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エリンギ速報ではきのこネタ、きのこたけのこ戦争についてのスレを積極的に載せてきます!

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2008.10.18 (Sat)

最終兵器つかさ

1 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 15:19:12.77 ID:9u4Ked2f0


これは 滅び行く世界で かけがえのない『絆』で結ばれた姉妹の

悲しくも 切ない 物語である







2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/16(木) 15:20:09.79 ID:2DFdsDNN0
Fin

3 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 15:20:14.09 ID:9u4Ked2f0
私とあの子の通う高校は、この長い並木道を超えた先にある。
私は、一年中衣替えを繰り返すこの道がひそかに好きだった。
イナカで、駅近まで出ないと特に面白味のないこの街。

「ちょっとぉ、とろいわよつかさ」
「ごめんなさい…はぁ…ごめん…」


私の妹の、つかさだった。
そんな風に謝ってばっかりのつかさ ちょっとかわいい。


しかし、とろい(距離にして約40M)


兎に角気が弱い。おまけにドジっこで
成績も中の下。家庭科だけが無意味にいいのが癪に障る。

口癖は「ごめんね」

座右の銘は「バルサミコ酢」



なんだか、不器用な妹だと思う。



6 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 15:24:26.11 ID:9u4Ked2f0
「だからあんたさぁ、明日からバスで通学しなさいよ。
早起きすればいけるでしょ」
「ご、ごめんね…でも、やっぱり歩かないと…
私…運動音痴だし…その、最近太っちゃったし」

つかさが「バス通学を止める」と言い出したのは5日前。
でも、私はいまだにわからないでいる…

「バカ」

しまった…

「あんたはいいかもしれないけど、付き合わされるあたしの身になってみなさいよ。
ほんとはあんただけですればいいかもしれないけどさ、お父さんお母さんは
『姉妹なんだから、かがみも付き合ってあげたら?』って言うし。
こんなことで遅刻したらどうすんのよ?」

違う、違うのつかさ…

「ご、ごめんね…お姉ちゃん…」
「ま、まぁわかればいいのよわかれば」

ホントに言いたかったコトバは、こんなコトバじゃなくって…




7 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 15:28:48.90 ID:9u4Ked2f0
「柊ってー、ほんっと不器用だよなー」
「そ、そう…?」
「妹さん、泣かしちゃダメよ、柊ちゃん」
「いやいや!泣いてはいないっしょあれは!」
「あたし見たんだぜ。柊の右斜め後ろで顔真っ赤にして涙
をためている妹を!」
「いやだから!始業始まっちゃうから走っただけだって!」

だから―

だからムリしなくていいのよ
私は大丈夫だって
ホントはそう言いたかったのに

「しかし、わかんないのよね。18にもなって未だに姉っこっていうのもさ」
「いいじゃない、可愛いわよ」
「付き合わされる身にもなってほしいわ」
「いやでもさ~、パシリくらいにはなるだろ?」
「お前がいるから無用だ」
「で、でも、双子なんだから、仲良くするのは悪くないわよ?」
「生物学的にでしょ。結局他人には変わりないわ」

みさお・あやの(まずその口をどーにしかしろ・しなさい)

「…なによぉ、もう」



8 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 15:33:02.10 ID:9u4Ked2f0
一方つかさは…

「まーたかがみんのツン期が始まったんだね」
「つかささん、あまりお気になさらないほうが」
「で、でも…私のせいでお姉ちゃんに迷惑かかってるのは正しいし…」
「でもさー、産まれたときから一緒なんでしょー?あんまり気を使うのもお互い悪いっしょ」

そう…
こなちゃんの言うとおり。
私とお姉ちゃんはずっと一緒だった。
でも、いつかは離れるときがくる
それはまるで、雛が巣立ちするような…
でも…それでも…

「もう、煮え切らないなー!よし!」
「どしたの、こなちゃん」
「はいこれ!」
「泉さん、それは?」
「映画のチケット!ペアだから使い道に困ってたんだよね~。
二人で双子水いらずで行ってくるといいさ!」
「う、うん…わかった…」
「あ、ちなみにそれホラーだから」
「ひぃぃ!そんなぁぁ!」


でも、こなちゃんの厚意がとても嬉しかった。



9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/16(木) 15:33:56.91 ID:/0CqP7fCO
さすがこなた


10 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 15:36:20.40 ID:9u4Ked2f0
―放課後

「お、お姉ちゃん!」
「ん?どうしたの?」
「あ、あの、あの…これ」
「…映画?私にくれるの?」
「う、うん!久しぶりに二人で観に行こうよ」
「へ~。ってこれホラーじゃない。あんたホラーダメだったんじゃないの?」
「あう!そ、それは…それは…」

…わかってる。つかさがわざわざ苦手なジャンルの映画に誘うような子だとは。
本当は勇気いっぱい出してるんだろうなぁ。健気というかなんというか。

「…わかってわよ。行けばいいんでしょ行けば」
「あ、ありがとうお姉ちゃん!」



…妹なのに、ちょっと可愛いと思ってしまった



11 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 15:40:05.27 ID:9u4Ked2f0
「う、うう…」
「だからあんた…ムリするなって言ったでしょ?」

つかさの顔が、酷いくらいに青い。
まぁ結構グロいシーンもあったし、ホラーというよりサイコサスペンスだったけど。
エチケット袋を何個消費したかもう忘れてしまった

「大丈夫?歩ける?」
「う、うん…」
「そ。じゃあ、ちょっと来て」

映画を観終わったあと、私は密かにあることを考えていた。
いつまでもこうじゃだめだ。つかさも、私も―
だから、つかさに伝えないといけなかった


「お、お姉ちゃん…ここ坂が…」
「うだうだ言わないの。ほら、あそこにベンチがあるでしょ?
そこまで上る!」
「ふえええ…」

下に、人がいないか気になってしまった…



12 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 15:42:34.82 ID:9u4Ked2f0
「ふぁ…」
「どう?ここの夜景」

そこは、学校から少し離れた丘。ここからは私達が住む世界を見渡すことができる
夜であれば、その美麗さにも拍車がかかるのだ

「きれ…いだね」
「でしょ?……つかさ、話があるんだけど…」
「う、うん?」

「もうさ、私に頼らないでほしいんだ」


「……え」



つかさの大きな瞳に、何かが滲んだ。



13 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 15:47:28.77 ID:9u4Ked2f0
また、だ
なんでいっつもこうやって妹をキズつけて
なんでももっとうまくできないんだろ…なんで

「…やだよ」
「え?」
「嫌だよぉ!そんなの!」


…なん…だと?


「ちょっつかさ!ワガママ言わないの!あんたもう18でしょ!?
これからはもう自分のことは自分でやってよ!」
「無理だよぉ!私…お姉ちゃん無しじゃ無理だよぉ!」
「何小学生みたいなこと言ってんのよ!」
「お姉ちゃんは、お姉ちゃんはずっと私より凄いんだもん!
運動だって!勉強だって!私だってたまには『お姉ちゃんに勝ちたい』
って思ってたんだよ!?」
「そ、それは…あんたの努力が…」
「お姉ちゃんにわかる!?双子なのに全然違うの!
そのせいで何度色んな人に比較されたか!『お姉ちゃんのほうは優秀なのに、妹さんはダメねぇ。双子なのに』って!
お姉ちゃんが頑張れば頑張るほど、私はどんどんミジメになるんだよ!」
「だ、だからそれは…」
「それでもいいと思ったよ!そうすれば、最初から楽になるもん!
最初からお姉ちゃんに敵わないって思ってれば気持ちも落ち着いたもん!」



14 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 15:50:24.38 ID:9u4Ked2f0
「……つかさ」
「……」

こんなつかさ、初めて見た。そんな、そんなことが、あったなんて…
私だって、つかさにこんなこと言いたくない。だけど、今私の言葉をつかさが受け入れたら、つかさはどうなってしまうのか。
そう考えると、言葉が続かない。

「……ごめん、ごめんねお姉ちゃん」
「つかさ…」
「こんな、こんなダメな妹でごめんね…。お姉ちゃんにこんな酷いこと言って…私、ほんとダメな妹で…」
「違う!違うのよつかさ!」
「でも…でもね

色々言ったら、すっきりしちゃった♪」



「………」


こいつ、どついたろか



15 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 15:55:21.88 ID:9u4Ked2f0
「ごめんね、お姉ちゃん。ワガママになっちゃうけど、もうちょっとだけ、お姉ちゃんに甘えて、いいかな?」
「あんたねぇ…」


結局、話はふりだし。でも、つかさのことを考えるとやっぱり無碍に断ることもできない。
甘えてるのは、むしろ私なのかもしれない。


「か、勝手にしなさいよね!た、ただあんたが好きにやって何かあっても、そこまで面倒見切れないからね!」
「お姉ちゃん…いいの?」
「だだ、だから勘違いしないの!好きにしろって言ってるのよ!まったくもう…!」

我ながら恥ずかしい。キチンと素直に言えばいいのに。
でも、私だって不器用なんだ。つかさを許してあげたんだから、いいじゃない。


こんなふうに 姉妹としてやっていこう
イナカのこの街で、別段楽しいことなんてないけど。
バカだし不満ばっかで、なにひとつ将来のこともわからなくて、
でも一つだけ二人で決められたから。


私達は、私達なんだ、って。



16 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 15:58:05.86 ID:9u4Ked2f0
「お姉ちゃん、ジュース買ってきたんだけど~」
「あ、ありがとう」
「あ…」
「ん?何?あ、黒酢ジュース飲みたかった?」
「う、ううん、どっちでも」
「いいって!私むしろ酢ダメだし!」


結局あれから一週間。あいかわらずこんなんですが…
一つ、違和感を発見した

「つかさ、そのヒザ、どうしたの?」
「え、あ…その、か、階段で…」
「気をつけなさいよね~。あんただって女の子なんだから」


―今、思えば

あの時、気づくべきだった



17 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 16:01:41.95 ID:9u4Ked2f0
「で、なんで私達はこんなとこにいるの」
「ほらかがみ~ん、ゼロ使の新刊出てるよ~」
「え、ほんと!?」
「かがみさん、泉さん、ハルヒの新刊また延期だそうです…」
「なにぃぃぃ…いつまで待たせるんだよまったくもう…」
「こなた、あんた何してんのよ?」
「いや~?私はラノベじゃなくてコッチ、に興味あるから」
「…またけったいな」
「泉さん、どうしてこの男性は裸で抱き合ってるのですか?」
「みゆきに見せるなぁぁぁ~~~~!!」



ズッ…


「…!地震!?」
「ええ!?こ、こんなとこで!?」



19 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 16:06:00.46 ID:9u4Ked2f0
「最近多いですね~」
「おぉ、みゆきさんナイス揺れ♪」
「どこ見てんだお前は!いいから外出るわよ外!」


階段を急いで降りて、私達は外に出た
上空を見上げると…何かが飛んでいたのがわかった

「なにあれ…?と、鳥?」
「んう…あれはF-22、ラプターだね」
「な、なにそれ!?つーかあんた軍オタ!?」
「最近のこと考えれば普通にわかることだよかがみぃ。みゆきさんも知ってるでしょ?」
「い、いえ…」
「ガガーン…」
「もう…バカはほっといて逃げるわよ!」


そう言葉にしたのに、私はそれとは逆のことをしでかしてしまった…



18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/16(木) 16:04:53.45 ID:kx0dAUnXO
割と文章上手いな
結構時間掛けただろコレ?


20 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 16:09:10.36 ID:9u4Ked2f0
>>18
とても即興です。リアルタイムです

それは、F-22とかいう戦闘機の編成から外れた、何かだった。
UFO?んなバカな。ただ、それがとても『速い』ことはわかった。
まるでキャンパスを彩る筆のような軌跡を描き、次々と敵機を撃墜していく。

「すごいですね…泉さん、あれはなんでしょうか?」
「え!?あ、あれはねぇ…えーと、キングゲイナーかな?」
「………」

おふざけはそこまでだった。
そのナンタラが打ち落とした機体が、こちらへゆっくりと落下していくのがわかった。

来る。
落ちる。
爆発する。


その三つの単語を思い浮かべた頃には、私の立っていた場所に爆風が吹き荒れていた。




21 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 16:12:13.85 ID:9u4Ked2f0
ゴォッ―!


音にしたらそんなもんだろうか。目の前が真白になったかと思うと、私の腕に生暖かいものが乗っていた。
なんだろう?これ?長い…曲がる…五つの突起…


「…ゲフッ!」


把握した瞬間、胃の中に溜まったものが一気に吐かれた。
腕。
腕だ。
さっきまで何気なく稼動していただろう、誰かの右腕。
根元からざっくりと切断されたいた。

ザワッ―

そして、私のありとあらゆる毛が逆立つのがわかった。
予感。悪寒。そして…寒気。

気が付いたとき、私は落とされたソレめがけ走り出した。

「かがみィ―!」



こなたの声は、半分聞こえなかった。




23 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 16:17:32.94 ID:9u4Ked2f0
ドォォォンッ―!!!


落ちた。爆発した。
伊勢丹のビルが、その分欠けた。
巻き起こる風で、私は思わず後方に転びかけた。

「…はぁ、はぁ…―!」

白煙が場を包み込む。周りにはまだ温かいであろう血液がびっしりとこびりついていた。

「はぁ……ッ?」

ふと、頬に何かが垂れるのを知った。指で拭うと、私の指は真っ赤になっていた。
頭に何か刺さったのかもしれない。だけど、今はそんなことどうでもいい。
白煙は徐々に風に攫われ、その中で一つの影がゆっくりと蠢いていた。




25 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 16:19:29.39 ID:9u4Ked2f0
煙が消えた、その先には―



「……おねえ…ちゃん」

いつもドジで、いつもバカで、


「ごめんね」

いつも迷惑かけて、いつも泣いてる…


私…こんな体になっちゃった……」


私の妹―柊つかさが立っていた。

抱きしめたつかさの心臓は、音がしなかった。




27 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 16:25:58.28 ID:9u4Ked2f0
「おはよ、お姉ちゃん」
「ごめんごめん!寝坊しちゃった!」
「だいじょぉぶだよ。ちょっと急げば…

私、がんばるから」


「あの日」からつかさは―

あいかわらずトロかった。

学校に着くには、(つかさが勝手に決めたことだけど)この長い並木道を歩かないといけない。

「ごめん…ごめんね」
「大丈夫よ。無理しないの」


「おはよ~かがみん」
「おっす」
「みゆきー、おはよう」
「……」
「みゆき。お・は・よ・う!」
「…っ!おはようございます、かがみさん」

みゆきは「あの日」以来、耳が遠くなった



28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/16(木) 16:27:38.14 ID:VGNX8gHnO
タイトルコールがNEEEEEEEEE
あそこが一番カッコイイのに!


