥ずかしいんだから早くしなさい」
「え…はぅ…なんか、強引じゃない?」
「私だって脱ぐんだもん。仕方ないでしょ」

…この脱いでる時間が、妙に長く感じられた。
そして、今この場で、私とつかさは、一糸纏わぬ姿で対峙した。

「これで…どうするの?」
「…ほら、おいで」

つかさをぐいっと引き寄せると、つかさの顔を胸に押し付けた。
素肌にかかるつかさの髪の毛が、すこしくすぐったかった。

「……あっ」
「どう…?さっきと、違う?」
「うん…なんでだろう。裸になっただけなのに…あなたの心臓…トクントクンって、動いてる」
「そうよ…生きてるんだから、当たり前じゃない」
「でも、私は動いてないよ?」
「バカね…そんなの関係ないわよ…私の腕の中で、こうして息して話してるじゃない。
それだけで、充分『生きて』るの」
「うん…温かいよ……ねぇ、お姉ちゃん…」
「うん?」
「もうちょっと、こうしてていい?」
「うん…」



372 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 13:03:50.28 ID:Tnp2y3o50
…チチチ

「ん…あ、あれ」

眠ってしまったらしい。朝の光で、タオルケットがかけられてるのがわかった。
つかさは、軍服を着ながら、こちらを見た。

「つかさ?」
「行って来るね、『お散歩』」
「ど、どうして!?」
「だって私、兵器だし…。あの時ね、声出なくなったときから、
やっと終われる、やっと死ねるって思ったの。だけどね?
お姉ちゃんがいたから、出来なかったんだよ。そしてまた、ここに帰ってきたの。
本当は、お姉ちゃんの妹に戻らないほうがよかったんだよ?
だけどね、もうここまで来ちゃったの。もうこの星は…滅びるの」
「…滅び…る」
「だから、その最期が来るときは、一緒にいて欲しいの。放っておいてもやってくるなら、
私が『お散歩』して早めたほうがいいでしょ?」
「……」
「ごめんね…でもお姉ちゃん。これだけは信じて。
最期の最期まで、私を信じて…」
「…うん」
「ごめんね…い、行ってきます」

つかさは、敬礼の姿勢を取ると、彼方へ飛んでいった。


■昼飯のため時間置きます



373 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/18(土) 13:05:01.40 ID:KQ/wd5mE0
切ねえ いってらっしゃい


375 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 13:20:56.10 ID:Tnp2y3o50
「こんにちは、今戻りました」
「つ…つかさ総司令官殿!!」
「いつお戻りに!!?」
「あれ、私総司令になってたんだ…じゃあ事実上、軍の責任者だね」
「き、貴様ら!つかさ総司令官殿に敬礼!」

腐っていた士官達は、跳ねるようにして立ち上がると、力のある敬礼を取った。

「総司令!なんなりとご指示を!お願いいたします!」
「…指示…うーん、じゃあ、皆さん!命令です。
皆さんが、愛してる、皆さんが大切にしてる、皆さんが守りたい、
そんな人たちのところへ、行ってください」
「…は、はぁっ!?」
「もう、お終いにしますから、最期だけは、貴方達が本当に守りたい人の
傍に、いてあげてください。お願いします」

小さな総司令は、部下に頭を下げた。
逆らうものなど、誰一人いなかった。



376 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 13:30:57.96 ID:Tnp2y3o50
明日死ぬとしたら誰と一緒にいたい?

「こう、これからどうしよっか?」
「こうの行きたいところに、行けばいいわ。付き合うから」

好きな人?愛する人?家族?

「みなみちゃん…帰ってきてくれて、ありがとう」
「もう離れない…ずっと、ずっとゆたかの傍にいるから…」

守りたい人?それとも一人のほうがいい?

「あやの…もう、ずっと一緒だからなっ!」
「うんっ…!うんっ…ずっと、いつまでも…っ」

そして、あなたはその人と何をしたいですか?
愛し合いますか?語り合いますか?それとも、一緒に夢を見ますか?