29 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 16:31:48.36 ID:9u4Ked2f0
「いや~、そろそろ私らも進学だぁね」
「そだね~。こなちゃんはどうするの?」
「私?私バカだから~、義勇兵にでもなろーかな」
「あはは、こなちゃん女の子じゃない」
「あ、でも今はこのご時勢ですから、女性の方でも正式な軍でなければ試験は受けれるそうですよ」
「そ、そうなんだ…」
「今戦争中だしね~。私も一応格闘技できるし、割と天職な気がしてならないのだよ」
「そっかぁ、こなちゃん強いもんね」
「つかささんはどうするんですか?」
「私?私は…お姉ちゃんと同じ大学行きたいな…」
「…つかさ、かがみ結構偏差値いいよ。K義塾狙ってるみたい」
「えぇぇ!?」
「つかささんでは、少し厳しいかと…」

「おーっすつかさ、ちょっと屋上行こ」
「あ、わかった~。じゃあ二人とも、またあとでね」
「あぅ~、私の嫁が最近シスコンになってってるよ~」
「ま、まぁいいじゃないですか…」

私とお姉ちゃんは、「あの日」以来、一緒にいることが多くなりました。



30 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 16:41:27.19 ID:9u4Ked2f0
■規制防止の時間つぶしのらきすた読んでおります。。。

「でね、私最終兵器になっちゃったんだけど」
「そ、そう…。それで、なんなの、それ?」
「ごめんね…偉い人に説明してもらったけど…難しいコトバが多くて…ごめんなさい」
「いやいや、ってゆーかつかさ、あんたそれ治るんでしょうね?」

「……ッ!    きくのわすれちゃった」

「忘れるなよ」
「今度編隊時に聞いてみるね」
「…教えてくれるんだ」
「わかんない。でもみんなイイ人だから…」
「―つーか、なんなのよそれ!?説明いい加減で勝手に人の妹兵器にして!!ふざけるのもいい加減にしてほしいわよ!」
「だだ、だって…軍の人は親切なんだもん…
きっと偉い人の命令で仕方なく私に良くしてくれてると思うの。
私、気が付いたらもう自衛隊のほうに移されてて、直接私の体こんなにした人、会ってないから…」
「そ、そう…ごめん」

まただ。一番キズついてるのはつかさなのに…
いつものこの子の様子を見てるとつい忘れてしまう

「でね、兵器になるには多少身体を作っておかなきゃいけないって言われたの。
だから、バス通学止めて歩こうって決めたの」
「そう、なんだ…」



31 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 16:52:07.47 ID:9u4Ked2f0
結局、それ以上は聞けなかった。
つかさも言いたくないだろうし、言えないだろうから。

そのまま、私とつかさは下校の時間を迎えた。


♪♪♪

「つかさ、携帯携帯」
「あ、はい。あ…」
「あれつかさ、あんたの携帯、そんなだったっけ?」
「え、あぁ…これ支給品なの。有事のとき連絡取れないと困るっていうから。迷彩カラーなんだよ♪」
「あぁ…会社員も持ってたりするわよね」

そうやって、一例を持ち上げて現実を拒絶する。
そう、専用の携帯なんて今時珍しくないのだ。
つかさは…普通なんだ、そうだ、そうに決まってるんだ。

「じゃあ、お姉ちゃん

    ちょっと、いってくるね」
    
「ちょっと」何をしてくるんだろう

「心配しないで」

どうすれば「心配しない」でいることができるのだろう
誰も答えては、くれなかった―



32 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 17:03:12.76 ID:9u4Ked2f0
「粕日部空襲」から一週間がたった

死者 二万三千五百十一人
行方不明者 五万六千百七十八人

自衛隊戦闘機 12機墜落
国籍不明爆撃機 21機墜落
護衛戦闘機 7機墜落

いずれも市内におちた


爆撃機とかの墜落のまきぞえで、亡くなった人の数は
どのくらいになるか、見当はつかない

そのすべては つかさが おとした

私以外誰も知らない。あとおそらく、国の偉い人と
自衛隊の一部の人、それに、あやののお兄さんは入っているのか…

この空襲は、しばらくTVの放送を支配した
明らかに非現実的な現実に、私は無気力感を脱せなかった
今まで映画の中だけかと思ってた日常が、今現実に現れている

あの日つかさと観た映画だけは、現実にならないで欲しい
そんな下らない欲求が、私の胸の中に残っていた



35 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 17:13:43.58 ID:9u4Ked2f0
つかさが海外派遣にいった。「あの日」からあわせて2週間後のことだった。
それから3日くらいか…なんの音沙汰もない。
受験勉強なんかに身が入るわけもなく、私はただただベッドを寝転がる日々を過ごしていた。

「…はぁ、私、何してるんだろ」

寝ぼけ眼を擦り、携帯を手探りした。久々に触った気がする。
……つかさからメールが届いていた。日にちは昨日の晩。
相変わらず、こういうことは忘れないのよね。

『こんにちはお姉ちゃん。この前は色々聞いてくれてありがとう。
アサもチコクしそうになったのに、やさしくはげましてくれてうれしかったです。
いつものお姉ちゃんなら怒るかと思いましたが、お姉ちゃんは最近優しいです。
あと、毎日私のお弁当を食べてくれてありがとう
でも、明るく振舞うお姉ちゃんを見てると心配です

消えてなくなってしまいたくなります―』


心臓の鼓動が、少し早くなった。


『なんで私、こんなことになっちゃったんだろう。私、何か悪いことしたのかな?
何かのバチが当たったの?例えばみんなに優しくしてもらってばかりいて、何一つ返せない弱い私へのとか。
最終兵器のことは誰にもヒミツなので、誰にも相談できなくてつらかったです。
そのせいでバス通学をやめて、お姉ちゃんに迷惑かけちゃいました、ごめんね』




36 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 17:24:47.74 ID:9u4Ked2f0
『ほんとは、私お姉ちゃんに期待してたんだ。こんな弱音ばっかり言って、悪いことしてる私のことをしかってくれるって。
でも、お姉ちゃんは優しいから、あの日ウソをついたよね。ごめんね、嬉しかったけど、悲しかった…

だから

もういい

です


何書いてるんだろ、私…こんなこと書きたくないのに…
ごめんねお姉ちゃん。私強くなるから。もっともっと、強くなって、だから…

私のお姉ちゃんでいてくれて ありがとう』


「…つかさぁッ!!!」


私は、どこへともなく走った。最後の一文『ごめんなさい』を見ずに…。




38 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 17:33:12.28 ID:9u4Ked2f0
「はぁ…っ、はぁ…っ!」

どれだけ走っただろう。わからない。
いつもは見慣れた道のはずなのに、夜の闇が私の先を閉ざす。
それと同時に、私と「つかさ」の未来も閉ざしてしまいそうで、尚更恐かった。


ヒィィィン…


耳鳴りがした。耳で感じるものではなく、脳に直接送られるナニカ。
これは…なに?なんなの?
私は走るのを止めて、歩いた。

ヒィィィン…

ヒィィィィン…

音が段々と大きくなる。それにあわせて、私のいる位置が、公園に近づいている。

ピキィィィンッッ!!

「―くっっ!!」

痛い。風鳴りのような音だったソレは、刀を研ぐような耳障りなものになった。
―と、頭上に何かを感じ取った。何かが私を撫でる感覚。
風か?わからない。だけど、何かが上にある。
躊躇わなかった。私は、見上げた。




39 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 17:43:28.68 ID:9u4Ked2f0
…とりはだが立った。
背中から突き出ている金属の…板のようなもの。それらは何本も重なって斜線のように生えており、さながら羽を模倣したかのような形だった。
傍にある電柱の上から、音もさせず、降りてくることのできる、ナニカ。
すべてが、つかさの肌を突き破って「生えて」いた。
瞬間、私は、理解した―

ガスッ

あ、落ちた。

「や、やだお姉ちゃん…、見たのっ!?」
「いや、見て、ないけど…(ピンク、だったような)」

背中を丸めて、つかさは恥ずかしそうに顔をそむけ―

血まみれだった。つかさの華奢な背中は、何かで染め上げたように真紅に染まっていた。
この独特な嫌な臭い…血、だろうか。解けかかった肩のブラ紐のところだけ、少し肌色をしていた。

「…た、ただいま」

振り返りながら、つかさはそう呟いた。
いや、しかし…その。なにも言いたくなくなってしまった。
あんなたかだかメール如きで、あんたの姉をやめるなんて、さらさらないとか、心配したとか、

私、つかさに何を言えばいいんだろう?



41 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 17:53:44.73 ID:9u4Ked2f0
「  バ  カ  !」


そんな言葉が、出た。あとは、感情に任せたからあんまり覚えていない。

「あんたねぇ!そんな格好で何出歩いてるのよ!
不審者に見つかったらどうするの!?」
「ご、ごめ」
「ごめんじゃすまない!」
「ごめんなさい!門限に間に合わないと思って…つい飛んで帰って来ちゃったの…」

…確かにその通りだが。

「ごめん、まだスピード調整がうまくできなくて、でもでも、今日はマッハ2くらいで」
「つかさ!」
「うっ…!ご、ごめんなさ…」

「…お、おかえり」


「た…ただい…まぁ…」



ただその言葉を言ったのは、覚えていた。



42 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 18:03:33.49 ID:9u4Ked2f0
「つかさ…落ち着いた?」
「うん、ごめんね…」

しばらくつかさは泣いてしまい、仕方なく胸を貸してやることにした。
ひとしきり服を濡らしたあと、つかさがゆっくりと顔を上げた。
そして、つかさの落ち着かない表情を見て、やっとわかった。

「最終兵器って、結局どーゆーことなの?」

私が現実から逃げることは、つかさをキズつけ、ひとりぼっちにすること。

「詳しくはヒミツなんだ…」
「そりゃそうよね…」
「ただね、お父さんお母さんとか、上のお姉ちゃんとかにも中々言い出せなくて、それで毎日家族と過ごすのが凄いつらかったんだ」
「そっか…。そうよね。それでつかさ」
「…言わないよ」
「え?」




44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/16(木) 18:06:58.93 ID:NmepZF8q0
なんか真剣に読んじまった


46 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 18:13:15.77 ID:9u4Ked2f0
「言わないよ。お姉ちゃん以外には。
だってこれ以上知られると…みんな殺されちゃうもん」

そう静かに言ったつかさの目は、笑っていなかった。
改めて私は、自らが知った禁忌の重大さに気が付いたのだ。

だから、私はつかさをぎゅっと抱きしめた。
知ってしまった。事によっては私の口が塞がれるかもしれない。
だけど、それがなに?そんなの、恐くなんかない。
知った以上、これは私とつかさの「ヒミツ」だ。
二人で共有していくんだから、ふたりで生きていこう、そう決めた。

「ごめんなさい…お姉ちゃん…うっ…くひっ…」

つかさは家の前で、もう一度泣いた。




43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/16(木) 18:05:33.23 ID:GPZBuSmz0
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45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/16(木) 18:13:02.94 ID:ruHE1OK50
>>43
ぐっどじょぶ!!


48 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 18:23:08.50 ID:9u4Ked2f0
>>43
おぉすげえ( ゚д゚)!!

それから私とつかさは、二人だけのルールを作った。

たとえば
「こなた達や家族に知られないようにするにはどうするか?」
とか
「出撃のときの服や下着の換えはどうするか?」
など。
私のを使えば?と提案したら、なぜか赤くなって「サイズが合わないよ…!」
と何故かキレてた。乙女心はよくわからん(私も一応乙女だが)。

あの日から私は、つかさからのメールをちゃんと読むことにした。
口ベタなつかさにとっては、あのほうが本音であると認識したからだ。
前のメールには、絶対口からは言えない大切なことが書いてある。

笑ってもいいです。
ほんとは、もっとこの幸運の星の人にとって重要なことを
ただ不器用に 前向きに考えて生きていこうと決めた…


どうか
笑ってください―



『お姉ちゃん
私、成長している。』



49 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 18:27:31.36 ID:9u4Ked2f0
「お姉ちゃん~、おふぁよう…」
「成…長?」
「ん?どかした?」


成長ねぇ…。意味わかんないのでこなたにでも聞いてみるか。


「ほほう、つかさがそんなことを…」
「って言っても、もう18なんだし成長するとこなんてないでしょうに」
「いえいえ、女性は20代からでも背が伸びたりするんですよ、それには」
「成長っていったらそりゃ~

おっぱいだね」

「お、おおおおおぱ!!?」

…なななな何言ってんだこいつは!!!

「だってさ~、つかさって小ぶりじゃん。18でももう少し成長する兆しがあってもいいじゃん」
「こ、小ぶりて!見たのかい!」
「海行ったときに、うん」
「あぁ、あのときですね。楽しかったですね~」
「いやそこ、同調するとこじゃないから」

つかさが…?ま、ままさかねぇ…あ、でもうちの家系みんな着やせするし…
いやいや!姉としては負けるわけには…って!なんの勝負だなんの!

■飯の時間なんでちょっと時間置きます。



53 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 19:16:44.32 ID:9u4Ked2f0
昼休み―

「あれーつかさ?お弁当残してるよ?」
「どうかしたんですか?最近食が細いようですが…」
「だだ、大丈夫だよ二人とも~」
「そうは見えません…。さきほども立ちくらみで保健室でお休みになられていたじゃないですか」
「そうだよ無理はいくないよ。最近かがみと食べないしさ~。ケンカでもした?」
「ち、違うのこなちゃん…。ちょっと、ダイエット中なの」

我ながら、苦しい言い訳に聞こえました…。

「むぅ…」

こなちゃんの顔が、ちょっと恐いのは黙ってました。



54 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 19:27:02.30 ID:9u4Ked2f0
「あーあ」

私はこんなところで何やってるんだろう。
よくわからないあ。ただ、なぜかつかさの前に出にくい。
やっぱり今朝のことがあったからかな?
いやでもなぁ…つかさだって女の子なんだし、自分の身体のことくらいしっかりしてるだろうし。

……
モヤモヤする。どうしたものかな。

「かがみぃ」
「どぁぁっ!?」
「こんなとこで何してんのさ~?」
「あ、あんたには関係ないでしょ!そっちこそ、何の用よ?」
「あれれ~?そんなぞんざいな態度しちゃっていいのかなかな?
愛しい妹のことを教えてあげようと思ったのに…♪」
「つかさの…こと?」
「うむっ!かがみ…つかさに何か言ったっしょ!?」
「え…な、なにを?」
「どーせ『つかさのデブーデブー。この丸太体型!』とか言ったんでしょー!?」
「…ちょっと待て。お前私にケンカ売ってんのか?」
「いやだってさ、つかさ『ダイエットしてるの』とか言い出したんだよ?かがみと違って余分な肉ついてないのに」
「な・ん・だ・と(ギリギリ)」
「痛い痛い!アイアンクローはやめてぇぇぇ!!!」



55 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 19:37:12.81 ID:9u4Ked2f0
「はぁ…助かった。兎に角さぁ、つかさ最近変なの。
最近ずーっとご飯食べないんだよ?フラフラするわ顔色悪いわで。
最近一緒にいるのに気づいてなかったの?ダイエットにしちゃ変だと思うわけよ」
「……そ、そうなんだ」

ゴォォォォ……ッ

「おほー、自衛隊の編隊だ。この前あんなことあったから警戒してんのかなぁ」
「あ、あぁ…そうかも、ね」
「この前さ~、その戦闘機ですっごいの見たの。
一つだけ独自で動いててさ、しかも単機で敵機をフルボッコにしてんの」
「え、ああ~ああ。どのくらいだったっけ?確か私くらいじゃなかったかなぁ?」
「いや~?私が見たときは…そうだなぁ、岩崎さん?いやいや、それ以上に大きかったんだよね」


…ドクン。
何かが、心臓を掴んだ。その、こなたの何気ない一言で。
昨日見たメールが、頭の中を駆け回る。

『お姉ちゃん 私、成長してる』



56 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 19:47:23.55 ID:9u4Ked2f0
悪い
予感がした。

こなたによれば、つかさは教室にいるって。
一人にして欲しい。そう言ったらしいので、こなた達は先に帰った。
つかさの教室。そのやけに広く感じた部屋の片隅で、つかさが机に突っ伏してた。

「……ッ!!お姉ちゃん!その…ごめんなさい…我慢、できなくて…」
「あ、あ、あんたねぇ!」
「お姉ちゃん私ね…経験すると成長するの…」

上目遣いでそう言った。だから、…こなたのせいじゃないけど、視線が胸に行ってしまった。
つかさはすぐに気づいたのか、

「はぅ、ごめんね!こういうところは全然育ってなくて!」
「いやいや!別に謝らなくていいから!」
「お姉ちゃん、聞いて。
…私、強くなってるの…。どんどん、どんどん、
兵器として。この前お手伝いに行った戦争で私…ほんの一撃で…」

嫌な予感は、これだった。だけど、話してくれたおかげで、私の緊張もどこかへ消えてしまった。
だから、つかさを不安になさせないよう、私はつかさをきつく抱きしめた。

「もういいって。黙ってなさい」
「お姉ちゃん…私、何も食べなければ…成長止まるんじゃないかって」
「もういいの!」
「どうしていいかわからなくて…バカだから、私ができそうなのってこんなことしか…」
「つかさっ!」



57 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 19:57:11.74 ID:9u4Ked2f0
「自分の身体なのに…一体、なんなんだろ…」

夕方の教室で、私達は抱き合った。
せいいっぱいしがみついてくるつかさの力は、やっぱり弱くって…
小さく壊れそうな気がして…鼻をくすぐるつかさの髪の匂いを吸い込むと、
胸がギュッと苦しくなった。なんだか…

(どうすりゃいいんだこういう時…)

「…お姉ちゃん、ごめん、ちょっと離して」

つかさが、優しく私の胸を押す。
やっぱり、この雰囲気に耐えられなくなったとか?

「私…かっ、監視されてるの」
「……は?」
「なんか最近わかるようになったの。相手は気づいてないかもしれないけど、私わかっちゃうんだ」
「どど、どこの誰が!?」
「ん~。あっちの500m先に三人くらい」
「そんな精密に!?なな、なんでよ!?」
「だって私…最終兵器だし」
「監視されて、なんでそうあっけらかんとしてるのよ!?」
「べべ、別にそんなことないよ。お風呂入ってるときとかさ。死角にいるようにしてるから平気。多分相手も仕方なくやってると思うし」
「仕方なくって…あんた」



58 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 20:07:14.77 ID:9u4Ked2f0
「だって、戦争だもん。私が我慢すれば、いいの」
「バカ!それで良くなっても、あんたがそうやって泣いたんじゃ意味ないでしょうが!」
「お姉ちゃん…」
「…逃げるわよ」
「え?」
「監視されてるんなら逃げる!これ鉄則よ!」
「う、うん…でも、どこに逃げるの?」
「そりゃ勿論!」

私はつかさの手を引いて、駐輪所まで連れていった。
そして、つかさを後ろに乗せると、気合を入れてサドルに跨った。


「あんたが監視されないとこまでよ!」


ついハズミで出た言葉が、私達の運命を少しだけ変えた。
今思えば、この時が最後のチャンスだったんだ…



59 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 20:18:09.49 ID:9u4Ked2f0
私が思っていた以上に―
事態は想像以上にシンコクで…
それ以上に…

ザンコクだった―


「相手の位置確認。43°11'14.8"N 140°59'45.1"E
南南西に53.4km/hで移動中。お姉ちゃん、250m先一通を右折ね」
「りょ、了解!」

私達は、「何か」から逃げていた。私にはそれがなんであって
どこにいるのかなんてわかりはしないけど、つかさは「わかる」と言った。


(つかさ、本当に成長してるのね…)

最初は信じられなかった。だけど、逃げるにつれつかさの精度は
どんどん緻密になっていった。そんなことより、さっきから
つかさの様子がおかしいことに、気づいた。


(どうしよう…やだ、やめて…こんなときに自動防衛弾が…)

「つかさ!どうかしたの!?」
「ううん!なんでもない!それより前前!車来てる!」



60 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 20:28:21.40 ID:9u4Ked2f0
いつも監視されてる自衛隊の人ならなんとか逃げ切れると思ったのに…
監視してる人、多分日本の人じゃないかも…
もうやめて…私に近づかないで…我慢できなく…

「くっ…あっ…ああっ……!」
「つかさ!?」
「だめぇっ!後ろは見ないで!…おね、がい」

ビキッ…ボゴッ…

「みな…い…で…」

カラン……

―ズァァァァァッ!!!!!