「かがみ!」
「かがみ…よく帰ってきたわね…つ、つかさは…」
「はぁ…はぁ…」

その人を 大事にしてください この星で 幸せになってください

「つかさなら、絶対連れて帰るからっ!だから、行ってくるわね!」

せめて、その時が来るまでは、その人のことだけを 想っててください



378 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 13:39:47.31 ID:Tnp2y3o50
>>376 の最初のセリフの行、「こう×」→「やまと○」です orz


以前つかさに言われたことがあった。

「お姉ちゃんにだけ教えておくけど、『その時』がくる合図ね。
夕方の4時くらいに、夕日が出るの。その夕日をなぞる様に私が飛んだら、
地震が来るから。だから…それまで夕日はこまめに見ておいてください」


…で、今そんな時間。それで、水平線に向かって伸びる光の粒子。
あ、あれつかさか。あれが夕日の弧を描くように飛んだら…地震が…


―ズシッ―


…きたっ!立ってられない。まるで地面が生きているかのように蠢いて、私を翻弄する。
ぐねぐねと動く地面を蹴って、私は走った。兎に角、走るしかなった。

「……っ!!!」

稲妻?いや、なに、あれは?高層ビルのように太いエネルギーの塊が、
いくつも天上から地上へ降り注いでいる。
そう、ついに来たんだ。  終末が―



380 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 13:48:13.96 ID:Tnp2y3o50
誰かを守ろうとしたとき
たった一人しか守れない自分に気づいたとき
あのつかさが兵器になった日以来、
私達は何度も遠回りをして、何度も泣いて悩んで
ようやく ここまでたどりついた

もうこの星は死ぬ 免れない
だけど、今は、つかさのことだけを想っていたい
私のたった一人の妹   つかさ

時を越えてあの約束をした日が蘇る
「世界が終わるとき」
その意味を体で理解できるハズのないまま 私はあの丘へ走った
つかさと交わした 約束の丘へ

「…そん、な」

丘は消えていた。丘を盛り上げていた山が、崩れていたのだ。
そんなバカなことって…この丘で、つかさと…約束したのに…っ!!



381 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/18(土) 13:50:37.30 ID:w6+OeNCB0
どがーん 私は死んだ ユーマ(笑)


383 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 13:59:45.28 ID:Tnp2y3o50
人は気づいていない。だましてだまして、この星を追い詰めた。
誰のせいでもない。この星の全ての人たちが、何度も何度も過ちを繰り返した。
生きるために。
誰もが思うことだ。なんで、この星は壊れてしまったのか。
世界は死んだ。あっけなく。人間は、星を壊すことはしても
星を治したことなどただの一度もない。
そして、無数に存在する戦争を完全に終わらせたことも、ない。
いらないはずの兵器が、どんどん使われていく。
それはある意味、この星を癒していく行為ともとれた。
もう一度始まった日に、こどもがおもちゃを片すように、
泣きながら後片付けをするように。


一つ

一つ



385 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 14:07:38.94 ID:Tnp2y3o50
人がいた。人で溢れていた。
黙するものだった。
誰一人、呼吸をしていない。
誰一人、私を見ていない。
骸だった。死骸だった。
ここが、本当の


       地獄


だった。

「ああ…あああああああっっっ!!!!!!」

目の前の、愛する人を好きでいること。
地球に生きる全てのものの責任。
知らなければ、こんなつらい気持ちになることなんてなかった。
目をふさいで、誰とも知り合わずに生きていたら、一人で生きていけたなら…



387 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 14:16:37.69 ID:Tnp2y3o50
だけど、知ってしまった。私達は精一杯行き過ぎて、
その全てを台無しにされてしまった…
だけど、つかさはこんな光景を、数え切れないほど見てきた。

ごめん ごめん ごめんなさい ごめんなさい … …


目覚めると、そこには一枚の羽があった。
他には何も見えない。大きな大きな、天に向かって伸びる片翼。

「つかさなの…?」

触れた。無機質だった。冷たかった。硬かった。けどそれは…

「おつかれさま、つかさ。苦しかった?辛かった?悲しかった?
もういいの…もういいのっ!私達は、最期まで、こうして一緒にいられたんだから!
ねぇ…もういいでしょ…お願い…答えてっ!!……つかさぁっ…!!!!」