――――――――ドンッ


「な、なに今の!?」
「逃げて、お姉ちゃん!振り返らないでそのまま逃げて!」
「う、…うん!」


そして私は、息が切れても、止まらずに走り続けた。
結局、あの爆発の音がなんなのかは、今でもはっきりとはわからないでいる。



62 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 20:38:17.84 ID:9u4Ked2f0
「はぁ…はぁ…つか、さ…」
「お姉ちゃん…あ、ありがとう。大丈夫…もう、いなくなったから…」
「どうする?この後…海外にでも逃げよっか、あはは」
「あ…お姉ちゃん、私もう海外は…ん」
「なに、どうかしたの?」
「ごめんお姉ちゃん、ヘリさんが来たみたい」
「えっ…!ヘリ?」
「まだ気づいてないよ。…殺られる前に、殺らないと…」
「つか、さ?あんた今、なんて?」
「…………――ッ」
「つ、つかさぁ!」

つかさの瞳孔が、一瞬開いたように見えた。あれは人には出来ない業かもしれない。
そしてなにより…

つかさから、紛れもない『殺気』を感じてしまったから。

「あんた…今何しようと…!」
「何って…だって、私、兵器だよ?兵器は…破壊して、殺すモノ、なんだよ?」
「……ッッ!!」

「私…もう… 死んだほうが いいのかな…」



65 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 20:49:00.07 ID:9u4Ked2f0
「…お姉ちゃん、いきなりぶつなんて酷いよぉ」
「バカ!バカバカ!死ぬなんて簡単に言わないの!」
「…ごめん、なさい」
「……わ、わかればいいのよわかれば」
「ねえお姉ちゃん?」
「この街、きれいだよね。
平和だよね。生まれてずっと住んで、好きに友達がたくさん住んでいて…
でもちょっと切なくて…。この街だけだったら、どうする?…なんてね」


パンッ

―おねえ、ちゃん?
―っく、うっ……うっ…
―おねえちゃん…ごめんなさい…ごめん、なさい…
―うわあああっっっ!!!
―泣かないでよ…お姉ちゃん…
―私ね…お姉ちゃんのこと、ううん、私達の街に住むみんな、守りたいんだ
 こんな妹で、ごめんなさい
 でも、好きだから。ごめんね。もう、心臓の音しないけど、
 …さっきなんて頭がボーっとなって、泣いちゃいそうなくらいドキドキしてたの
 本当は、あんなこと言いたくなかったの。でも、そうでないと消えてなくなっちゃいそうで、
 それでも…私は…『生きて』るの。生きていたいの。お姉ちゃんの妹として…



66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/16(木) 20:56:53.04 ID:TboGXC5OO
泣きそうだ


67 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 20:58:16.41 ID:9u4Ked2f0
―…私が、私が仕事から帰ってきて
―…??
―いつものように、あんたがお母さんと料理作ってさ
―うん、うん
―いのり姉さんとまつり姉さんと、お父さんと、みんなでご飯食べてさ
―うん
―それで、あんたと、私の、彼氏見せっこしてさ。彼氏の悪口言い合ってさ…
―あはは
―それで、お互い大変だねーって、それで気分晴らしに、ここ来て
……あの頃が懐かしかったなぁって、あの頃は戦争で大変で、
それに比べたら今は幸せだなーって、…ここで、言いたい
―うん、そう、だね…。…お姉ちゃんの心臓、トクントクンって鳴ってる。お姉ちゃんの心臓ね、普通の人とちょっと違うの
―…どう、違うの?
―…かわいいの
―なによ、それ

そして、私達はそこを降りた。いつか、このドタバタも、
大人になって笑って話し合えるような、そんな未来を、二人で想像しながら…

私達の、ちょっとした冒険は、終わった。



68 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 21:08:14.71 ID:9u4Ked2f0
「…ん、どうかしたの」
「あのね、勢いでこんなとこまで来ちゃったけど…どこで泊まればいいかなって」
「あ~。こなたじゃないけど、ネット喫茶とかかなぁ」
「着替えとか…」
「着替え?」
「制服も汚しちゃったし…その、下着も…」
「……はぁ」
「い、今すごい私のことバカにしたでしょぉ」
「うん、した」
「はっきり答えたし!」
「確かに、制服のままだと何かと困るわね。私は普段着だからいいけど」
「それに…それにね。
 みんなに…さよなら…したいから…」
 
私達は、2時間後に駅の前で待ち合わせた。


そして、つかさと別れた―




69 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 21:18:39.38 ID:9u4Ked2f0
ある日、つかさがこんなことを聞いてきた。

「あのね、お姉ちゃんの初恋って誰??」
「…は?」


…何を言ってるんだあんたは…



「おう、柊の妹じゃねえか」
「こんにちは、つかさちゃん」
「こんにちはぁ。あのあの、お姉ちゃんの初恋って、誰だか知ってます??」
「柊の初恋?あ~、そうだなぁ。誰だったかなぁ」
「みさちゃん…」
「ぁんだよあやの」
「………」
「…ん?わーってるよ。あー、なんだっけ、初恋だっけ?」
「は、はい!」
「それはな…妹…柊の初恋は…実はあたしなんだ!」
「……え!!?」



70 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 21:28:45.38 ID:9u4Ked2f0
「そ、そそそ、そうなん…」
「なわけねーじゃん!あはははは!!」
「みさちゃんったら、もう」
「……えぇぇ」
「まーでも、妹って結構姑くせーとこあんだな」
「ええ!?ななんで姑?」
「だってよー、彼氏ならわかっけど、姉の初恋聞きに来るなんて、なーんか陰謀を感じるしなぁ」
「別に…単なる好奇心かもしれないわよ?」
「ま、そういうことだからよ!ンなこと気にすんなって!な?」
「は…はい」
「個人的には~、あたしはお前の初恋が気になんだけどな~」
「…あは、あははは…」


「なぁ、あやの、やっぱり」
「ダメ!…もう、あれは終わったことなんだから…」
「わわ、わかったよもう…。はぁ」



71 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 21:38:22.71 ID:9u4Ked2f0
最近、つかさの「出撃」が多くなった。
なので、「出撃」じゃあんまりだろうから、代替の言葉を二人で考えていた。

「ん~、仕事とか」
「なんか違和感があるような…」
「お勤め…」
「なんだか、水商売に聞こえなくもないよね」
「ワーク、ジョブ、ビジネス」
「ええ、英語はやめて~。私英語苦手なの~…」
「じゃあどうしろっていうのよ」
「う~ん…そうだなぁ……そうだ!」
「なに?」
「ゆたかちゃんのお友達…みなみちゃんだっけ?あの子犬飼ってるよね?」
「そうね。それがどうかした?」
「それで閃いたの。『お散歩』ってどうかなぁ?」
「…あのねぇ…遊びに行くわけじゃ…」

♪♪

「あ…ごめんお姉ちゃん『お散歩』行かなきゃ」
「そ…そう。頑張ってね」
「うん。行ってきます」

双子として…姉妹として過ごしてきたつかさ。
だけど、私はあの子のこと、何にも知らない。
カチューシャが好きで、料理以外は何でも不得意で、
ちょっと負けず嫌いで、白い色が好きで、最終兵器で、心臓の音がしなくて、
つかさが見てる戦場とか、成長してるつかさの身体のこととか、そして…

―私のたった一人の、妹。



73 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 21:48:23.36 ID:9u4Ked2f0
銃弾。それだけがそこに鳴り響いていた。
名前など知る必要のない一つの国。そこでは今起きている大戦の真っ只中だった。
あるものは撃ち、あるものは撃たれ、あるものは散っていく。
疲弊と硝煙だけが渦巻くこの戦場で、戦士達は束の間の休息を待つ。

……ィィン

音がした。何かが、風が、過ぎ去っていくような無機質な旋律。

…ィィン

「……ここ、かぁ」

彼女は、そこに舞い降りた。

「Goddes...?」

名も無き兵士が、ソレに呼びかける。

「Shall I shoot it!?」
「Wait...She's crying」
「Hey! Are you a DEVIL or GODDESS!?
I'm going to shoot you!You hear!?」
「No,No!You'll die!!!」

ソレは、兵士達の喧騒に、涙を流して答えた。

「……ごめんなさい。英語、わからないの…」




74 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 22:00:09.55 ID:9u4Ked2f0
そして、ソレが見ていた景色は、灰になった。



先ほどまで喚いていた兵士は消え、
宅地の残骸も、砂すら残さず、

ソレが放った光で、すべては無になった
無に還った
存在がかき消えた


全部、死んだ。


ソレ以外が。



75 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 22:08:09.25 ID:9u4Ked2f0
「はぁ…」

ここんところ、暑さが続くせいかどうにも気だるい。
それもこれも、つかさが以前言ったことが理由だ。
初恋?私の?そんなもの知ってどうしたいんだか?
好きな人でも出来たのだろうか?
それで私を参考にでもしたいんだろうか?はて…
さっぱりわからない。
確かに、そりゃまぁ私だって恋の一つや二つ経験はある、が―

「…思い出させないでよ」

忘れたい思い出だ。今思えば、よく今も仲良くしていられるものだ。
それ以来、恋愛に億手になったのはいうまでもないんだけども…

「お姉ちゃん、帰ろ?」
「あ、うん。そういえば、こなたは?」
「なんか、用事があって先に帰ったって」
「あぁ、そう…」

こなたがいないのが、ちょっと残念だった…。



76 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 22:17:38.23 ID:9u4Ked2f0
「それでね…自衛隊に新しい人が配属されるんだって。女性みたいで」
「へぇ…女性も駆り出されてるんだ」
「っていっても、こなちゃんが前言ってた義勇兵っていうみたいだけど」
「直接戦争に関わらない人ってこと?」
「んー、わかんない。情報とかを自衛隊に教えるとかそんなかんじだったかなぁ」
「それ義勇兵って言わなくない?」
「え、そ、そうだっけ…」

交差点まで、他愛のない話をしていた。
ただ、気づいてなかった。すぐ目の前に大きな水溜りがあることを。
ようやく知ったのは、トラックがそこを横切るときだった。

「危ないつかさ!」

咄嗟に私は、つかさを引き寄せた。間一髪…つかさに水はかからなかった。
そして…

私の目の前を…
あの人が、通り過ぎた。

「……あ」

―なんて、他人の空によね、きっと。

(お姉ちゃんの心臓、早くなったような…)



77 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 22:32:30.78 ID:9u4Ked2f0
「かがみちゃん…だめだよ、こんなこと」
「お兄さん…わたし、わたし…」
「俺には…好きな人が…」



―ッ!!!

その日、起きたときに顔が熱かったのは、夏の日照りのせいなんかじゃなかった。
ってええええええ!!!なんつー夢を見てるんだ私は…

「はぁ…未だにあのこと引きずってるのか、私は…」

もうあれは、終わった恋なんだから。
忘れてしまったはずなのに。あの妹のせいで。

「ったく…女々しいったらありゃしないわ」

「お姉ちゃーん、ご飯~」
「はいはいー!今行くわよー!」


でも、やっぱり夢のことが気になってしまった。



78 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 22:42:22.08 ID:9u4Ked2f0
「おぉ、柊、何見てんだー?」
「うわわわわわ!!?」
「おぉー懐かしい。これあたしの中学の陸上の大会のやつじゃん!」
「それって、4年くらい前だったかしら?」
「いや、その…」
「おーおーなんだぁ?ピチピチだったあたし見て欲情してんのかー?」
「4年経っても全然女ッ気のないあんたにどうやって欲情すんのよ」
「あやの~、柊が心無い言葉を浴びせる~~!!」
「まぁまぁ、よしよし。それ…みさちゃんの応援のときの集合写真よね?」
「う、うん…。押入れ整理したら…出てきちゃってさ…」
「…柊ちゃん、誰、見てたの?」
「え…!?」
「そこには、みさちゃん、私、柊ちゃん、それに…」
「なななな何言ってんのよ!?別に誰か見ようとして見てたわけじゃないんだからね!」
「…なら、いいんだけど」

「…やっぱり、峰岸は鋭いな…はぁ」



80 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 22:52:55.40 ID:9u4Ked2f0
あぁ…もやもやが消えないまま放課後。
忘れようとして、忘れようとして、気が付いたらあの写真を手に取っていた。
あの人と私が写っている、唯一の写真。
この人の顔を見る度に、胸が痛くなる。
あのとき、あの横断歩道で見かけたのは、やっぱりあの人だったんだろうか。

「…ぇちゃん」

なんでこんな終わったことでウジウジ悩まないといけないんだろう。
私が不安な顔してたら、つかさに感づかれちゃうかもしれないのに。

「…ねえちゃん」

「お姉ちゃん!」

…ッ!!

「な、なに?どうかした?」
「もう…さっきから上の空だよ。大事な話があったのに…」

♪♪

「あ…『お散歩』の時間みたい…行かなきゃ。はぅ、スクランブルだよ…」
「は、早く!あの空家のところで!」



82 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 23:04:30.81 ID:9u4Ked2f0
「わ、わかった…ただ、は、恥ずかしいから…見ないで、ね」
「う、うん…」

こんなときでも、どっか女の子っぽいのが少し羨ましい。
つかさが空家まで走った瞬間―

ドシュッ―!

まるでミサイルでも打ち上げたかのように、つかさは飛躍した。
辺りはつかさの放った衝撃で軽い爆発に巻き込まれた。

「…だ、誰か倒れてる!」

煙の中心地か。爆発の衝撃で倒れたのだろうか。
蹲る一つの影に、私は駆け寄った。

「だ、大丈夫ですか?ケガは?」
「…く、…痛ぇ~」
「……ッ!!」

その声は、聞き覚えがあった。忘れようとして、最近また思い出してしまった―

「あ、かがみちゃんじゃないか」
「お兄…さん…」

その人は、あやのの彼氏でもあり…私の初恋でもあった。

■あ、そういえば兄の名前なかったよorz




84 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 23:13:31.87 ID:9u4Ked2f0
「いや~、久しぶりだね、かがみちゃん」
「お、お久しぶりです…」

胸がドキドキいってた。おまけに顔もまともに見れない。
どうしちゃったんだ、私は…

「しばらく見ないうちに大きくなったなぁ。うん」

そう言ってはにかんでみせた。
やめて、笑いかけないでください…

「お兄さんこそ、大学はどうしたんですか?」
「うん?あぁ、そういえば言ってなかったか。
実は俺ね、自衛官に志願したんだよ」
「自衛…官ですか」
「勿論、みさおやあやのには話したよ。かがみちゃんだけ
最近会ってなかったから言えてなかったんだ」
「そう、なんですか…」
「まぁ自衛官っていってもさ、直接戦場に行くのかもわかんないしね。
そういえば…妹さんいたよね?…えっと」

ここで、私は邪なことを考えた。自衛官であるなら、
つかさと接触する可能性が高い。それに、つかさとお兄さんは
小さいときに一度しか顔を合わせていない。だから…

「まことです」
「あぁ、まことちゃんだったっけ?もう明日から行くから挨拶できないけど、よろしく言っておいてくれるかな?」
「はい、わかりました…」

そこまで話して、私はお兄さんと別れた…



85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/16(木) 23:14:57.05 ID:mDxU8qKg0
そういやちせとつかさってキャラとか性格とか似てるよな
違和感0


87 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 23:23:00.88 ID:9u4Ked2f0
「お姉ちゃん、ゲーム一緒にやろうよ」
「あぁ、いいわよ。首領蜂-大復活-、シューティングだけど、どう?」
「やってみるね~」

……ドカーン

「はぅ~」
「…3秒で撃墜ておい。あんた兵器でしょうが…」
「むむ、難しいよぉ」
「じゃあ、これは?ガンダムVSガンダム」
「私、この赤いのでやるね」
「ジャスティスねぇ…じゃあ私はフリーダムで…」

……ドカーン

「はぅはぅ…」
「私ノーダメなんだけど…。あんたゲーム下手ねぇ」
「も、もっと簡単なの、ない?」
「もう…ミンサガでいい?」
「うん!RPGなら得意だよ~。こなちゃんに経験値上げに数時間やらせてもらったのぉ」
「鬼かあいつは…。あとサガは無闇に能力上げちゃダメだからね」



89 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 23:32:54.42 ID:9u4Ked2f0
…力がアップ! 魅力がアップ! 器用さがアップ!