389 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 14:24:48.55 ID:Tnp2y3o50
■ここからオリジナルの展開です

その時、真白だった光景が、黒に反転した。
まるで宇宙を漂う遭難者になったようだった。
私が見てる方、そこに、おぼろげに光るものがいた。

「つかさ…なの?」
「おねえ…ちゃん」
「つかさ…つかさ!」

すぐに駆け寄ってあげたかったけど、つかさとの距離は縮まらなかった。

「どうして?なんで…!?」
「お姉ちゃん、来て…」

つかさが向こうへ行くと、私も呼応するようにつかさと同じ速度で進んでいった。



391 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 14:33:57.28 ID:Tnp2y3o50
しばらく進むと、丸い、光の塊が見えた。
私はつかさに連れられて、その光の前に立った。

「つかさ…これは?」
「この星が…生まれたばかりのころの姿だよ」
「じゃあこれが…地球なの?」
「ちょっと、違うの」
「え?」
「平行世界ってあるの。私達の世界でいえば、今は『戦争が始まった』世界で、
この星の歴史は『戦争が始まらなかった』未来の世界なの」
「つまり、ここは戦争を回避できた、地球のこと?」
「うん。見つけたんだ。私が実体を無くしたときに。
それで、お姉ちゃんにお願いがあるの」
「な…に?」
「お姉ちゃんは、この地球のお姉ちゃんとして、やり直して」
「それって…どういうことよ?」
「この地球にも、お姉ちゃんはいるの。今のお姉ちゃんが、この世界に介入して、
平和な日本にいるお姉ちゃんとして、もう一度生きていくの」
「そんなこと…出来るわけ」
「お姉ちゃん、私、最終兵器なんだよ?このくらい、簡単だよ」
「それなら…またこなた達と、会えるのね?」
「……うん」



393 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 14:41:18.26 ID:Tnp2y3o50
「でも、この力を使ったら…私、消えるかもしれない」
「…!な、なに言ってんのよ?さっきは簡単だって…」
「もう私、実体がないから…お姉ちゃんを送ったら、私は存在そのものが消えちゃうかもしれない」
「嫌よ!ダメ!そんなのダメェェ!!!」
「……お姉ちゃん、丘で抱き合った日のこと、覚えてる?」
「え……」
「『私を信じて』って。私だって嫌だよ。お姉ちゃんと別れたくない。
だから、私も絶対お姉ちゃんのところに帰るよ」
「ほんとよね…?ほんとのほんとね?」
「うん、ほんとだよ」
「ほんとのほんとのほんとのほんとのほんとのほんとのほーんとね?」
「うん、約束」

つかさは小指をちょこんと差し出した。
私も、同じように小指を出し、交わらない指きりをした。

「ゆーびきーりげんまん…」
「うそついたらはりせんぼん…」
「のーま……す……うっ、うわああああっっっ!!!」
「お姉ちゃん…ありがとう………    さようなら」


そして、今度こそ本当に、全てが消えた。



396 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 14:50:48.78 ID:Tnp2y3o50
…ジリリリリリ

「ふぁ…朝かぁ」

んーっと伸びをする。私、柊かがみ。陵桜学園高等部の3年D組。
といっても、3年にはなったばかりで、これから受験のことを考えると朝から憂鬱だ。

「いってきまーす」
「いってらっしゃ~い」

家を出て、電車で隣駅まで移動。
そこで、、、

「お早うかがみ~」
「お早うございます、かがみさん」
「おっす」

いつもの二人と合流する。泉こなたと高良みゆき。
そして私の、いつもの(自分でいうのもなんだけど)仲良しトリオだ。

「いや~…また深夜アニメ観ちゃって眠いったらありゃしないよ」
「泉さんは、毎晩違うアニメをご覧になってるんですよね」
「毎晩かい…その努力をもっと別のことに活用しろよ…」



397 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 14:59:01.40 ID:Tnp2y3o50
「おーっす柊」
「おはよ、柊ちゃん」
「おっす」