「…楽しい?」
「うん、たのしい」

…こんな作業のどこが面白いのかわかんないけど、こんなんでいいのね。

「あ、これ知ってる!下の選択選ぶと武器もらえるんだよね」
「あぁ、それはリメイクで改変され…!ちょっ!待て待て!」
「はぅ…吹雪で全滅…」
「ったくもう…ちょっとジュース持ってくるわ」
「うん」

1時間の労力がパー。まぁつかさは気にしてなさそうだったな。
えっと、つかさはウーロン茶でよかったかな…と
上げすぎで最終試練出さなきゃいいんだけどね…


「つかさー、入るわよー」



91 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 23:43:08.47 ID:9u4Ked2f0
扉を開けたとき、つかさは泣いていた。
手にコントローラを持ち、相変わらず能力上げを繰り返しながら。

「…つかさ!?どうしたの?」
「え?あ、あれ??どーしたんだろ、なんで涙が…
ご、ごめんね、ビックリしたよね。私もビックリしたけど…
なんか、なんかね、これ…私と、同じみたいで…」


画面上では、戦いにより強くなっていったキャラが、
沢山のモンスターを1ターンくらいで倒していた。
もっと強い技を閃いて、連携もして、どんどん、強くなっていった…
つかさの温度は、ほんとうは 悲しいほど冷たかった。

『つかさは今 どこまで 人なんだろう?』

瞳はこんなに綺麗で、肩幅なんかとっても華奢で、
女の子特有の、丸みのある肢体で、髪の毛もいい匂いがするのに…

♪♪

「…ッ!『お散歩』、行かなきゃ…」
「一人で、行ける?」
「うん…というか…一人で行きたい。今日は、偉い人が、いるから」


…つかさの言葉で、私は、つかさより早く、飛び出していた。



93 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/16(木) 23:52:04.36 ID:9u4Ked2f0
「お姉ちゃん!?」

完全に頭に血が上っていた。
あいつらが?あいつらがつかさをこんな身体にした!?
ふざけないで。人の家族を、なんだと思ってるのよ!
いい加減にして。あんたたちのせいで、私が、つかさが、どれだけつらい思いをしたのか!

「お姉ちゃん!!!!」
「…っ!!」

つかさの、悲鳴にも似た声がした。
それは、私の火照った頭を冷やすには充分なものだった。

「お姉ちゃん…私は大丈夫だから、だから…」
「つかさ…」
「お姉ちゃんは、家で待ってて。すぐ帰ってくるから」

つかさはニッコリと笑うと、偉い人に引率され、去った。

「…つかさが悪いわけじゃないのに…なんで私はっ!
つかさをキズつけるようなことしかできないのっ!
なんで、なんでつかさを守ってあげられないのっ!!
私は…私は…どうしたら…いいの……」

声に出したそのコトバは、部屋の暗闇にいとも簡単に吸い込まれて消えた。
私は、ザンコクだろうか?
つかさは今も、どこかで泣いているのだろうか?



94 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 00:01:27.51 ID:/kH0q+sc0
つかさが、出かけようって言い出したのは晩夏に近づいた頃だった。
夏休みももうあと少し、ということで、私も少し暇を持て余していたところだった。

「で、どこ行くの?」
「えっとね、この前偵察で飛んでたら凄いいい景色見つけたの。そこがいいな」
「…どこよそれ」
「えーっと、あっち」

地平線に向かって指をさす我が妹…期待した私がアホでした

「とりあえず、西に行けばいいのよね、うん」


そんなわけで、つかさと二人で、どこかもわからないところへ繰り出したのだった。


「ほらほらお姉ちゃん!あそこあそこ!」
「あ~。確かに綺麗ね。あれはなに?」
「水族館みたい。ほら、あそこでイルカショーしてるよ!あ、向こうでは飼育員さんがえさあげてる」
「…むぅ、ちょっと見えないわ」
「私の目ね、ズ…」
「ズ?」
「ずず、ずいぶん、いいから…」



96 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 00:08:46.83 ID:/kH0q+sc0
「そうだ、こんな綺麗なんだから、これバックにして写メにしよっか?」

私は携帯を開いてみせた。が、つかさは、

「…写真は嫌だよ」
「どうして?」
「だって…写真があったら、安心しちゃうの。ホンモノの私でいられるうちは、私を見ていてほしいから。
わ…私がここにいることを…お姉ちゃんに、教えてほしいから…
私に…

一人ぼっちじゃないって、信じさせてほしい…」


「そういえばつかさ」
「うん?」
「今日は『お散歩』しないの?」
「実は…あの携帯、今日置いてきたんだ。邪魔、されたくないから…私、怒られちゃうかも」
「だだ、大丈夫よ。今日一日くらいサボっても、バチ当たらないって。
全く、大変よね、つかさの『お散歩』は」
「ううん…     もう    慣れたよ    」

愛しい妹が、愛しい家族が、変わらないことを望むのは、ダメなの?
私がまだ、こどもだから?でも、まだ私達は学生で、普通の普通の…
この胸騒ぎの正体を…もう少し後になって、私は、一番信じたくなかった方法で知る

最後のお出かけが  終わった―

■そろそろ寝ないといけないので、続きは明日に。落ちてたら新スレ立てますのでヨロシクです



97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/17(金) 00:13:53.19 ID:U3QcofRm0
おぉせっかく追いついたのに時間とな
乙ー


107 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 06:56:14.88 ID:/kH0q+sc0
おはよーございます。
8時くらいにまた書き進めます



108 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 08:08:48.94 ID:/kH0q+sc0
【幸星通り】

かつてここは、多くの販売店で賑わう商店街だったが、
昨今の空襲により、今では自衛隊の駐屯地として利用されている。
恐らく店であったであろう宅地は、自衛官が腰掛けられる程度の瓦礫でしかない。
そして、ここにはもう一つの二つ名があった。

『悪魔が住む場所』

自衛官の間では、そんな風に呼ばれていた。

「……あの」

何者かが、自衛官に歩み寄る。凡そ、屈強な男共に混じった異質な存在。
華奢な肢体。やや垂れた大きな瞳。少し欠けてしまったカチューシャ。
小さい背丈。ばっさりと裂かれた制服。


どう見ても、女子高生にしか見えなかった。



110 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 08:35:28.89 ID:/kH0q+sc0
その女子高生は、おずおずと自衛官の人間の顔を見回すと、屈託のない笑顔を浮かべ、言った。

「あの、お水、ありますか?」

―ッ!!

自衛官に走ったのは、かつてない戦慄だった。
考えてもみろ。軍隊の駐屯地に、場違いのように在るその少女。
異常としかいえなかった。しかし、その少女の笑みは、自衛官ですら慄く「視」を持っている。
あどけない顔が、その恐怖心をかきたてるのだった。

「お、おい!あれが噂の…」
「『悪魔』だろ?『悪魔』!単機で各国を灰にしたっていう!」
「で、ででも、某所では『勝利の女神』っていわれるみたいだぞ?」
「確かに、アレのおかげで戦争には勝っちゃいるがよぉ!」

それら全ては。どこぞの漫画でいう「ざわざわ…」という音でしかないのだが、
彼女の「耳」は、はっきりと一字一句間違いなく脳内に取り込まれていった。

「あの…お、お水……」



111 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 08:48:46.11 ID:/kH0q+sc0
「こらお前達ィ!」

背後から、男の怒号がした。
つかさはサッと振り返ると、そこには大柄な男が立っていた。

「貴様ら、上官に対して何をそんなに怯えている!?」

まだ若いだろう。胸の章を見るに、階級は二尉だ。

「小隊長殿、自分の部下が失礼いたしました」

男はピシッと敬礼した。少女―つかさもそれに応えるように、右手の指を額に当てた。

「小隊長、水が要りますか?」
「は、はぁ…。いつものお薬飲まないといけないので…」
「そうか…、おい、そこの貴様!」
「は、はい!」
「…見かけない顔だな、名前は!?」
「はい!自分は、日下部と申します!階級は三等陸士であり…」
「馬鹿もん!そんなことはわかってる!すぐに水を持ってこい!」
「はいっ!了解であります!」

峰岸と答えた自衛官は、そそくさと幸星通りを走り去った。

(…もしかして、みさおさんの…お兄さん…?)



112 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 08:55:48.10 ID:/kH0q+sc0
「しょ…小隊長殿!お水でございます!」
「あ、どうも…」

つかさは日下部三士からそれを受け取ると、近くにあった残骸へ腰掛けた。

「キヨさん!」

ヒゲの生えた二士が、キヨという男に声をかけた。
どうやらキヨとは、知り合いのようであった。

「…あのな、仮にも俺は上官だぞ、それ相応の」
「やはりレーダーです。ジャミングが結構強力らしく、敵がどれだけいるかもわからないようです」
「ふん…ここ一世紀遡ってるんじゃないか?」
「柊隊長、そういえば前の戦いで、敵部隊殲滅できたんじゃないですかね?」
「だといいが」
「…い、いえ、違いますよ」
「またまた~、謙遜して」

二士が、からかうようにつかさに言う。周りの自衛官と違い、彼は隊内では気さくな人間のようだった。

「いいえ、違うんです…その、今囲まれてます」

「…へ?」
「なん…だと?」



113 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 09:05:24.51 ID:/kH0q+sc0
「だいじょーぶです。また、私がヤりますから」

そう言って、つかさは薬を水で嚥下した。

「だ、大丈夫です?」
「あ、お水どうもです。実は、さっきの戦闘で、わざと敵さん逃がしちゃったんです。今日は敵が多いんで、出力間違えると、ここも敵さんみたいになりそうだったので…、じゃあ、私試験勉強しますね」

物騒なことを笑って言うつかさの様子に、多くの自衛官が身震いした。

彼女は柊つかさ。別名『戦場の女神』 別名『天空の悪魔』 別名『麗しき女帝』
などなど…通称が多いことで有名だ。

「小隊長殿、受験生なのですか?」

自衛官の一人が、つかさに聞いた。顔は笑っているが、ヒザも笑っている。
恐れてはいるのだろう、しかし…

「はい…。お姉ちゃんと…同じ大学に行きたいので…」
「お姉さんがいらっしゃるんですか」
「はい…私バカなんで、こんなときでも勉強くらいしないとなんで」
「こらそこ、小隊長殿に軽々しく話しかけるな!」
「キヨさ~ん、もしかして隊長狙ってんすか?やけに気かけてるじゃないっすか」
「馬鹿か貴様はっ!大体俺は妻帯者だっ!!」

キヨは、二士に向かって赤くなりながら怒鳴り上げた。



114 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 09:15:51.11 ID:/kH0q+sc0
(ほんと、馬鹿言うなよ。こいつ、兵器なんだぞ…
さっきの攻撃見ただろ。こんなお嬢さんが、一瞬にして敵一個隊を殲滅したんだ。
恐ろしいぜ全く…)

「それで隊長殿ぉ、お姉さんってどんな人なんですか!?」
「っておいい貴様ぁ!」
「キ、キヨ二尉、いいんです!」
「…っ?」
「皆さん…多分私のこと恐いと思います。私も正直…こんな自分が恐くて仕方ないです。
でも、それじゃ私がここにいる意味がありません。だから、私皆さんとできるだけ仲良くしたいです。
そうして…そういう勇気をくれたのが、お姉ちゃんなんです」
「姉さんが…ですか」
「ちょっと恐いけど、とっても優しいんです。
私最終兵器になってからすっかり『不良さん』みたいになって、
でも家族は知らないんです。でもあまり心配してなさそうで…
私、家族に嫌われてるのかなって思っちゃって。…でも、
お姉ちゃんだけは時々電話とかして励ましてくれるの。怒られもします。
とっても嬉しいんです。友達がいうには『ツンデレ』っていうみたいですけど、
それでもいいって。私バカだから…お姉ちゃんに甘えてばっかり。
でもお姉ちゃんはいいよって言ってくれて…」
「その…お姉さんは兵器であることを…」
「はい…前の空襲で見られちゃいました。でも、二人っきりのヒミツです」
(ここにいる連中はみんな知ってるけどな…)



115 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 09:25:40.10 ID:/kH0q+sc0
「お姉ちゃんに怒られるたびに、思うんです。
まだ私は人間なんだって。まだ生きていいんだって…まだ独りじゃないって。
…す、すいません…勝手なこと言って」
「そんなことは、ありません!」

名も無き三士の兵が、つかさの声を制止した。

「自分の身体を、見てください!先ほどの戦闘で受けたものです!」

そう言って着衣を脱いだところには、幾重にも巻かれた包帯があった。
しかし、赤く滲むその色は決して軽傷とはいえない大きなキズだった。

「それでも…自分は生きてます。隊長が戦ってくれたおかげで、自分もまだ生きてます!
隊長殿が戦ってる意味…絶対無駄ではありません!」
「戦う…意味…」
「おい、貴様、言葉を慎…」
「大丈夫です、ありがとうございます…そう言ってもらえると、不安がなんか小さくなります。
それと、最近少しずつなんですが、力の調整が出来るようになってるんです。
最初は戦闘に入ると、意識が朦朧として、兵器に『使われてる』かんじなんですけど、
意識でこんとろーるできるような…ええと、なんて言ったらいいかなぁ」
「もういい。余計なことは慎んでください。小隊長殿!」
「余計なことって…」
「いいですか、我々自衛隊は感情では戦えないのです。そういった雑念は捨てて、ただ任務を遂行…」
「あ…ま、まずいかも」
「…何か?」
「ステルス…私を狙ってます…こっちに…来ます。に、逃げて…」

言い終わらぬ内に、流星群のような弾道が、つかさに降り注いだ。



118 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 09:35:22.53 ID:/kH0q+sc0
バシュッ―

一発。


バシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュ


それから、沢山。全て受け止めた。逃げてはいけない。
地面に触れたらここも灰になってしまうから。

(痛い…)

バシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュ

(痛いよ…)

背中が焼けるようだった。本当に痛いときは、その部分が熱くなるというが、
今のつかさには、ただ 痛い としか認識できなかった。

ビキッ…ビキビキッ…

やがて、つかさの目が、背中が、羽が、―覚醒し始めた。



121 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 09:46:50.68 ID:/kH0q+sc0
だったら 私は守りたいかな
お父さん お母さん お姉ちゃん 街のみんな
ううん。この星の、できるだけ多くの、たくさんの人を、
私の力で、守りたいな
そしたらお姉ちゃん また誉めてくれるかな?
よくやったわねって
そしたらあの日以来…
―私が兵器になる前のように 戻れるかなぁ?

またお姉ちゃんと 映画観に行けるかなぁ

今度は… ホラーじゃなくて あたたかい ファミリー映画だったら

いいなぁ    うん  もうちょっと  もうちょっと



がんばろう



―――――――――――――――――――――…‥・   



123 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 09:56:55.32 ID:/kH0q+sc0
バラバラバラバラ
バラバラバラバラ
バラバラバラバラ

ヘリの音で、つかさは目を覚ました。
ぼやけていた視界も、徐々に正常になる。

「…敵は、敵は?へり…へりさんどいて!やられひゃうよぉ!
わひゃひが…わひゃひがみんあをたひゅけうの…!
おれえひゃんに…なえなえしえもらうの!」

呂律の回らないつかさを、キヨが撫でた。そして、

「もう 終わった」

静かにそう告げた。
つかさは辺りを見回した。
何もない。何も。
さっき試験勉強をしていたダンボールも。
さっき自衛官と談話したあの瓦礫も。
一昔前には賑わっていたであろう、通りの面影も。



全部 全部


つかさが灰にした。



125 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 10:06:15.57 ID:/kH0q+sc0
「あ、つかさからメール来てる。今日もまた『お散歩』してるのかなぁ…
全く、あの子ったら私と同じ大学行きたいっていうから、驚いたわよ全く…
使い古しの参考書、ちゃんと使ってるのかしら?」



「作戦、終了です…」
「お疲れ様です…、小隊長殿」




……

「ありがとうございます…」



「私を    殺して    …ください」



『お姉ちゃんへ 今度の日曜日、また映画観に行こうネ^-^
楽しみにしてます♪』



127 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 10:16:31.12 ID:/kH0q+sc0
「もう、私嫌なんです…。兵器のくせに、何かを守ろうとか言って。
そんなことばっかり言ってるからお姉ちゃんに嫌われて…
私が生きていていい理由なんか、どこにもないのに…破壊するしか能のない…ダメダメな子なんです。
所詮…私は兵器なんです。人間なんかじゃ…ないんです」

ジャキッ―

キヨが、ライフルをつかさに向けた。
その銃口はつかさの額に向けられており、いつでも発射できるよう、直立不動のまま構えた。

「き、キヨさん!何を!」
「…キヨさん、痛く…しないでくだ…さい」

ボロボロと、涙が零れた。言葉とは裏腹に、つかさの身体は一回り小さくなった。

「これでも射撃科で主席を取ってました。…妻はあまり得意じゃありませんでしたが、外しはしません」

殺してって 言ったけど ほんとは イヤなんだ
死にたくなんか ない 死にたく ない もっと もっと殺すかもしれない
もっと もっと壊すかもしれない でも でも
でも―

「イヤぁぁぁ!!!イヤだぁぁぁ!!!死にたくないよぉ!死ぬのはイヤぁぁぁ!!!
やめて…やめてよ…!やだよ、こんなのぉ…私はいっぱい人殺してるのに、
自分だけ死にたくないなんて…どんだけ勝手なの…!私は…っ!!
でも…生きていたいの!生きたいの!人見知りで、臆病で、根性なくて、
お姉ちゃんより人気なくて、こなちゃんにはバカにされてばっかだけど…!でも、私はまだ生きていたいのっ!!」



130 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 10:26:15.38 ID:/kH0q+sc0
「まだ私…18年しか生きていないの…まだまだ、人生これからなのに。
これから、恋をして、人を好きになって、子供作ったり、楽しいことしたり、
したいことが沢山あるの…まだまだやりたいことが沢山あるのに…
ごめん…ごめんなさい…こんなに、こんなしょうのない子で…」
「小たい…、いや、つかさ」

キヨが、静かに言った。

「君はもう、死なない。恐らく、ありとあらゆる兵器を使っても、
貴女を殺すことはできない。君を殺すこともできないし、止めることもできない。
だから…」
「あ…う…」
「よかったな、つかさ」
「自分も、妻がいます。正直マイペースで、自己中で、警官なのにすっごくだらしないです。
ずぼらだし、料理も下手です。でも、愛してます。電話で話す妻の声を聞くと、
『俺も死ぬわけにはいかない』って、思います。でも、自分はいつか死ぬかもしれません。
我々は戦争をしていますから。だから、女房とその家族に、先日遺書を送りました。
ここにいる者、全員それを済ませました。でも、正直自分も無駄死にする気は毛頭ありません。
死ぬときは妻の胸の中で死にます。…よかったな、生きてて…」

キヨは最後に優しく微笑むと、つかさの頭を抱いた。
途端に、せきを切ったかのようにつかさが泣き出した。

「うう…うぁぁぁぁ……っ!!あああ…あっ…ああぁぁぁっっ……!」
「…鼻水だけは、勘弁してくださいね」



133 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/17(金) 10:31:58.70 ID:/XJo/cP+0
どう考えてもハッピーエンドにゃならんよなあ…


135 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 10:36:13.07 ID:/kH0q+sc0
『お姉ちゃんへ また街を消しちゃいました。
それで、私、こう思ったんです。私、そのことを忘れないようにしようって。
私が消した街の風景を。私が来たときは、もう人はすんでいなかったけど、
それ以前はきっとたくさん住んでたはずです。つらいけど、頑張って覚えていきたいって思いました。
歴史の成績はちょっと良くないけど、人間が築いて、失ってきたその歴史の中に…
試験には出ない、私が消したその風景を加えておきたいって思うんです。


そして、いつか…


私だけは、自分を許してあげたいと思ってます。もう世界中の誰一人、
私のことを許してはくれないから。お父さん、お母さん、こなちゃん、みゆきさん、
そして…きっとお姉ちゃんも、許してはくれないから。ただ…

「守りたい人がいます」 「生きていたいです」

せめてそれだけは、私だけは、許してあげようって思いました。
お姉ちゃん、ごめんね。私、もっともっと 強く なるから』



136 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 10:36:38.50 ID:/kH0q+sc0
―バレーの合同試合―
「すぅーぱぁーファイナル…みさおあたーっく!!」

ベシィッ!!!

「はぅ」

23-20

「くっそー、みさ吉卑怯だぞー、つかさばっか狙ってー!」
「へっへーん、勝ちゃいいんだよ勝・て・ば♪」
「くっそー、よしかがみ!一発でかいのよろしくぅ!」
「言われなくても、そのつもり…よっ!」

バシィッ―!

「うぉ、あやの行ったぞー!」
「えいっ!」
「ナァイスあやの!よし、あたしに任せ…っておいぃぃ、なんでボールがあっち行ってんだよぉ!?」
「だめっ!とれませぇんっ!」

…トントントン…ころころ

23-21

「やったぁ!」
「おぉう、あれこそ神風ってやつだねぇ」
(もしかしてつかさ…力使ったの…?)



138 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 10:47:09.95 ID:/kH0q+sc0
―その後

「ちょ、ちょっとつかさ!」
「ん?なぁにお姉ちゃん」
「さっきの、あんた、あれ!」
「え…違うよぉ。私何にもしてないよ?」
「そ、そう…なら、いいんだけど…」
「うん。でもでも、
  あのボールの軌道上に、突風が来るのは感知したから、もしかたらボールの軌道が変化するかも、とは思ったよ~
大体の時間も予想したからあやのさんがトスする時間帯を計算してみたんだ」
  
  
…あっけらかんと言った。風が来るのを感知した…
あのとき、確かに体育館の窓は開いていた。…まぁ夏だし暑いし。
そして、峰岸がちょうど上空にトスする時間と、突風が来る絶妙なタイミングをはかっていた…!?

つかさは にんげんなんだ

思わずそう言い聞かせた自分を、叩いてしまいたかった。
でも、そんな私の不安は、ある意味無駄になるのだった。

「いや~、相変わらずかがみの弁当はアジがあるね~」
「きょ…今日は時間が無かったのよ!」
「お姉ちゃん、大丈夫だよ。私気にしてないよ」
「そうですね。あ、でもつかささん…それはフォローになってない気が…」
「……」
「つかさ?どしたの?」



140 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 10:56:27.22 ID:/kH0q+sc0
「……くる…てき…が」
(つかさ…、まさか、今…!?)
「おーい、つかっちゃーん、どしたのー?」
「え?え?あ、あれ…」
「つかささん、どうかなさいましたか?」
「そ、その…そろそろ避難したほうがいいかなぁって」
「あ~、つかさもしかして、自分だけ助かろうと思ってる~?」
「ちち、違うよ…!」
「んもう、そうならそうと言えばいいのに」
「…え??」
「おしっこでしょ、お・し・っ・こ♪」
「い、泉さん…!!///」
「う、うん…ちょっとトイレに…」
「じゃあ、私も行くわ」
「かがみ~、つかさは一人でトイレくらい行けるっしょ?」
「私も普通にトイレよっ!!」
「あ~はいはい。いってくるといいさ」


「お姉ちゃん…その」
「…ふんっ!」

ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!!!!

「お姉ちゃん!?勝手に警報機鳴らしちゃ…!」
「…何が来るの!?つかさ!逃げなきゃ!」
「違う…違うのお姉ちゃん…おっきい、おっきい地震が…来るの」



144 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 11:06:46.21 ID:/kH0q+sc0
「つかさ…逃げるのよ!」
「だめ…お姉ちゃんだけ…逃げて!」
「あんた、何言って!」

バキッ…ビギッ…ビシッ…

つかさの小さい背中から、殻を破るような音がした。
発動する。つかさの『兵器』が―

「見ないで…!見ないでぇぇぇ!!!!!」

激しく脈動する廊下を、私は苦虫をかみ締めながら走った。
私は…私は…あの子の姉なのに…でも、あの子が逃げろって…言ったから…
だから、私は逃げた…
この避けようのない現実と、
彼女の人ならぬ進化の片鱗から…


やがて、校舎の一角から、柱が建立した。



146 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 11:16:37.43 ID:/kH0q+sc0
それから、どれだけ経っただろうか。
何度足をすくわれたかわからず、何度お尻を打ったかもわからない。
地震が収まった頃には、もう私達が通っていた学園は、ただのコンクリートの塊と化していた。
ほとんどの生徒は、避難訓練様様に校庭で整列していた。
私はそんなことよりも、あの光が気になって仕方なかった。

「あれはきっと…つかさ…」

だけど、妙だった。つかさの言葉。そして、この地震。
敵に狙われていたとは考えにくい。
そしてもう一つ、しきりに私に訴えた、「逃げて」という言葉。
全てが腑に落ちない。だから私は、もう一度あそこへ走った。


「…あ…あぁ」

忘れるものか。警報機が、つかさと別れたところ。
そこは、多くの瓦礫が積み重なっていて、まともに前に進むのもままならない。
ただ、ただ。ある一箇所、警報機のあった場所からすぐのところ。
そのそこにだけ、瓦礫がなかった。私の周りには鬱陶しいほどあるっていうのに。
やがて私は、探検家になったような気分で、そこを目指した



149 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 11:26:36.11 ID:/kH0q+sc0
「あ…」

思わず声を失った。そこにいたのは、間違いなくつかさだったから…
いや、問題はそこじゃない。つかさは、なぜか素っ裸だった。
華奢だとは思っていたけど、裸だとそれが顕著に表れる。
白い透き通るような肌。重力に引かれ、すこし平べったくなってる乳房。
そんなに長くない太ももからのぞくうっすらと生えるヘア。
細身ではあるものの、ちゃんと女らしい身体つきではある。

「って…なに凝視してんだよ私は」

カーッと顔が赤くなった。全く…小さいときはお風呂に一緒に入ったんだし…
いやいや!そんなことよりも服服…ジャージでいっかな。
…息はしてるようね、って、そうじゃないと大変だってば。

「とりあえずそこの教室まで運ばないと。…よいしょ」

つかさの身体を抱き起こしたとき、見たくないものが背中にあった。
赤い、とても朱い切り傷。それも一つではない、五つ。
五つの痛々しい傷が、つかさの背中に刻まれていた。
血が滲んでいるような色で、それがまたなんとも痛々しい。

「…偉い人が、つけたのかな。…女の柔肌に、酷いことするわね」

愚痴を吐きながら、つかさを背中に乗せた。…軽いので少し妬けたのは内緒だ。



151 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 11:36:26.86 ID:/kH0q+sc0
「こんなんでいっか。…下着は我慢してもらうしかないわね」

教室で拝借したジャージを着せて、とりあえず私はそこでやり過ごした。
せめてつかさが目覚めるまではここに留まろうと思っていた。
ところが、目覚めて欲しかったというのに、私は、その時…恐怖したのだ。

……ガグンッ

つかさが、身を起こした。まるで機械のような直線的な動き。
そして、これまた機械のような奇異な動きでこちらを見ると、瞼を大きく開けた。

「つか…さ」

敵を捕捉したような、そんな視線だった。瞬き一つせず、
私をジッと見つめている。ダメだ…こんなの…こんなの…!

…考える前に、つかさを抱きしめていた。

「お、おおおお姉ちゃん!?じし…地震はどうなったの?」
「ごめん!ごめんねつかさっ…!」

つかさは一人っきりじゃないって…。そう言ってくれたつかさを…私は…
そんな風に見てしまっていた。こんなんで姉を気取っていた私が、憎たらしかった。

つかさは 人間で 私の 妹なんだから



153 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 11:46:54.10 ID:/kH0q+sc0
泣いてた私を、つかさが優しく頭を撫でててくれた。いつもと立場が逆だな。
本当はつかさは、この世界で一番悪いのは自分なんだ―そう思ってるのかもしれない。
そんな風に考えたら、なんか胸が苦しくなって、涙を目に戻そうと上を向いたら、ひゃっくりが出た。
バカなことしてる私を見て、つかさは笑った。

しばらくしてつかさは、「下着…また減っちゃう」とぽつりと呟いた。
困ったようで、泣きそうで、でもやっぱり笑顔で、そう言った。
つかさはコテン、と私の胸に頭を乗せた。
そして…あまり時間をかけずに寝息を立ててしまった。
つかさが開けた穴から吹く、静かな風が優しくつかさの髪を撫でる。
今はまだ、優しい風かもしれない。
これから私達に降りかかるのは、あのバレーのときのような突風かもしれない。
でも、幸せだった。当たり前の存在が、当たり前のように私の胸の中にいる。
そんな当たり前の妹が、私の胸で眠っている。

当たり前にあったことが、当たり前でなくなってることで、そんな気分になったのかもしれない。
その現実に、私は少し悔しくなった。



155 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 11:56:56.00 ID:/kH0q+sc0
「はぅ…」

これで三度目だ。校庭に戻ろうと思ってつかさと歩いているのだが、
しきりにつかさは転んでいる。確かにあちこちコンクリートの残骸が
散らばってて、歩きにくいのは否めない。
つかさはまぁ、ドジだ。結構何もないところで転んだりはする。
そう思って気にしないでいたのだけど、

「はぅ…ううん、やっぱりさっきので少し壊れちゃったかな?」

…クンッ

心臓が、少し跳ねた。そして、身体が熱くなっていくのがわかった。

「さっきね、地震のとき誤作動しちゃったの。恥ずかしいから、見ないで欲しかったんだけどね。
最近結構制御できるようになって…さっきも暴発しただけで済んだんだけど」

ドクン…
やめて…それ以上、言わないで…お願い

「でもそのせいで、どこか壊れちゃったかも…あはは、私、ほんとドジだね、ごめ…」
「あ、謝らなくていいわよ!」
「ご…ごめんなさい…」

またやっちゃった。そうじゃないの…つかさ。私は…私は…ね
そんなことを言いたいわけじゃ…なかったの……



157 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 12:07:10.98 ID:/kH0q+sc0
「お姉ちゃん、自衛隊の人がいるから、そっち行くよ」
「え…」

少し歩いたとき、つかさが言った。どこに?
自衛隊?いないじゃん

「裏山で待機してるの。…ごめん、実は黙ってたんだけど…」

『わたし めんてなんすしないと しんじゃうの ごめんね』
『わたし へいきだから めんてなんすもするし おくすりものんで いろいろしないと』
『もう わたし だけじゃ いきていられないの』

つかさは消えるように窓をすり抜け、走っていった。
残された私は、やっぱり小さかったその背中を、見送ることしかできなかった。

「柊!今までどこに行ってた!」

校庭に戻って言われたのは、担任の叱責だった。

「か、かがみ…無事だったんだね」
「その…ケガしたので…つかさは、柊つかさは自衛隊の人に保護されました」
「いいか!お前らみたいな無責任な連中が!有事のときにこうして迷惑かけるんだ!わかってるのか!?」
「ま、まぁまぁ先生、ここはウチの顔に免じて許してやってください」
「黒井先生…、なんだ?その目は?文句でもあるのか?」

あんたなんか…あんただってつかさに助けてもらったくせに…偉そうに…
そう言ってしまえば、楽になれただろうか。



159 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 12:16:42.09 ID:/kH0q+sc0
こなたが、見ていた。ジッと…睨むような目で。
静かに寄ってくると…突然

パンッ

と私の頬を叩いた。私は、空っぽになった頭で、こなたにやり返した。

パンッ―

こなたは赤くなった頬を擦りながら、涙を流した。
そして…

「バカ…かがみの…バカッ!」

そう言って泣きじゃくった。
そんなこなたを見ていられなくなって、私は帰った。
振り向きもせず。みゆきと日下部の声も無視して。
だって振り向いたら…泣いてるのが見えてしまうから。
泣きたいよ…私だって。だけど、つかさはもっと、泣いてるんだから―

■昼飯なので、ちょっと時間置きます



160 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 12:38:05.15 ID:/kH0q+sc0
結局家にも帰れず、私はその辺をブラついていた。
こなたを叩いた手が、まだジンジンとする。
あいつの肌…あんなに柔らかかったんだな。
暴力は、言葉以上に人を傷つけてしまう。身体的にも。
いや、言葉よりも、心に傷を入れるものなんだ。殴られた私が一番わかっていた。
それと、殴った人も、傷つく。だから、結局暴力なんて傷しか生まないものなんだ。
だけど、つかさは…
暴力なんてもんじゃない。破壊。多分、つかさの攻撃では、人間の心もろとも破壊しているだろう。
つかさは何度も人を殺した。死んだ人間は、何も考えず何も悩まずに済む。
だけど、生きているものは?それが、殺した本人だとすれば?
そう思うと、つかさの重圧がはかりしれないものだって改めてわかる。
想像に絶するものなんだろうか。私なんかが、慰めてやれるものなんだろうか。
泣きたくなった。さっきも少し泣いたけど、また泣きたい。
逃げでもいい、泣いて少しすっきりしたい。だけど…だけど…

「柊ィーーー!!!」

誰かの声で、私は涙を止めた。



161 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 12:45:11.58 ID:/kH0q+sc0
「え、誰?」

バコンッ

殴られた。しかも、グーで

「……ったぁー!くく、日下部っ!何すんのよ!?」
「柊にはわかんねーよ!全く…すっげー心配したんだぞ?
チミっこも、あやのも、黒井先生も…!」
「……う、うん」

なんかこっぱずかしくなってきた。面と向かってそんなこと言うなよ…。

「そういやさ、前から気になってたんだけどよぉ、妹とうまくいってねーのか?」
「…それは、私にもわかんないの。そういう以前に、わからないの。
ただ、ただわかってることは…」