そんでこいつらは、小中高と同じクラスの日下部と峰岸だ。
さっきの仲良しトリオより仲が長い。なんで苗字で呼び合ってるかって?
…なんか昔っからそうだったから、今更変えにくいからよ。

「いや~、柊、ニュース見た?」
「え?芋堀のこと?」
「ちっげーよ!世界新記録だよ!」
「なんか出たっけ?」
「おめーボルト知らねーのかよ!?三種目で新記録作ったんだぞー!陸上部員としては、おちおち負けてらんねぇぜ」
「…つーか情報古いし。そもそもあんたじゃ色んな意味で無理だし」
「んがー!あやのー!柊が冷たいっっ!!」
「よしよし…もう、あんまりそんなこと言っちゃだめよ、柊ちゃん」
「…あのなぁ」

仲の良さは、……まぁ見ての通り。あいつらとは変わりなし。



401 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 15:07:09.87 ID:Tnp2y3o50
「さて…そろそろ帰るか」
「おーい柊ー。ちょっといいか?」
「はい?」

桜庭先生が呼んだので、小走りで先生の元に向かった。

「なんですか?」
「あー、大した用じゃないんだが、明日の実験の薬品で足りないものがあってな。
持ってくるのは明日でいいから、ちょっと買ってきてくれないか?」
「いいですけど…」
「欲しいのはこれだ。よろしく頼むぞ」
「はーい」

桜庭先生が(多分また保健室だろうけど)去った後、私は渡された紙を見た。

「…結構量があるし…はぁ…なんかいいように使われてるなぁ、私」

そうぼやきながら、私は教科書をカバンに積み込んだ。



404 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 15:12:22.33 ID:Tnp2y3o50
「よーし、今日も張り切ってゲマズを散策するかー!」
「あーこなた、私今日用事があるからパス」
「ええー!?連れないぞー連れないよーかがみ~ん」
「身体をすりすりさせるな!いいから一人で行ってこい!」
「ふふ~ん、いいもんいいもんね~。ガーゴイルの新刊出てても教えてあげないもんね~」
「ぐっ…!卑怯な……ってノせられるなよ私」

いつもの調子でこなたと別れると、近所のスーパーに入った。


-------


「ふいー、やっぱりそこそこ重いわね~。学校には持っていく必要ないし、
とっとと家に帰るかぁ」


ぎりぎりと重みで指が締め付けられるのは勘弁被りたいので、少し早歩きで帰路を目指した。



408 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 15:19:10.33 ID:Tnp2y3o50
「…あれ?」

おかしい。家に帰るはずなのに、方向とは逆に足が進んでいる。
なによこれ?私リモコンで操られてるの?
いや、違う。これは私の意志で歩いてるんだ。
なんでこんなことをしてるのか、わからない。理解できない。
だけど、大切な何かを忘れてしまったような、そんな錯覚に陥りそうになっている。

胸が、痛い。本当は指が痛むはずなのに。
桜がそろそろ散ってしまう。夏を迎える青い葉が、私の目の前に現れた。

「ここ…上るの…?」

誰に訊いているんだろう。答えを知らないまま、私は
舗装されてない坂道を登り始めた。

…ほんと、一体何をしてるんだ、私は。



412 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 15:28:24.41 ID:Tnp2y3o50
「はぁっ…はっ…」

ただでさえ急な坂なのに、両手には数キロの荷物がある。
なんの罰ゲームだ、これは。まだ夏じゃないけども、
これだけの運動をすれば汗もかくものだ。

「これは、新しいダイエット方法なのかしら…?」

などとバカなことを考える。そろそろ指が危ない。
日下部みたいに鍛えてるわけじゃないから、
ヒザも少し笑い始めてきた。

「はぁ…なによ、私、何してるのよ…」

そして…ようやく坂を登り切った。



「…綺麗」



416 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 15:36:57.02 ID:Tnp2y3o50
そこは、小さな丘だった。丘から望む風景は、街を一望できる絶好の一等地だ。
夜だったら、ネオンなどの蛍光でより綺麗になることだろう。

…だけど、私はこの光景に違和感をかんじた。
私は、 コ コ を 知 っ て い る。
初めて来たはずなのに、だ。知らない、こんなところ、知らない。
なのに、頭の片隅には、夜のこの情景が浮かび上がってくる。
とても鮮明で、とてもリアルに。

ドサッ―

胸が、痛かった。そして、悲しかった。
ツ…、と、涙が流れた。なんで?たまたま見つけただけなのに、なんで私、泣いてるの?