前に二人で逃げたあの日―
あの子が自衛隊の人にペコペコしてるのを見て、
すごく、すごく腹が立ったこと そいつらを睨んでいた私を

つかさは ほんのいっしゅんだけ いままでみせたことのない
すごく すごくかなしいかおを したこと

そしてさっき わたしはつかさにいった
こんや あのおかにきてって せいいっぱい きえていくつかさにむかって
でもつかさは さいごまで ふりむかなかった



163 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 12:54:59.72 ID:/kH0q+sc0
「まーよ、なんにしてもさ、妹とは仲良くしとけよ」
「言われるまでもないわよ!」
「ん、じゃあもうヘーキだな。あとでチビっこに謝っとけよ」
「…わかったわよ」

時々、こんな日下部が凄いと思う。今時珍しい、暑苦しいくらいの体育会系。
こいつが「もっと熱くなれよぉぉぉー!」とか
「なんで諦めんだよ!Never Give Up!」とか言っても違和感を感じない。
今まで、ほんと今までただのバカだとは思ってたけど、あいつはあいつなりに私達のこと想ってくれてるんだ。


「それに比べて…私は」
「ん?かがみちゃんじゃないか」
「…!お兄…さんっ!?」
「今ちょっと休憩時間でさ、もしよかったらお茶しないか?」
「いや、その…あやのに、悪いような…」
「…うん、あやのさっき、地震でケガしたっぽくてね、お見舞いに行ったんだけど、
面会謝絶とか言われてさ…」
「……」



164 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 13:04:20.72 ID:/kH0q+sc0
「そういえばさ、最近俺が入った隊なんだけど」

『柊ちゃん…どうして彼と一緒にいるの?』

「可愛い子が一人いてさ~。髪はかがみちゃんと同じだったかな?高校生くらいなんだけど」

『もう二度と…近づかないでって約束したわよね?』

「でねでね、そのキヨ二尉ってのがかっこよくてさ。もう射撃の腕がピカイチで」

『あのとき柊ちゃんは言ったのに。約束を破るの?私がいないのをいいことに?』

「最近じゃ別の部隊に新しい人が入るみたいでね。しかもまた女性らしいよ」

『嘘つき…柊ちゃんの嘘つき…そんな人だったなんて…』

「…あ、そろそろ集合の時間だ。またね、かがみちゃん」

『お姉ちゃん…嘘つきは死なないとダメだよ♪』


「―――――――――――ッッッ!!!!」


私は…何をしてるんだろう…



165 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 13:14:48.49 ID:/kH0q+sc0
「…ここだったかな。あ、自衛隊の携帯持ってきちゃった。…お姉ちゃん、来てくれるかな…」


「なんですと?」
「今日は『お散歩』しませんから」
「いやその、そんなご勝手なことは…」
「しませんから。メンテナンスが終わったら隊長さん呼んでください。
指示を出します。…もしこのことで家族や友達に何かしたら…

 殺しますから」
 



「あはは…ははは…悪い子だな、私…」


パンッ―


私の手の中で、携帯は弾けとんだ。
ガラスの破片が飛んで少し血が出たけど、まぁいいや…

「急がないと…」



166 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 13:25:15.68 ID:/kH0q+sc0
「き…キヨさん…」

戦いは終わった。キヨは事後処理として
周辺を歩き回っていた。そのとき、あの気さくな二士がいないことに気づいた。
数分ほどか。じゃりじゃりと焦土を歩いて、その二士が自分を呼んでいるのを確認した。

「き…キヨさん…おわった…すか?」

ただし、二士の顔は、半分なくなっていた。
何度もそんなことは見てきた。そして、自分がすべきことは…

「今、逝かせてやるからな」
「へへ…キヨさん…覚えて…ますか。俺とあんた…初めて会ったとき…」
「…」



167 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 13:34:31.61 ID:/kH0q+sc0
「キヨさん…すっげぇぶっちょうずらで…俺のこと…殴り…ましたよね…
あんときの…パンチ…まだ覚えてるん…すよ」
「…」
「でも…俺がやり…返したら…キヨさん…すげえ…おどろいて…ましたね。
じょうか…んに…暴力なんか…コレですもんね…」
「…」
「それから…っすよね…おれと…キヨさん…の…ゆ…じょぉ…
俺が…女もってきて…も、キヨさ…ん、目もくれねえ…で、
ほんと…おくさん…おもいの…いい…おと…こ…だっ…って」
「もう、喋るな」
「奥さ…んに…ちょいと…しっ…と…しまし…たぜ。へ…へへ…
俺も…じもと…に…かの…じょ…いるん……す。戦争…おわ…たら…
けっこ…しよ…って……あは…はは……」
「……」
「俺…死ぬ……すよね……死ぬなら……しょ…たいちょぉ…に…られたかっ…った」
「バカ…なんでもあいつに背負わせるなよ…」
「は……はは…あ…キヨ…さ…どこいっ…た…みえ…ねぇ…みえ…ね…ぇよ…
あ…っ…が………れ…だ、…にたく……ね…」

―タンッ

静かに、弾は放たれた。死に行くものを、キヨは逝かせた。
二士の身体を抱き起こしながら、キヨは泣いた。

「死にたく…ねぇ…」

月が、二人を照らしていた。



168 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 13:44:59.68 ID:/kH0q+sc0
「……はっ、はっ……むぅ」

やっぱり…追いかけてきてる。
もうプライバシーなんかあったもんじゃないよね。

「あの、邪魔しないでね」

ガサガサ、と草むらがざわめく。ばれる程度の尾行なら、最初からしなければいいのに。
その中から、二士の自衛官が前に出てきた。

「小隊長殿!報告致します!現在粕日部付近における戦況は…」
「…な、なんですかそれ。あ、今衛星の情報から聞いたんで。
なんで、私の指示に反したんですか…?」
「上のものが…独断で…仕方なかったのです」
「それじゃ…あの辺にいた人たちは…」
「…上の、命令でしたので」
「はぁ…兎に角、私はあそこに行かないと…」
「小隊長殿!   …現在あちらには『かがみ様』はいらっしゃいません」
「……それでも、行かないと。私、行かないといけないから」
「ま、待て!止まれぇ!!」

ジャキジャキジャキッ

…バカなのは、私だけじゃ、なかったみたい。お姉ちゃん…



169 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 13:54:42.50 ID:/kH0q+sc0
「そんなことして…どうするんですか?攻撃したら…消えますよ。あなたも、この街も」
「ですが!このままでは味方がっ!」
「この戦況を覆すには、小隊長殿お力が必要なのですっ!!」

「…同じだよ。私が行ったら、もっと死ぬ。私の知ってる…
私の好きな人たちや…たまたま同じ国で生まれた…私の国の…
なんだか愛しい人たちの代わりに…この星の私が殺さなきゃいけない
人が、代わりに死ぬ…それだけ」

バキッ…ビギッ…ボゴッ…

「どこが、どう違うの?同じじゃないですか…
悲しくて辛いってこと以外、変わらないじゃないですか…
行かせてください…お姉ちゃんが…待ってるから……
お願いします…この街で、人を殺したくないから……」

涙と翼が、同時に流れた。



170 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 14:04:22.66 ID:/kH0q+sc0
「……はぁ、はぁ…お姉ちゃん…」

いない。ここ。ここであの日、お姉ちゃんと見た夜景。
それだけが、ここにはあった。だけど、お姉ちゃんはいない。
どうしようかな…うう、お腹空いた…
カバンから、薬を取り出す。本当は飲むと危ないんだけど、
この際、仕方な…

「もう…ないんだ…」

空になったケースを、ポイッと捨てる。
…寒くなってきた。おかしいな、まだ少し夏なのに。
なんでこんなに寒いんだろう。早く…早く来てよ…お姉ちゃん

「今日、『お散歩』サボったんだよ。お姉ちゃんに会うために。
もっと話そうって。ここで約束したのに…お姉ちゃん…お姉ちゃんの声が聞きたいよ…
……はむっ……」

―…‥・

「味…しない。あれ…おかしいなぁ。今日のおにぎり…ちゃんと
塩水で握ったのに…あれ、だめだよ…味見ができないよ…お姉ちゃんに…ご飯作ってあげられ」


ゴトンッ―


つかさはそのまま、倒れた。



171 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 14:14:41.23 ID:/kH0q+sc0
一番古い、私の中のお姉ちゃんは、いくつのときだったかな?
雨の日だった。お友達と遊んだ帰り、突然雨がざーざーって降ってきた。
ビショヌレになりながら、私は公園のベンチに逃げた。
傘なんかない。でも、このまま動けない。その時、凄く寒かった。
雨のせいもあるけど、暗くなってきた景色で、たった一人孤独に震えながら、ただ雨の音だけが聞こえる。
私は、世界で一人ぼっちなんじゃないかって。
すごく…恐かった。不安で、どうしようもなくて…
もう家に帰れないんじゃないかって…。どのくらいそうしていたかな。
雨の音が、変わった。ザーって音から、ボタボタって音に。
目を開けたら、傘を差したお姉ちゃんが立っていた。

―何やってんのよ、つかさ。お母さん心配してたわよ。帰りましょ

ちょっと厳しかったけど、その瞬間、私はすごく安心しちゃった。
優しいお姉ちゃんに…飛び掛るように抱きついた。お姉ちゃんはアタフタしてたけど、
私の頭を優しく撫でてくれた。その時のお姉ちゃんは、とってもあたたかかった。
今、そんなあたたかさを感じている。これはなに?なんなんだろう…


「ごめん、つかさ…遅れて…」


「……うそつき……」


私はゆっくりと、目を、開いた―



172 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 14:24:40.55 ID:/kH0q+sc0
「つかさ…聞いて」
「……いい、聞きたくない」
「私ね…さっき」
「いいってば、いいの!」
「私ね…峰岸のお兄さんと…いたの」
「……ッッ!!」

『つかさ、わたし、みねぎしのおにいちゃんに、すきっていってきていい?』
『おねえちゃん…その…それは…』
『いいでしょ?ね?』
『……うん』

「やめて、言わないで」
「後からだけど、あんたも好きだったんでしょ?お兄さんのこと」
「そんなことない!そんなこと、ないもん!もう、忘れてたもん!」



173 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 14:34:29.34 ID:/kH0q+sc0
『おにいちゃん、わたし、おにいちゃんのことがすきなの…』
『ごめんな、かがみちゃん。昨日あやのに告白されて、それで、付き合うことにしたんだ』
『……え……』
『気持ちは嬉しいけど、…そうだ、じゃあお詫びに、一緒に遊びに行こうか…』
『う、うん!』

『柊ちゃん、昨日、どこにいってたの?』
『え…おにいちゃんと…動物園に…』

パンッ―

『あの人は私の彼氏なのよ!?付き合った翌日でよくそんなことできるわね』
『ちがう…おにいちゃんが…』
『言い訳しないで!約束して。もう彼と会わないで。柊ちゃんとは、こんなことで仲違いしたくないの。
でも私だって、彼氏と遊ばれていい気分はしないんだから』
『…ごめん…なさい』

『おねえちゃん…おにいちゃんと、あそんできたんだ』
『ごめん…その』
『ひどいよおねえちゃん…私の気持ちを知ってたくせに…!』
『ちち、違うの!違うのよ!これは…』
『おねえちゃんなんか、大ッ嫌いッ!』



174 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 14:44:09.36 ID:/kH0q+sc0
「やめて!もう、いいのあのことはっ!」
「あんたはずっと待っててくれたのに…私はあの人と会ってたの…最低でしょ」
「もうやめてよぉ!そんなこと、もう忘れたよ!」
「怖かったの…」

恋をするっていうことは。
恋は人を変えてしまう。人をこんなにも無力にしてしまう恋という存在が、
私は凄く怖く感じた。同時に、あの時逃げ出したい気持ちを
なんて都合よくマヒさせる薬が…この体にあるんだって、
あの時、知ってしまったのかもしれない。

「お姉ちゃん…何も、何も、無かったんだよ、ね?」
「……何も無かったわけじゃ、ないわ」
「……ッッ!!」
「あんたが…今泣いてる……何も無いこと、ないの。あんた、凄く辛そうにに…してたから」

「……お姉ちゃんのバカッ!」
「…つか、さ…」



176 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 14:54:11.59 ID:/kH0q+sc0
「辛そうに見えるのは、むしろお姉ちゃんのほうだよ!私を見るときの顔なんか、まさにそんなかんじだもん。
私は兵器じゃない。お姉ちゃんの妹なんだよ?お姉ちゃんばっかり言いたいこと言って、
私も辛いこと言いたいのに言葉にならないんだよ。私が『辛そう』に見える?
そんなの生まれつきだもん!涙は勝手に出てくるの!背中の傷は、まだ人間だって証拠なの!
私は…生まれたときからお姉ちゃんと一緒なんだよ?
誰よりも、誰よりもお姉ちゃんのこと理解してるんだよ!?
……見てよ、お姉ちゃん」

つかさは、後ろを向いて服をはだける。むき出しになった背中には、前と同じ赤い裂傷があった。

「まだね…まだ私人間なの。まだ人間でいた…あっ」

そっと、優しく、私はその傷に触れた。温かい。ドクンドクンって、血液が波打ってる。
きっとつかさは…今本当の自分を曝け出したんだろう。
きっとつかさは…知りたいのだろう。自分も、私も…みんな。

「また、一緒に学校行こ」
「…うん」

そして私達は、帰った。



177 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 15:04:07.96 ID:/kH0q+sc0
「じゃあつかさ、先帰るわね」
「うん、また家でね~」

「でさ~、最近じゃ同人誌もあんまり手に入らなくてさぁ」
「こなた、あんた進学どうすんの?私は大学受験するけど」
「ん?ふっふっふ、よくぞ聞いてくれました。なんと私はっ!
自衛隊の情報班に内定したのだよっ!」
「…はぁ?なんで?ていうか自衛隊って簡単になれないでしょうが」
「甘いなかがみん。この戦時下だとね、結構庶民から公募することがあるんだよ。
私は本当は最前線がよかったんだけど、女ってことで情報科に入ることになったのさ」
「あんたがお国のために働くって、なんか性に合わないわね」
「まぁね…でも、私だって家族がいるんだもん。守りたいじゃん?」
「ゆたかちゃんとか?」
「ゆうちゃんは、最近具合が良くないんだ。ほんとは傍にいてあげたいけど、お父さんもいるし」
「そっか…頑張りなさいよ」
「おぅよ!ではまた~おつ~」

「ただいま…あれ、お母さん、テレビ直ったの?」
「おかえりなさい。なんかね、お隣さんとお話してたら、テレビついたっていうから」
「かがみ、ご飯ありあわせのものでいい?お腹空いたでしょ?」

…そう微笑むお母さんの顔は、どこか疲れてるように見えた。
若作りしてるから意識してなかったけど…お母さん、こんなにやつれてたっけ…



178 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 15:15:37.57 ID:/kH0q+sc0
「ほらかがみ、映ってるでしょ?」
「あ、うん…」
「これ、日本なの?」

その映像は、音声もテロップも字幕もなく、
ただ淡々と戦場の記録を放映していた。そして、その中で一つ光る物体が見えた。

それは、つかさだった

最初に見たときと同じように、圧倒的な機動と圧倒的な火力で、
次々に敵機を撃墜していく一筋の粒子。


「もう戻れるわけ…ないじゃない…」


時間はちゃんと、ザンコクに動いていた…



179 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 15:24:14.23 ID:/kH0q+sc0
「お姉ちゃん、行ってきます…」


ドン―

つかさの放った砲撃が、敵部隊に炸裂した。
今まで生きたものだったそれらは一瞬のうちに肉塊と化した。

「ごめんなさい、遅れて」
「小隊長殿!お待ちしておりました!」
「ご指示を!お願いいたします!」
「ん、大丈夫。あとは私がしますから。皆さんは逃げてください」
「は…はっ!了解であります!」

「さてと…行こうかな…」


つかさは敵機に向かって飛んだ。
彼女が交差した敵機は、全て夜の星になり、消えていった…



180 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 15:34:21.42 ID:/kH0q+sc0
「おーっすこなた、みゆき」
「お、授業終わった?帰ろうか」
「今日もつかささんはご欠席のようですね…」
「つかさ、前の地震のときのケガ酷いのかな…」
「…大丈夫よ。この前見舞いに行ったら、ピンピンしてたから」
「ええ!?かがみずるーい!私もお見舞い行くー!」
「こらひっつくな!大体もうすぐ治るんだし…!」

つかさは、今日も『お散歩』。ただし、遠征らしく、粕日部にはいないみたい。
一応休みの口実として「ケガで入院と銘打ってるけど、いつまでこのウソが通じるか不安だった。

「じゃあ、今日はつかささんのお見舞いの品を買いにいきませんか?」
「おぉ、みゆきさんナイスアイデーア!」
「結局出かけたいだけだろ…」
「そんな連れないこと言わないの。さ、行くぞー!」
「ちょっと!手離せっ!」


考えてみれば、この時ついたウソは、本当にどうしようもないウソだったんだ。



181 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 15:45:11.73 ID:/kH0q+sc0
「さて、どこから回るか。アドアーズにゲマズにメイト」
「待て。お前みゆきが言ったこと聞いてなかったのか?」
「いや~甘いよかがみ。そういうお店ではちゃんと小説とかあるんだよ。ラノベだけど」
「つかささん、ベッドで退屈そうにしてらっしゃるかもしれません。ご本を贈るのはいいかもしれませんね」
「…くっ、まぁいいけどさ」
「ようし、じゃあまずは……あれ?」

こなたが、空を見上げた。嫌な予感だった。
空は、数え切れない戦闘機で埋め尽くされていた。

「げげぇ!?こんな日に限って空襲!!?」
「泉さん!かがみさん!逃げ…」



182 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 15:54:46.21 ID:/kH0q+sc0
ドォォンッ―

私達がさっきまで歩いていた道に、大きな穴が開いた。
地響きで、私達はもんどり打つ。

「ここ危ないよ~。どっか避難しないと」
「向こうの公園へ!早く!」
「……」

二人が行く中、私は呆然と空を見上げていた。
つかさは…今ここにいない。そうすると、ここはどうなる?
また戦争の傷痕が刻まれるのか?