「あはは…なに泣いてるんだか…お母さんやお姉ちゃんが心配しちゃうよ…
早く帰らなきゃ…」

しかし、足が動かなかった。そこにいなければいけないと、誰かに言いつけられたように。
そして、涙は止まらなかった。拭うこともせず、ポタリポタリと、コンクリートを濡らす。

「どうして…こんなとこ知らないのに…初めて来たのに…
どうしてこんなに胸が痛いのっ!?どうしてこんなに、切ないのっ!?
どうしてこんなに……懐かしいのっ………」



419 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 15:44:20.13 ID:Tnp2y3o50
ふわっ   と、暖かい風が吹いた。
今まで感じたことのない、人肌のような匂いもしていた。
なんだろう、これ。
ずっと、ずっと知っていたハズのような気がした。
だけど思い出すことができなくて、私は風に顔を向けることしかできなかった。

光だ。
生き物のようにうにょうにょと動いているのが少し奇妙だった。
だけど、やっぱり、あれを私は見たことがある。
あれは、なんなの?
教えて…教えてよ…知ってるのに、思い出せない…このもどかしさを…誰か…なんとかしてよっ…!!

光は、少し大きくなっていく。
棒状になったかと思うと、五つの突起が突き出てて、それはヒトガタのような形を形成していく。

そして、光は白く発光した。思わず目を背ける。

…どれだけそうしていただろうか。
目が落ち着いて、私はそこに立ったモノを見た。



421 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 15:53:26.33 ID:Tnp2y3o50
それは…
私と同じくらいの背丈で、陵桜の制服を着ており、特徴的なカチューシャを身につけていて、
少し垂れた大きな瞳をしていて、どこか不安そうな顔をしていて、

とっても臆病で
とってもヘタレで
とってもドジで
とってもバカな…


私の…

「……―――っ!!!」
「―――っ…!」


私の、たった一人の…


「……おかえり」
「……ただいま、お姉ちゃん」


私の妹    ―つかさ、だった。



423 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 15:55:07.14 ID:Tnp2y3o50





       ―私達の未来に、永遠の幸せを―


           最終兵器つかさ
           
             
             
             
             
            
 


424 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/18(土) 15:57:41.58 ID:PVafv750O
超乙!

久しぶりに見入ってしまた


425 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/18(土) 15:58:33.06 ID:+mSzMGU/0
何度か泣きそうになったよ・・・

乙!!


428 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/18(土) 16:00:43.96 ID:8hVmtHsE0
>>1

ハッピーエンドででよかった。
元ネタの救いのない展開を知ってたからヒヤヒヤしてたぜw


429 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/18(土) 16:00:59.61 ID:KQ/wd5mE0
乙 よかったよ しかも最後ハッピーエンド?になるなんて…
ありがとう


430 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/18(土) 16:05:15.08 ID:Tnp2y3o50
■長らく読んでいただいた方、ありがとうございました
■誤字文字ズレが多くて申し訳ありませんでした
■保守、支援いただいた方々、本当に感謝してます
■原作ファンの方、色々ごめんなさい
■あとひよりとゆい姉さんとそうじろうとパティファンの方、マジで申し訳ありませんでした
■最後まで読んでくださいまして、ほんっとーーーーにありがとうございました

リアルタイム投下って凄いハードなんだと実感しました


431 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/18(土) 16:08:56.41 ID:4LpeQRPgO
バイト前に見つけてバイト後に読み終わった
最終兵器彼女の方しか知らんけどおもしろかった!
久しぶりに読みたいが、読んだら泣くから読まない
本当に乙でした!


432 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/18(土) 16:09:05.59 ID:0IYbK9+a0
超乙!
最高におもしろかったよ。

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Comment

おもしろかったです
名無しのエリンギ |  2008年10月19日(日) 20:43 | URL 【コメント編集】

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