「かがみ!何し…」

ドォォォン――ッッ

こなたの声は、爆発の音でかき消された。



183 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 16:04:06.19 ID:/kH0q+sc0
「……ッ?え…?」

空をもう一度見て、私は目を疑った。
雲を覆うほどあった戦闘機はおろか、空には一片の曇りもなくなっている。
聞こえたのはさっきの爆音だけ。

「おろろ!?何今の…」
「これで…助かったんでしょうか…」
「……」
「かがみ?お~い」
「私、ちょっとトイレ…!」

空を通る光を、私は追った。
急降下したかと思うと、光は街から少し離れた草原で消えた。

「あそこね…!」

ちょっと距離はあったが、気にしなかった。
あれは多分、つかさだ。でも、どうして?なんで日本に?
本当に聞きたいのはそんなことじゃないんだけど、そんなことしか頭に浮かばなかった。



185 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 16:14:50.81 ID:/kH0q+sc0
いた…あれだ。草原で佇んでいる、小さな少女。
服装がちょっと軽装なのは、暑さのせいか、それとも服諸々の事情からか。
つかさはしばらく眼下に顔を伏せていたが、私の気を察知すると、グルンと物凄い速度でコチラを見た。

無機質だ。人間の目とは思えない。
それはつまり…つかさが…

「…なた、…だ…れ」

「―つかさッ!!」

はっきりとは聞こえなかった。幻聴であってほしかった。
お願いだから…これ以上つかさから奪わないで。
兵器になっても、いくら弱音を吐いて泣いても、いい。
だけど、それだけは…それだけはやめて。懇願するように私は、つかさの胸に顔を埋め、泣いた。

「………ぇちゃん、お姉ちゃん?」
「つかさっ!」

『つかさ』が、戻ってきた。しかし、焦点が定まらずに、ボヤァっとしている。
見なくちゃいけない。つかさを…真っ直ぐに。

「大丈夫…アレ、落ちる前に即死だと思う…。苦しまないで、逝ったよ」

淡々と、そう教えてくれた。



186 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 16:24:08.10 ID:/kH0q+sc0
「……あ」

思い出したように、つかさはカバンのカプセルを取り出して、嚥下した。

……そんな苦しむつかさを、見ていられなくて、

「お姉ちゃん、私…私ね…!」

「……っ」


目を、反らした。ずっと見ていようって決めたのに。
つかさは、私に見ていて欲しかったのに。
私はつかさから目を反らしたのだ。

「なんでもない…から。帰るね…一人で…行けるから…」

踵を返すときに見えた光るソレは、涙だったのだろうか。
それから、私はつかさと少し疎遠になった…。



187 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 16:34:11.83 ID:/kH0q+sc0
「ぼ~」

以前つかさが開けたところ、そこはちょうど校庭を一望できる簡易のベランダのようになっていた。
放課後、何もする気になれないので、こうして日向ぼっこしてたわけだ。
…あぁ、ほんと気だるい。

「お姉ちゃん?」
「…つ、つかさ!?」
「はい残念あたしでした~」

…こいつ、殴ったろか。

「そんな恐い顔すんなよ。どうした若人、あたしでよければ相談に乗るぞー」
「…まずはパンツを隠せ」
「うわわ!このエッチ!ド変態!」


「…妹とケンカしたのか」
「ケンカってわけじゃ…」
「でも、最近全然顔合わせねーじゃん。妹は妹で学校休みがちだしよー」
「……」
「まぁ、話しにくいんだったら無理には聞かねーけどよ」
「待って日下部…。…聞いて欲しいんだけど」

ちょっと素直に、なってみた。



188 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 16:44:15.98 ID:/kH0q+sc0
「私ね、最近わからないんだ」
「何が?」
「つかさのこと。自分の気持ちだって曖昧なのに。
姉としてこんなんでいいのかなって思って。わかろうって頑張れば頑張るほど、
あざ笑うようにあの子に酷いこと言っちゃって…難しいんだよね。
家族だし、妹だから、尚のこと。触れていいときと触れちゃいけないってこととか…」
「柊、お前ぇエスパーか何かか?」
「は??」
「他人の気持ちなんてよーわかるわけねーだろ。そんな簡単に他人の気持ちなんか
わかりっこねーって。もしあたしに妹がいたら…その妹に
あたしの気持ちを見られたら…そりゃ、恥ずかしくて死にたくなるよ。
別にな、わかってもらえなくてもいいんだ。ただそいつを心配してやりゃそれでいいんだ」
「…そう、だよね。そんなに人に気持ちって、単純じゃないもんね…」
「おう」
「お前は結構わかりやすいけどな」
「酷っ!訴えてやる!」
「…ふふ、だってあんた、体育会系だしね」

そう、問題は結局『私自身』。無闇に知ろうとしたって、どうにもならない。
下らない考えは捨てて、裸の心であの子に接してあげればいいだけなんだ。



189 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 16:54:16.44 ID:/kH0q+sc0

下校の道。
見知った子が、座って何かを覗き込んでいた。

「…猫?」
「うん、子猫さん」
「……そう」
「ごめんね、猫ちゃん。私兵器だから、何もしてあげれないよ。味覚もなくなっちゃったから、お料理も作ってあげれない…
ほんと、何も出来なくてごめんね…」
「つかさ、あんた味覚って…!」
「大丈夫だよお姉ちゃん。戦う分には小さいことだし」
「小さいって、あんたねぇ」
「…前の戦い、あれ私がやったんだ。数が多かったから、上昇気流で巻き上げて、大気圏すれすれで…ボンって」
「……」
「最近はね、ミサイルも無人で動く戦闘機も少ないの。でも、数十人くらいかな、死んだ人。私よりは年上だけど、きっと若い人だと思う。苦しませないで、殺ったから」

何も言えない私に、昔話を聞かせるような口調で、言い続けた。
そして、

「こんな子でも、妹でいいの?」



190 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 17:04:08.12 ID:/kH0q+sc0
「……当たり前じゃない」
「……でも、でも」
「ここで待ってなさい」
「え?」
「牛乳、持ってくるから!どうせ誰も飲んでないし、この子達にあげるのよ。
きっと、きっと喜ぶよ、ね?」

……つかさは、少しキョトンとしてから

「  うん  」

笑った。

「お姉ちゃーん、ネコさん用の牛乳じゃないと下痢するからねー」
「……わ、わかってるわよ!多分…あ、あるかわかんないけど…持ってくるって!」
「待ってるからー!」

私は急いで、家へ走った。



191 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 17:14:23.14 ID:/kH0q+sc0
『お姉ちゃん ごめんなさい
急にお散歩に行かなきゃいけなくなったので、行ってきます
この前はありがとう 安心しました
子猫ちゃん達に、牛乳をあげておいてくださいね
さっきも行ったけど、ちゃんと猫さん用のミルクでね
約束です

じゃあ、またね お姉ちゃん』


戻った時には、つかさはもういなくって、
戻った瞬間に、そんなメールが来ていた。


それっきり、つかさが学校に来ることはなかった。



192 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 17:24:16.23 ID:/kH0q+sc0
「泉さん、だっけ?自衛隊は初めて?」
「は、はぁ…」
「あんまりそう硬くならないでいいわよ。私も初めてだし、同じ女の子で、頑張りましょう」
「う、うん。えーと、名前はなんだったっけ?」
「永森やまと。やまとでいいわ」
「よろしく、やまと」
「とは言ってもこの後すぐ派遣先を言われるから、コレ以降はもうお別れだと思うけどね」
「あら、そうなんだ」
「ほら、配られてるでしょ?あれに配属先が書いてあるんだ」
「ほうほう…」

「泉 こなた!」

「は、はい~。ええと…『第七情報管理部』かぁ」

「永森 やまと!」

「はい。…『第二中央情報部』。え、これって…」
「永森、運がいいな。そこは『天使』がいる部隊だぞ」
「はぁ…」
「ねねやまと、『天使』って何さ?」
「さぁ…ただ、人の形をした何か、とは聞いたことがあるわ」
「人型兵器!?おぉ、ロマンだぁ」
「ふふ…そうね。あ、もう行かないと頑張ってね、こなた」
「やまともね!」



193 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 17:36:33.28 ID:/kH0q+sc0
「情報班はこの場で待機!……『天使』がご帰還される!全員整列!」

上官の指示で、私達は輪になるように整列する。
何度も練習させられた敬礼を、早くしてしまいたかった。
あれが…天使なんだ。少女だった。どっからどう見ても、年端も行かないくらいの。
でも、確実に異質である「ソレ」が彼女には生えていた。
無機質のようで、どこか生物じみた、ハネ。
天使と呼ばれる所以なのかもしれない。天使はゆっくり降下すると、ハネを雲散させた。

「全員敬礼!天使指令!任務ご苦労様であります!」

…ほんとに天使って名前なのか?そうでなくても、笑える呼称だ。

「H司令官殿も天使指令のご活躍にはご満足いただいております!」
「…次の予定は?」
「はっ!先ほど東区域の中隊長殿よりご要望がございまして、
本日1600において選抜隊員及び新入隊員へ一言ご挨拶をと」
「…聞こえなかったのかな」
「…はっ!?」

「次の戦闘、いつなの?」


寒気がした。その言葉、その視で。天使…いや違う。こいつは…

悪魔―だ。



196 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 17:45:15.15 ID:/kH0q+sc0
情報班だから楽かな、って思ったのは甘かったのかもしれない。
編隊されて、早速10kmのマラソン。なんでも、情報班というのは
色々な部署で情報を共有させる役割があるため、ある程度の体力が必要とされるらしい。
私の部隊は、幸か不幸か、女性のみだった。

「岩崎みなみです…」
「八坂こうでーすってやまと!?あんたもこっちだったんだ?」
「奇遇ね、こう。これからよろしく」
「あ、うん。よろしく」


自己紹介も程々に、早速マラソンを始めた。
「…お知り合い、なんですか」
「そうだよ。昔っから大の仲良しさぁ!」
「…こう、下らないこと言わないの」
「下らなくてないよーもう」
「…その、永森さんは、『天使』を見たんですか」

岩崎さんが、私に聞いた。ズシリと、またあの悪寒が甦った。



197 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 17:55:14.09 ID:/kH0q+sc0
「えぇ。貴方達は?」
「私は見てないな~。やまとって、結構運が良かったと思うよ」
「そうなのかしら」
「どう、でしたか…『天使』は…」
「そうね…クールさでは私も岩崎さんも負けてないけど、『天使』はそれ異常だったわ」
「おい、私は!?」
「…どこが。そうね、クールというよりは、『コールド』。凄く冷たい目をしていたわね」
「冷たい…目」
「えぇ。言葉では言いにくい存在感があったわ」
「人型と、聞きましたが…」
「ロボットものではお馴染みだよね~」
「というよりは、人間が羽を移植されたようなかんじだったわ」
「そそ、それって生物兵器じゃないの??」
「さぁ、どうかしらね。情報班としては、結構私は有益な情報を知れたからいいけど」
「……そう、ですか」



198 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/17(金) 17:59:47.90 ID:iklI4XdDO
つかさ・・・


199 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 18:08:14.73 ID:/kH0q+sc0
「…『お散歩』、したいな…」

つかさが、物欲しそうに空を見上げた。
つかさが見ていた部分、そこにあった雲が、抉られるようにして消えた。
今のつかさの、『暇つぶし』であった。

「……次の『お散歩』、いつかなぁ…」

ぐるんぐるんと、首を回す。
つかさの見える空だけが、快晴になった。


「まぶしぃ…」


滲まない瞳を薄めて、そう呟いた。



200 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 18:18:44.26 ID:/kH0q+sc0
季節は冬―
桜並木で知られ、いつもつかさと歩いて道は、今じゃ雪景色みたいだった。
みたいというか、そのまんまだけど。

「お、柊。また早退か?」
「日下部…そうだけど」
「なんだぁ奇遇じゃん。あたしもとっとと帰ろうと思ってたんだ。学校サミーじゃん?
勉強はかどんねぇんだよ」
「お前が勉強する姿が想像できん…」
「それ暴言もいいとこだって!」
「はぁ…」
「しかしさー、チミっこもバカだよなー。こんな状況なのに自衛隊行くとかよ。
あいつオタクだから、自衛隊を遊園地とか何とか勘違いしてんじゃね?」
「……バカ!あいつを…あいつをそんな風に言わないで!」
「ど、どうしてだよ。だって…」
「あいつには従妹がいるの。あいつは…その子、家族を守るために志願したの。
家族を守るために、あいつは行きたくもない軍に行ったのよ!」
「…くそぉ、お前らかっこよすぎんだよ!でもよぉ!
それでいいのか!?お前は!あたしなんかとは違う、親友が軍に行っちゃうの!
さびしくねーのか!?妹とだって最近全然会ってねえじゃん!」
「さびしいわよ…会いたいわよ。止めたいわよ。でもね!親友だから!
笑っておくってあげなきゃいけないのよ!あんただって…そりゃ…親友であることに変わりないんだしさ…」
「…ひ、柊ぃ…」



178 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 15:15:37.57 ID:/kH0q+sc0
「ほらかがみ、映ってるでしょ?」
「あ、うん…」
「これ、日本なの?」

その映像は、音声もテロップも字幕もなく、
ただ淡々と戦場の記録を放映していた。そして、その中で一つ光る物体が見えた。

それは、つかさだった

最初に見たときと同じように、圧倒的な機動と圧倒的な火力で、
次々に敵機を撃墜していく一筋の粒子。


「もう戻れるわけ…ないじゃない…」


時間はちゃんと、ザンコクに動いていた…



179 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 15:24:14.23 ID:/kH0q+sc0
「お姉ちゃん、行ってきます…」


ドン―

つかさの放った砲撃が、敵部隊に炸裂した。
今まで生きたものだったそれらは一瞬のうちに肉塊と化した。

「ごめんなさい、遅れて」
「小隊長殿!お待ちしておりました!」
「ご指示を!お願いいたします!」
「ん、大丈夫。あとは私がしますから。皆さんは逃げてください」
「は…はっ!了解であります!」

「さてと…行こうかな…」


つかさは敵機に向かって飛んだ。
彼女が交差した敵機は、全て夜の星になり、消えていった…



180 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 15:34:21.42 ID:/kH0q+sc0
「おーっすこなた、みゆき」
「お、授業終わった?帰ろうか」
「今日もつかささんはご欠席のようですね…」
「つかさ、前の地震のときのケガ酷いのかな…」
「…大丈夫よ。この前見舞いに行ったら、ピンピンしてたから」
「ええ!?かがみずるーい!私もお見舞い行くー!」
「こらひっつくな!大体もうすぐ治るんだし…!」

つかさは、今日も『お散歩』。ただし、遠征らしく、粕日部にはいないみたい。
一応休みの口実として「ケガで入院と銘打ってるけど、いつまでこのウソが通じるか不安だった。

「じゃあ、今日はつかささんのお見舞いの品を買いにいきませんか?」
「おぉ、みゆきさんナイスアイデーア!」
「結局出かけたいだけだろ…」
「そんな連れないこと言わないの。さ、行くぞー!」
「ちょっと!手離せっ!」


考えてみれば、この時ついたウソは、本当にどうしようもないウソだったんだ。



181 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 15:45:11.73 ID:/kH0q+sc0
「さて、どこから回るか。アドアーズにゲマズにメイト」
「待て。お前みゆきが言ったこと聞いてなかったのか?」
「いや~甘いよかがみ。そういうお店ではちゃんと小説とかあるんだよ。ラノベだけど」
「つかささん、ベッドで退屈そうにしてらっしゃるかもしれません。ご本を贈るのはいいかもしれませんね」
「…くっ、まぁいいけどさ」
「ようし、じゃあまずは……あれ?」

こなたが、空を見上げた。嫌な予感だった。
空は、数え切れない戦闘機で埋め尽くされていた。

「げげぇ!?こんな日に限って空襲!!?」
「泉さん!かがみさん!逃げ…」



182 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 15:54:46.21 ID:/kH0q+sc0
ドォォンッ―

私達がさっきまで歩いていた道に、大きな穴が開いた。
地響きで、私達はもんどり打つ。

「ここ危ないよ~。どっか避難しないと」
「向こうの公園へ!早く!」
「……」

二人が行く中、私は呆然と空を見上げていた。
つかさは…今ここにいない。そうすると、ここはどうなる?
また戦争の傷痕が刻まれるのか?

「かがみ!何し…」

ドォォォン――ッッ

こなたの声は、爆発の音でかき消された。



183 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 16:04:06.19 ID:/kH0q+sc0
「……ッ?え…?」

空をもう一度見て、私は目を疑った。
雲を覆うほどあった戦闘機はおろか、空には一片の曇りもなくなっている。
聞こえたのはさっきの爆音だけ。

「おろろ!?何今の…」
「これで…助かったんでしょうか…」
「……」
「かがみ?お~い」
「私、ちょっとトイレ…!」

空を通る光を、私は追った。
急降下したかと思うと、光は街から少し離れた草原で消えた。

「あそこね…!」

ちょっと距離はあったが、気にしなかった。
あれは多分、つかさだ。でも、どうして?なんで日本に?
本当に聞きたいのはそんなことじゃないんだけど、そんなことしか頭に浮かばなかった。



185 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 16:14:50.81 ID:/kH0q+sc0
いた…あれだ。草原で佇んでいる、小さな少女。
服装がちょっと軽装なのは、暑さのせいか、それとも服諸々の事情からか。
つかさはしばらく眼下に顔を伏せていたが、私の気を察知すると、グルンと物凄い速度でコチラを見た。

無機質だ。人間の目とは思えない。
それはつまり…つかさが…

「…なた、…だ…れ」

「―つかさッ!!」

はっきりとは聞こえなかった。幻聴であってほしかった。
お願いだから…これ以上つかさから奪わないで。
兵器になっても、いくら弱音を吐いて泣いても、いい。
だけど、それだけは…それだけはやめて。懇願するように私は、つかさの胸に顔を埋め、泣いた。

「………ぇちゃん、お姉ちゃん?」
「つかさっ!」

『つかさ』が、戻ってきた。しかし、焦点が定まらずに、ボヤァっとしている。
見なくちゃいけない。つかさを…真っ直ぐに。

「大丈夫…アレ、落ちる前に即死だと思う…。苦しまないで、逝ったよ」

淡々と、そう教えてくれた。



186 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 16:24:08.10 ID:/kH0q+sc0
「……あ」

思い出したように、つかさはカバンのカプセルを取り出して、嚥下した。

……そんな苦しむつかさを、見ていられなくて、

「お姉ちゃん、私…私ね…!」

「……っ」


目を、反らした。ずっと見ていようって決めたのに。
つかさは、私に見ていて欲しかったのに。
私はつかさから目を反らしたのだ。

「なんでもない…から。帰るね…一人で…行けるから…」

踵を返すときに見えた光るソレは、涙だったのだろうか。
それから、私はつかさと少し疎遠になった…。



187 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 16:34:11.83 ID:/kH0q+sc0
「ぼ~」

以前つかさが開けたところ、そこはちょうど校庭を一望できる簡易のベランダのようになっていた。
放課後、何もする気になれないので、こうして日向ぼっこしてたわけだ。
…あぁ、ほんと気だるい。

「お姉ちゃん?」
「…つ、つかさ!?」
「はい残念あたしでした~」

…こいつ、殴ったろか。

「そんな恐い顔すんなよ。どうした若人、あたしでよければ相談に乗るぞー」
「…まずはパンツを隠せ」
「うわわ!このエッチ!ド変態!」


「…妹とケンカしたのか」
「ケンカってわけじゃ…」
「でも、最近全然顔合わせねーじゃん。妹は妹で学校休みがちだしよー」
「……」
「まぁ、話しにくいんだったら無理には聞かねーけどよ」
「待って日下部…。…聞いて欲しいんだけど」

ちょっと素直に、なってみた。



188 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 16:44:15.98 ID:/kH0q+sc0
「私ね、最近わからないんだ」
「何が?」
「つかさのこと。自分の気持ちだって曖昧なのに。
姉としてこんなんでいいのかなって思って。わかろうって頑張れば頑張るほど、
あざ笑うようにあの子に酷いこと言っちゃって…難しいんだよね。
家族だし、妹だから、尚のこと。触れていいときと触れちゃいけないってこととか…」
「柊、お前ぇエスパーか何かか?」
「は??」
「他人の気持ちなんてよーわかるわけねーだろ。そんな簡単に他人の気持ちなんか
わかりっこねーって。もしあたしに妹がいたら…その妹に
あたしの気持ちを見られたら…そりゃ、恥ずかしくて死にたくなるよ。
別にな、わかってもらえなくてもいいんだ。ただそいつを心配してやりゃそれでいいんだ」
「…そう、だよね。そんなに人に気持ちって、単純じゃないもんね…」
「おう」
「お前は結構わかりやすいけどな」
「酷っ!訴えてやる!」
「…ふふ、だってあんた、体育会系だしね」

そう、問題は結局『私自身』。無闇に知ろうとしたって、どうにもならない。
下らない考えは捨てて、裸の心であの子に接してあげればいいだけなんだ。



189 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 16:54:16.44 ID:/kH0q+sc0

下校の道。
見知った子が、座って何かを覗き込んでいた。

「…猫?」
「うん、子猫さん」
「……そう」
「ごめんね、猫ちゃん。私兵器だから、何もしてあげれないよ。味覚もなくなっちゃったから、お料理も作ってあげれない…
ほんと、何も出来なくてごめんね…」
「つかさ、あんた味覚って…!」
「大丈夫だよお姉ちゃん。戦う分には小さいことだし」
「小さいって、あんたねぇ」
「…前の戦い、あれ私がやったんだ。数が多かったから、上昇気流で巻き上げて、大気圏すれすれで…ボンって」
「……」
「最近はね、ミサイルも無人で動く戦闘機も少ないの。でも、数十人くらいかな、死んだ人。私よりは年上だけど、きっと若い人だと思う。苦しませないで、殺ったから」

何も言えない私に、昔話を聞かせるような口調で、言い続けた。
そして、

「こんな子でも、妹でいいの?」



190 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 17:04:08.12 ID:/kH0q+sc0
「……当たり前じゃない」
「……でも、でも」
「ここで待ってなさい」
「え?」
「牛乳、持ってくるから!どうせ誰も飲んでないし、この子達にあげるのよ。
きっと、きっと喜ぶよ、ね?」

……つかさは、少しキョトンとしてから

「  うん  」

笑った。

「お姉ちゃーん、ネコさん用の牛乳じゃないと下痢するからねー」
「……わ、わかってるわよ!多分…あ、あるかわかんないけど…持ってくるって!」
「待ってるからー!」

私は急いで、家へ走った。



191 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 17:14:23.14 ID:/kH0q+sc0
『お姉ちゃん ごめんなさい
急にお散歩に行かなきゃいけなくなったので、行ってきます
この前はありがとう 安心しました
子猫ちゃん達に、牛乳をあげておいてくださいね
さっきも行ったけど、ちゃんと猫さん用のミルクでね
約束です

じゃあ、またね お姉ちゃん』


戻った時には、つかさはもういなくって、
戻った瞬間に、そんなメールが来ていた。


それっきり、つかさが学校に来ることはなかった。



192 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 17:24:16.23 ID:/kH0q+sc0
「泉さん、だっけ?自衛隊は初めて?」
「は、はぁ…」
「あんまりそう硬くならないでいいわよ。私も初めてだし、同じ女の子で、頑張りましょう」
「う、うん。えーと、名前はなんだったっけ?」
「永森やまと。やまとでいいわ」
「よろしく、やまと」
「とは言ってもこの後すぐ派遣先を言われるから、コレ以降はもうお別れだと思うけどね」
「あら、そうなんだ」
「ほら、配られてるでしょ?あれに配属先が書いてあるんだ」
「ほうほう…」

「泉 こなた!」

「は、はい~。ええと…『第七情報管理部』かぁ」

「永森 やまと!」

「はい。…『第二中央情報部』。え、これって…」
「永森、運がいいな。そこは『天使』がいる部隊だぞ」
「はぁ…」
「ねねやまと、『天使』って何さ?」
「さぁ…ただ、人の形をした何か、とは聞いたことがあるわ」
「人型兵器!?おぉ、ロマンだぁ」
「ふふ…そうね。あ、もう行かないと頑張ってね、こなた」
「やまともね!」



193 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 17:36:33.28 ID:/kH0q+sc0
「情報班はこの場で待機!……『天使』がご帰還される!全員整列!」

上官の指示で、私達は輪になるように整列する。
何度も練習させられた敬礼を、早くしてしまいたかった。
あれが…天使なんだ。少女だった。どっからどう見ても、年端も行かないくらいの。
でも、確実に異質である「ソレ」が彼女には生えていた。
無機質のようで、どこか生物じみた、ハネ。
天使と呼ばれる所以なのかもしれない。天使はゆっくり降下すると、ハネを雲散させた。

「全員敬礼!天使指令!任務ご苦労様であります!」

…ほんとに天使って名前なのか?そうでなくても、笑える呼称だ。

「H司令官殿も天使指令のご活躍にはご満足いただいております!」
「…次の予定は?」
「はっ!先ほど東区域の中隊長殿よりご要望がございまして、
本日1600において選抜隊員及び新入隊員へ一言ご挨拶をと」
「…聞こえなかったのかな」
「…はっ!?」

「次の戦闘、いつなの?」


寒気がした。その言葉、その視で。天使…いや違う。こいつは…

悪魔―だ。



196 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 17:45:15.15 ID:/kH0q+sc0
情報班だから楽かな、って思ったのは甘かったのかもしれない。
編隊されて、早速10kmのマラソン。なんでも、情報班というのは
色々な部署で情報を共有させる役割があるため、ある程度の体力が必要とされるらしい。
私の部隊は、幸か不幸か、女性のみだった。

「岩崎みなみです…」
「八坂こうでーすってやまと!?あんたもこっちだったんだ?」
「奇遇ね、こう。これからよろしく」
「あ、うん。よろしく」


自己紹介も程々に、早速マラソンを始めた。
「…お知り合い、なんですか」
「そうだよ。昔っから大の仲良しさぁ!」
「…こう、下らないこと言わないの」
「下らなくてないよーもう」
「…その、永森さんは、『天使』を見たんですか」

岩崎さんが、私に聞いた。ズシリと、またあの悪寒が甦った。



197 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 17:55:14.09 ID:/kH0q+sc0
「えぇ。貴方達は?」
「私は見てないな~。やまとって、結構運が良かったと思うよ」
「そうなのかしら」
「どう、でしたか…『天使』は…」
「そうね…クールさでは私も岩崎さんも負けてないけど、『天使』はそれ異常だったわ」
「おい、私は!?」
「…どこが。そうね、クールというよりは、『コールド』。凄く冷たい目をしていたわね」
「冷たい…目」
「えぇ。言葉では言いにくい存在感があったわ」
「人型と、聞きましたが…」
「ロボットものではお馴染みだよね~」
「というよりは、人間が羽を移植されたようなかんじだったわ」
「そそ、それって生物兵器じゃないの??」
「さぁ、どうかしらね。情報班としては、結構私は有益な情報を知れたからいいけど」
「……そう、ですか」



198 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/17(金) 17:59:47.90 ID:iklI4XdDO
つかさ・・・


199 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 18:08:14.73 ID:/kH0q+sc0
「…『お散歩』、したいな…」

つかさが、物欲しそうに空を見上げた。
つかさが見ていた部分、そこにあった雲が、抉られるようにして消えた。
今のつかさの、『暇つぶし』であった。

「……次の『お散歩』、いつかなぁ…」

ぐるんぐるんと、首を回す。
つかさの見える空だけが、快晴になった。


「まぶしぃ…」


滲まない瞳を薄めて、そう呟いた。



200 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 18:18:44.26 ID:/kH0q+sc0
季節は冬―
桜並木で知られ、いつもつかさと歩いて道は、今じゃ雪景色みたいだった。
みたいというか、そのまんまだけど。

「お、柊。また早退か?」
「日下部…そうだけど」
「なんだぁ奇遇じゃん。あたしもとっとと帰ろうと思ってたんだ。学校サミーじゃん?
勉強はかどんねぇんだよ」
「お前が勉強する姿が想像できん…」
「それ暴言もいいとこだって!」
「はぁ…」
「しかしさー、チミっこもバカだよなー。こんな状況なのに自衛隊行くとかよ。
あいつオタクだから、自衛隊を遊園地とか何とか勘違いしてんじゃね?」
「……バカ!あいつを…あいつをそんな風に言わないで!」
「ど、どうしてだよ。だって…」
「あいつには従妹がいるの。あいつは…その子、家族を守るために志願したの。
家族を守るために、あいつは行きたくもない軍に行ったのよ!」
「…くそぉ、お前らかっこよすぎんだよ!でもよぉ!
それでいいのか!?お前は!あたしなんかとは違う、親友が軍に行っちゃうの!
さびしくねーのか!?妹とだって最近全然会ってねえじゃん!」
「さびしいわよ…会いたいわよ。止めたいわよ。でもね!親友だから!
笑っておくってあげなきゃいけないのよ!あんただって…そりゃ…親友であることに変わりないんだしさ…」
「…ひ、柊ぃ…」



202 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 18:28:29.13 ID:/kH0q+sc0
「あーもう、そんな顔するな!」
「ははは、照れるな照れるな~」
「照れてないっ!…ったく、怒鳴ったらお腹空いちゃったわ」
「そだな~ハラ減ったぞ~らーめんでも食いにいくか~」
「そうね、行こうか」

…と、日下部の足音がしない。

「…日下部」
「…っく、ひっく…」
「なに、泣いてんのよ…」
「うっせー…ひくっ…ハラ…減ったからだ…っく」
「…ったく」

少しだけ、胸を貸してやった。
日下部が濡らしたところだけ、ちょっと温かかった。



203 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/10/17(金) 18:30:22.15 ID:OZDCsRB+O
あれ、日下部ってs(ry


205 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 18:39:56.58 ID:/kH0q+sc0
■うわあああああああああすいませんミスです。>>204の前に↓これです

キヨは、教会前で待機していた。
元つかさと小隊を組んでいた好なのか、伝達を受けた。

『教会前にいます。』

「ったく…まぁ今は待機中だから別にいいがね」

教会のドアで、つかさは座っていた。
体育すわりをして、俯きながら。

「また、泣いてるんですか。司令官殿」
「キヨ…さん、来てくれたんですか」
「お久しぶり」
「キヨ…さん…うっ……うあああああっっっ……っっ!!!」
「っと、司令官ともあろう方が、みっともないですぞ」
「うわああああっ!!ああああぁぁぁっっ!!!!」
「…辛かったんだな、つかさ」


時同じくして、つかさもまた泣いていた。



204 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 18:39:07.95 ID:/kH0q+sc0
ところかわって、つかさ

「ん……んんっ。あれ?ここは」
「お目覚めですか、司令官殿」
「き…キキヨさん!!?」
「よくお眠りで。そこにお手洗いがあるのでどうぞ使ってください」
「…キヨさん、今は別に、司令官で見ないでいいですよ…」
「そう、か。じゃあとっとと顔洗ってきな、つかさ」
「はぅ、いきなり普通にされるとそれはそれで違和感が…」

ひとしきり顔を洗うと、キヨが呼ぶように言った。

「済んだら外に出るぞ」
「あ、ふぁーい…あぷっ…!」
「顔洗いながら律儀に返事すんな…」

半ば飽きれながら、キヨはタバコをふかし始めた。



206 : ◆AFHdzMaE2Y :2008/10/17(金) 18:49:40.85 ID:/kH0q+sc0
>>204の続きがこちら

「さ、行こうか」
「行くって…どこへ?」
「ん、まぁどこでもいいんだけどな…あ、タバコ切れちゃった」
「でもキヨさん、私といると…その」

ダーンッ!!

「ひぃぃ!なななんですか今の!て、敵ですか!?」
「いや、タバコ。切れたんで」
「だめですよー!そんなことしちゃ~!」
「誰もいないし、別にいいだろ…って、羽出てる」
「はわわわ!さっきの銃弾で反応しちゃったのかも…あぅ、最後の私服が…」
「…ま、不用意にぶっぱなした俺も悪いか。そこにいけば服屋がある」
「はい、すぐ行きましょう~」
「…ゆいもこれくらい、恥じらいを持ってくれるといいんだがな」


■夕飯食べに出かけてきます。適当に感想とかいただけると嬉しいです




最終兵器つかさ 2に続きます。
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Comment

1?

これから読むわ
名無しのエリンギ |  2008年10月18日(土) 23:17 | URL 【コメント編集】

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